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悪役令嬢はもっと強くなりたい  作者: ダイフク
4/13

4.プレゼント


屋敷に戻った私とマティアスは、当然お小言を覚悟していた。

父様は、護衛から報告を受けていて、一部始終ご存知だ。

夕食の席の父様と母様の視線が厳しい。


「ケイシー、マティアス。私が何を言いたいかわかるな?」

「えーっと、悪者退治をした、こと、ですか?お父様。」


こら、間違ってるよ、マティアス。

ほらぁ、父様の眉間のシワが深くなったでしょ!


「ケイシー、お前もそう思っているのか?」

「ち、違います。私達が、護衛に相談もなく、あの男達に近づいたのは間違いでした。すみません。」

「そうだな。」

「え?そうなの?」


こら!マティアスのバカ!


「マティアス、お前にはゆっくりと反省する時間が必要なようだ。一週間、部屋から外に出ることを禁じる。」

「ええーっ。お姉様は?」

「ケイシーは理解しているから問題ない。ただし、外出は二人とも一ヶ月認めない。」


お姉様ずるいと睨むマティアスを無視して、食事を口にする。反省は必要。反省してお利口になろうね、マティアス。




週末、学園の寮からムスタファ兄様が戻ってきた。

私達は思いっきり願いを込めて作ったお守りを渡すのだ。


「お兄様、これ、私達から。」


渋い銀色が兄様の剣帯に似合うと、決めた。


「ありがとう。早速付けさせて貰うよ。」


柔らかく微笑んだ兄様は、すぐに剣帯に付けてくれたが、戸惑ったように手を見ている。

どうしたんだろう、どこか引っ掛かりでもあったかな?


「お兄様?」

「う、うん。ケイシー、マティアス、このお守りに何を込めてくれたのか教えてくれる?」

「兄様、僕は、兄様が試合に勝てますようにと願いを込めました。」

「ありがとう。ケイシーは?」

「身体強化と防御力上昇を……」


ゆきえの知識で、戦闘って言えば、これ!って思ったのは間違いだったかも。


「そう。そんなおまじないは初めて聞いたけど、これは、うん、どうしようかな。」

「ムスタファ、どうかしたのか?」

「リンダ、庭から拳大の石を2つ持ってきてくれないか?」

「はい。ムスタファ様。」


すぐにリンダが石を持ってきてムスタファに渡した。


「見ていて下さいね。」


ムスタファはひとつの石を片手に握り、グッと力を入れた。


パァァァァン!!!


石が粉々になる。


「兄様、カッコイイ。」


いや、マティアス、違うでしょ!


「後は、防御力か。」


兄様、兄様、もう良いです。お願い、もうやめてください!


ムスタファは渡された石をマティアスに渡して、自分の腕を叩けと言う。当然、面白がっているマティアスは大喜び。

兄様に叩きつけられた石は、兄様を傷つけることなく、足元に散らばった。


父様も母様も青ざめている。理解していないマティアスだけが大喜びだ。


「ケイシー、これはわかってやったの?」

「お兄様、いいえ。」


ムスタファ兄様の笑顔が怖い。必死に首を振る。降りすぎて首が痛くなりそうだ。


「ムスタファ、それはケイシーのまじないなのか?」

「そうです。他の人間には知られる訳には。とても危険です。」

「……その通りだ。ケイシー、二度とこのまじないをしてはいけない。いいな。」

「はい。お父様。」


しない。絶対しない。怖かったぁ。


「せっかくのプレゼントだけど、これは使えない。すまないね。父様、預かって頂けますか?」

「わかった。私が預かろう。」


私はもう1つのお守りに込めたおまじないを思い出した。大丈夫だよね。


ダニエルのお守りにかけたおまじないは、精神耐性強化。

目に見えるものじゃないから、大丈夫。多分……。




秋には学園に入学する。かつてのケイシーの事を時々考えるようになった。

それは、ダニエルの為の、公爵夫人教育だったり、兄様の学園スケジュールを聞いた時など、一層意識してしまう。


私は、そんなに嫌われる真似はしていなかったと思うけど、友人は少なかった。夫人教育は学園の授業後に受けていたから、友達と過ごす時間が無く、何となく周りにも嫌厭されていたと思う。


学園で教育を受けなくていいように、今のうちから教育を受けたいと頼んで来て頂いた家庭教師には、あっという間に教育完了のお墨付きを貰ってしまった。


「もう、お嬢様は、完璧です。特にダンスは素晴らしくて、私など足元にも及びませんわ。」

「そうなの?ケイシー、どこでダンスを練習したのかしら?」

「お母様、そ、そうね、剣術に似ている気がするの。」

「まあ。」


言えない。ゆきえの覚えたダンスが体に染み付いているなんて。私は、曖昧に笑って誤魔化した。


他の教育も以前のケイシーの記憶があるので、スムーズだった。以前のケイシーは、完璧な淑女と呼ばれていたのに、断罪され、死んでしまった。

私は、外面だけの淑女でいい。後は、自由でいたい。



ダニエルのお守りを渡せたのは、私の教育が終わった後だった。

どうやら、公爵夫人が、勉強の邪魔をしてはいけません、と、我が家に遊びに来ようとする彼を止めていたらしい。


「久しぶり。」

「うん。」

「勉強終わったって?」

「そうよ。」

「その割に、全然変わらないな。」

「変わらないとダメ?」

「変わらない方がいい。」

「じゃあ、そうする。」


いつも通りのダニエルに、何故か安心する。

そっと、お守りを出して、渡した。


「何?」

「お守り。」

「え?なんで?」

「お兄様にマティアスとプレゼントしたの。その時、気に入って。ダニエルにあげようと思って。」

「ありがとう。何のおまじないがかかってるんだ?」

「内緒。」


ダニエルは、箱から取り出して、手のひらに乗せた。


「光の加減で、色が変わるの。」

「ふうん。本当だ。ケイシーの色。」

「違うわ。ダニエルの目の色でしょ!」

「私にとっては、ケイシーの目の色の方が嬉しい。」


顔が赤くなる。最近のダニエルは、時々こんなキザなことを言う。恥ずかしいけど、ちょっと嬉しい。


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