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4-10 ※リューネ視点 わからせ弊害を自覚する『聖☆わからせ隊』は追加わからせでメスになる

『レベル58!?セリアさん!そんな強いのではメタルリザードが逃げてしまうではないですか!メタルリザードがいない理由は貴方の異常な強さのせいだったのですわ!』


 リリーナの言葉にハッとした私は何で今までそんな当たり前のことに気が付かなかったのだろうと思ったが理由は簡単だった。


『私が強い?何を言ってるんですか?私は弱い……弱くて……ダメな女……そうです……私はカイト君のメス豚……わからせとお仕置きが必要なか弱い存在なのです』


 う、うん……セリアの言い方にはちょっと語弊があるけど、私も似た感覚……正確には私達『聖☆わからせ隊』は無意識のうちにカイトが基準になってしまって、普通の感覚が随分おかしくなってる。

 実際にパレット先生とフェリスも私と同じような感想を抱いてた。


『確かに……セリアさんがいては臆病なモンスターが逃げ出すのは明白ですね……もうすぐレベル80になるカイトさんと比べてしまったせいで感覚がずれてました』


『え~、ボクはセリアお姉ちゃんがいたらこうなると薄々思ってたよ。でも。メタルリザードについて詳しくないし、誰も指摘しないから黙ってたけど……にしし♪カイちゃんが強すぎてセリアお姉ちゃんが強いって事を忘れちゃうよね』


 やっぱり皆そうなのね。私達『聖☆わからせ隊』はカイトに相応しい女になるという目標があるせいで気付かないうちに超意識高い系集団になっていた。だから、私はもちろんセリアもフェリスもパレット先生も今の自分に満足していない……それどころか自分の事を弱いと思い込んでいる。

 でも今のリリーナの反応がおそらく普通なのよね。


『レベル80!?カイトさんもたいがいですが皆さんも頭おかしいですわ!レベル50を超えている聖女なんて聞いたことありませんし、リューネさんは少し前まで私と同じくらいで、フェリスさんに至っては実技が学年最下位だったのに……そしてパレット先生はもっと普通の判断ができる人だったはず……』


 そう言って困惑するリリーナに親近感が……あれは少し前の私だ。カイトに出会わなければ、今でも同じリアクションをしていたでしょうね。

 そんなリリーナにセリアが私達代表として、


『何もおかしくありませんよ。私達は強くない……弱い者……すなわち弱者です。いえ、私達だけではありません。カイト君以外の全ての人間は弱者なのです』


『やっぱり狂ってます……皆さんはカイトさんに洗脳を……いえ、わからされすぎですわ』


 リリーナのその感想が一番的を射てるんでしょうね……でも今はそんな事を議論している場合じゃない。リリーナから指揮権を譲られた人間として行動しないと……


「とりあえずメタルリザードが現れない理由がわかったんだから、セリアには少し離れてもらって、残りのメンバーでメタルリザードを狩るわよ」


 こうしてメタルリザード狩りを再開したけど、それでも現れなかった。私も下調べして、ここがメタルリザードの出現ポイントだと知っていたから入念に探したけど結果は同じ……仕方ないからレベルが高い人から順に探索から外れてもらうことにして、パレット先生にもセリアが待機しているフロア入口付近に退いてもらった。レベル30代二人とレベル20代一人なら多少は警戒が緩んで現れると高をくくったのに……


『リューネさん……やっぱりいませんわ』


「ええ、この屑石廃棄場はメタルリザードの好物の鉱石が多いから、一匹もいないなんておかしいわよね」


 私達優等生組二人は一緒になってうんうんと頭を捻っていたけど、観察眼の鋭いフェリスはメタルリザードそのものではなく、その痕跡を探していた。しかし、手がかりは見つからないようで少し考えてから私に声をかけてきた。


『ねえねえリューネちゃん、メタルリザードってレアなモンスターってわけじゃないんだよね?』


「そのはずよ。いつもは屑石ばかり食べてるけど、数が増えすぎると質のいいクリスタルまで食べるから定期的に駆除が行われてるくらいには……」


『じゃあ、やっぱりおかしいよ……痕跡がなさすぎる』


「少ないじゃなくて、全く無いって事?」


『鉱物を含んだメタルリザードのものと思われるキラキラした糞はあったけど、それ以外は全くないの。例えば何かと戦った跡の血痕や死骸なんかが……綺麗すぎて貧民街時代の夜逃げしたお隣さんの家を思い出しちゃった』


「……つまり、とっくに逃げた後ってこと?」


 フェリスは確証がないにもかかわらず力強く首を縦に振った。それを裏付ける物証は無いが、それが無いがゆえに導き出された結論は今の現実と合致していた。そして、その予測に信憑性を持たせる証言をセリアとパレット先生が持って来てくれた。


『お姉ちゃん、さっき下の階層から上がってきた別の冒険者グループから聞いたんですけど、メタルリザードが群れで下の階へ移動していったのを見たそうです』


「まさか本当に……でもダンジョンのモンスターが別の階に行くなんてあまりないわ……そいつらは信用できそう?」


 フェリスの推理を考慮すれば間違いないのだろうけど、私は慎重になる。ママから注意されたのはダンジョン内ではモンスターよりも人間の方が危険な時があること――特に今回のように女ばかりのパーティーを誘導して、待ち構えていた仲間とレイプしたり、薬や魔法具で従わせて奴隷にする犯罪者集団がいるって聞いてる――リーダーとしてそんな可能性を考慮しているとパレット先生は私が心配していることを見抜いて追加情報をくれた。


『そのパーティーの証言は信用できると思います。彼らは鉱物の採集を目的とした家族パーティーでしたので騙す理由がないかと……実際に荷物が鉱物でいっぱいでしたし、引き上げる時にメタルリザードの群れを目撃しただけで今ごろはダンジョンを出るところでしょう』


 なるほど……パレット先生が言うのならば間違いはなさそうね……でも警戒を怠るわけにはいかない。


「では、下の階層に移動しましょう。少なくともここにいてもメタルリザードが出てくる可能性は低い……私とフェリスとリリーナが少し先行してメタルリザードを探しながら進むから、高レベルのセリアとパレット先生は後方を警戒しながらついてきてください」


 皆は私の案に頷いてくれる……おそらくこれが現状では最善の選択のはず。

 こうして私の指示通りに移動を開始したけど、やはりメタルリザードは現れなかった。


「おかしい……そもそもメタルリザードが群れで行動すること自体ありえないのよ」


『その通りですわ。しかも他のモンスターにも遭遇しませんし、何よりドレイク様達の姿が全く見えないのも……』


「確かにそうね。クリスタルホールは分岐が少ないダンジョンなのに……」


 私はメタルリザードばかりに気を取られてカイト達の存在を忘れていたけど、フェリスは違った。


『カイちゃん達はたぶん先に行ってるよ。ほら、あの天井の焦げ跡はナルシスト竜騎士の電気魔法のあとじゃないかな?』


『ドレイク様をナルシスト竜騎士なんて呼ばないでくださいませ!しかし……うううう……婚約者である私よりも先にドレイク様の痕跡を見つけるなんて……フェリスさん!まさか貴方はドレイク様を狙ってますの!?』


『はあ!?冗談言わないでよ!ボクはカイちゃんのもの!カイちゃんの所有物!カイちゃんに身も心も捧げてるの!カイちゃん以外の男なんて興味ないもん!二度とそんなこと言わないで!』


『も、申し訳ございません……それにしても……これがわからせの威力ですか……並の洗脳魔法よりも強力ですわ』


 そんな馬鹿げた口喧嘩ができるくらいダンジョン内は平和だったけど、平和すぎて困ったわね……たまに現れるカッターバット以外のモンスターと遭遇せず最下層に近づくとすれ違う冒険者達からカイト達の事と思われる会話が聞こえてくる。


『あのイケメン竜騎士凄かったわね。扱いが難しい雷属性をあそこまで使いこなせるなんて……』


「何言ってんだ。あれは美少女黒魔導士とのコンビネーションのおかげ……ああ、あんな娘がうちのパーティーにも……え?男?……もう男でもいいかな……」


『いや、一番ヤバいのは召喚士だろ……召喚獣を複数同時に……あんな事ができるのは噂の「わからせ召喚士」くらい……まさかあいつがそうなのか』


 ふふ、他人にカイトの凄さが広まると姉として嬉しい……あ、ダンジョン内なのにお姉ちゃんスイッチが入っちゃった♡そして最下層のフロアに到達すると、入り口でカイト達が待っていた。


『お疲れ様……そして、ごめんね。ちょっとやりすぎちゃって、俺達でメタルリザードを狩りつくしちゃった……てへ♪』


 そう言っておどけているカイトの後ろには氷漬けのメタルリザードの山が……それを見た瞬間にメタルリザードの大移動もカイトの仕業だと直感的に理解した。

 もう!カイトの意地悪!そんなカイトなんて……好き♡やっぱり私はカイトに敵わない♡流石はお姉ちゃんの自慢の弟♡こうなるってわかってた♡そして罰ゲームを♡お仕置きを♡わからせを期待している♡ああ、私って変態お姉ちゃん♡

 他の聖☆わからせ隊の皆も私と同じ様なメスの顔になってるけど、リリーナは膝から崩れ落ちて悔しがっていた。可哀想だけど……ふふふ、大丈夫よリリーナ。あんたもすぐこっちの人間に……わからされる側の人間になれば……って、だめよ!リリーナはわからせちゃダメ!もう……カイトが他の女を堕とさないように♡お姉ちゃんが近くで弟を見守ってあげなくちゃね♡

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