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プロローグ


 郵便大鷲(ポスグル)は非常に困っていた。

 大きな蹴爪に掴んだ大量の郵便物の詰まった荷物の他に、背中に人間が乗っていたからである。


 ――翡翠色の肩ほどまでの長さの髪に、空色の瞳。

 色白の肌は頬だけが桃色に赤らんでいて、青地に白の色合いの神官の制服に身を包んだ美しい少女が、郵便大鷲の背の上から真剣な眼差しでマルー大森林を見つめていた。


 郵便大鷲は苦労しながら体勢を維持する。自分の運べる重さより余裕を持った荷物量ではあったものの、人一人乗せるとなると話は別だった。

 都市からマルー大森林方面はそこそこに距離があり、何より届け先のカルド村まで休憩を挟まず一気に飛ぶ予定だったため、羽根への負担が大きかったのである。


 振り落とそうかと道中幾度か思ったものの、背に乗る彼女の正体を、賢い郵便大鷲はよく覚えていた。振り落として死なれでもしたら、どれほど不味いかということも。

 故に我慢して飛び続け、いよいよカルド村が見えたという辺りで、急に首を掴まれた。


「郵便大鷲さん待って! ここで下ろして!」


 グエエ、と絞められかけた首に苦悶の声を上げながら、彼は涙目で眼下を見やる。


 ――そこには、灰色の狼達に囲まれている三人の人間がいた。


 青白い髪を逆立てた青年と、ぼろぼろの衣服を纏い、見た事も無い剣を構えた黒髪の男。そして木に登って狼から逃げようとしている赤毛の少年が、上空からはよく見えていた。


「戦争帰り? それとも魔物との戦闘で? 何にせよ怪我人です! 助けに行かないと!」


 高位神官として名高い彼女の言う事に、郵便大鷲は渋々頷くと一気に高度を下げる。


 そして、「神官ならまぁ死なないだろう」という高さで、これまでの不満を一気に行動へ移した。


「……へ? ひっ……キャーーー!」


 急に天地逆さまへとひっくり返った郵便大鷲に、油断していた神官は重力の赴くがまま落下する。

「なんでぇええええ」と叫ぶ彼女をにっこりとした目で見つめて、郵便大鷲は空高く舞い上がると、予定通り一路カルド村へと向かうのだった。


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