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4-7 公爵令息と侯爵令嬢の冒険者登録と副ギルド長の辛口評価

 週末の土曜日、予定通りにクリスタルホールへ行く前にドレイクの冒険者登録するために冒険者ギルドに集合したカイト達だったのだが……


「あら、カイト……こんなところで会うなんて奇遇ね」


 偶然を装ってリューネ達のグループにパレットを加えた美女5人組も集合。

 リューネの下手すぎる演技にカイトは苦笑いを浮かべるしかなかった。


「いやいや、思いっきり家から俺の後ろを付けてたじゃん。セリアさんとフェリスだけじゃなくてパレット先生も一緒で偶然なんて有り得ないし……」


「べ、別にいいじゃない!それとも何かやましい事でもあるの?」


「正妻である私がカイト君の傍にいるのは必然です」


「にしし♪ボクもカイちゃんから一日でも離れるなんて嫌だもん」


「私は女子グループだけでダンジョンへ行くと聞いたので保護者として同行するだけで、決してカイトさんをストーキングしているわけでは……」


 カイトはそんな婚約者達の言い訳を聞きながらチラッとドレイクの方を見ると、そちらではリリーナが突っかかっていた。


「あら、ドレイク様……こんなところで遊んでいる暇があるのでしたら、私の婚約者として恥ずかしくないように、苦手な筆記試験の勉強をされてはいかがでしょうか?」


「はーはっはっは、相変わらず僕のフィアンセは手厳しいな。そんな君が僕は愛おしいよ」


「ふ、ふん!そんな浮ついた事を言ってないで早くSクラスに上がってくださいませ!」


 この二人のやりとりを見ているとカイトとリューネは毒気を抜かれてしまい、顔を近づけてヒソヒソと、


「ねえリューネ。そっちもクリスタルホールに行こうとしてるのは前から気づいてたんだけど、リリーナさんもメンバーに加えたの?」


「ええ、ドレイクのことが気になっているらしくて今日も一緒なんだけど……」


「リリーナさんとは話したことは無いけど確かドレイクの婚約者なんだよね?なんとなく事情は察したつもりだけど、あの二人ってうまくいってない?」


「私も二人が話すところは初めて見るし……リリーナはドレイクが心配みたいだけど……」


 聖☆わからせ隊のメンバーはジッと見守って、パチョレックはオロオロ……そんな周りにお構いなしのリリーナは婚約者のダメ出しをやめないが、ドレイクは笑って流している。


「だいたい上級貴族であるドレイク様がモンスター討伐演習コースを選ぶなんて……あれは本来、下級貴族や騎士階級の実践の場を提供するためのものですわ。それを公爵家の跡継ぎが自らモンスターと戦うなんて」


「なるほど……そういう見解もあるわけだね。しかし僕は上級貴族だからこそ前線で戦えるようになるべきだと思うのさ」


「全く!ドレイク様は名門ロートリンゲン公爵家の跡継ぎという自覚が足りませんわ!だいたい変態召喚士と平民とグループを組むなんて……」


 リリーナは勢い任せに口走ると、それまで涼やか笑みを浮かべていたドレイクが一転して険しい表情になった。


「リリーナ……君は僕の婚約者だ。だから、僕に対する不満をぶつけるのは当然の権利さ。そしてカイトの事を変態と評するのも芸術の方向性の違いとして流してもいい」


 それを聞いたカイトは「いや、そこは否定してくれよ」と言いかけたが、ドレイクが珍しく真剣な表情だったのでグッとこらえた。

 

「しかしパッキーに対して平民の一言で見下すのを黙っているわけにはいかないね」


「え、そ、それは……」


「僕は僕なりにロートリンゲン公爵家の誇りを持っているつもりさ。しかし、それは我が祖先がモンスターとの戦いにおいて最前線で活躍して武功をたて、国と民のための領地経営をしたことに対して……だから僕は民のために血を流せる貴族でありたい……貴族や平民という区分を超えて協力して国を支えていきたいと思っている。君は僕のそんな志は間違っているというつもりかい?」


「それは素晴らしいと思いますが……あ、あううう……」


 打たれ弱いリリーナが言葉を詰まらせて狼狽えていると、いたたまれない様子のパチョレックが助け舟をだし、


「ドレイク君。僕は気にしてないから……だから仲直りしてよ」


「パッキー……君は姿だけでなく心まで美しいのだね……君を見ていると美しさに身分など関係ないと改めて思い知らされるよ」


 ドレイクがそう言ってパチョレックを抱き寄せると、リリーナは再び怒りだして、


「ですから!そうやって男同士でベタベタするのが気に入りませんのよ!私とはダンス以外で手も握ったこともないですのに!」


「ははは。なんだ、ただのヤキモチだったのかい?寂しい思いをさせてすまなかったね。さあ!僕の胸に飛び込んでおいで!」


「この流れでそんな気分にはなりません!ドレイク様にはレディの扱いも勉強して欲しいですわ!」


 こうして朝っぱらから冒険者ギルドの入口で騒がしく痴話げんかをしていると、騒ぎを聞きつけてギルドから出てくる人物が――それはウンザリした顔のビッケスだった。


「やれやれ……朝からガキが喧嘩してると思ったらカイト坊やのツレか……本当に私の昼寝を邪魔するのが好きだねえ」


「いえ、昼寝の邪魔しに来たわけではなくて……って、まだ朝ですよ!」


「いいじゃないか。年だから体を労わってたらないとねえ……それで今日は何をやらかしに来たのさ」


「クリスタルホールに潜ろうと思いまして、その前に俺の友人の冒険者登録に来ました」


 ビッケスは冒険者タグを持っていない身なりのいい少年と少女を見て状況を把握して、


「ふ~ん……貴族の……かなりの家柄の子のようだね……じゃあ、私が登録の手続きしてやるから、済んだらさっさと行っておくれ」


「ありがとうございます。ほら、皆。ビッケスさんについてきて」


 こうして以前のリューネとフェリスの時のように副ギルド長室で冒険者登録が行われた。


「それではこの僕から!さあ、我がステータスのお披露目さ!」


 ドレイクが芝居がかったセリフとともに冒険者登録魔力紙に触れると、たちまち彼のステータスが浮かび上がる。


ドレイク・ロートリンゲン 17才

〇ジョブ【竜騎士】

〇固有スキル【ロンドロンド】

〇適正魔法 雷 気

〇アビリティ

 槍術(ロートリンゲン流)17  攻撃魔法13  支援魔法11  騎竜18

〇スペル

 エレキアロー(雷)5  身体強化魔法ブースト(気)6  反射速度上昇パルスアクセル7

〇戦技

 螺旋突き8  紫電一閃(雷)6

〇レベル・ステータス

 レベル23

 LP291 SP242 PW254 DF200 MP202 AG210 総合1399


 これを見たビッケスは少し興味を持った様子で、


「ほお、ロートリンゲン家の子かい。ただのボンボンかと思ったけど、英雄の家系は伊達じゃないねえ。貫通力を高める固有スキルも優秀だし、この調子で成長していけば優秀な竜騎士になれるよ」


 ビッケスが褒めるだけあって、ドレイクのステータスとアビリティはバランスがよく学園のSクラスレベルであり、家柄を考えるとAクラスにいるのが不思議だったので、パチョレックはそんな疑問を直接本人にぶつける。


「レベルが20を超えてるのにドレイク君はどうしてSクラスじゃないの?」


「ふふ、理由はシンプルに僕が拒否しているからさ。本当はBクラスなりたいのだけれども、流石にそれは認めてもらえないから仕方なくAクラスなのだよ」


「ええ……余計に訳が分からないよお」


「僕は学園の家柄や能力でクラスを分けるという美しくないやりかたが認められない……ああ!僕は美の追及者!規則より美しさを優先しないといられないのさ!」


 そんな婚約者に呆れた様子のリリーナがドレイクを押しのけて、


「また馬鹿なことを仰って……いい機会ですわ!これがSクラストップの実力!ご覧あそばせ!」


 リリーナはフワッと髪をかき上げてから登録用紙に触れて自慢のステータスを浮かび上がらせる。


リリーナ・パーマストン 17才

〇ジョブ【赤魔導士】

〇固有スキル【アークチャネラー】

〇適正魔法 風 聖

〇アビリティ

 剣術(騎士団流)16  攻撃魔法16  回復魔法15 支援魔法15 

〇スペル

 ソニックカッター(風)7  スパイラルゲイル(風)7  ウインドバリア(風)6  ヒール(聖)6  ヒーリングウインド(風)7

〇戦技

 エアロスラッシュ(風)6  ホーリースラッシュ(風)5   

〇レベル・ステータス

 レベル26

 LP232 SP361 PW192 DF184 MP365 AG214 総合1548


 これにもビッケスは反応したが、ドレイクと比べると微妙だった。


「ふむふむ、レベルや総合ステータスの数値的にはさっきの坊ちゃんより優秀だが……決定打に欠ける危なっかしい器用貧乏タイプだねえ」


「な、なんですって!?ランベルク学園のSクラスでリューネさんとトップ争いしている才色兼備の完璧なレディのこの私が器用貧乏!?」


「ああ、言い方が悪かったね。魔法の効果範囲を広げる固有スキルを活かした広範囲サポートタイプとしては優秀だけど、勘違いして単独行動するんじゃないよ。そういえば、そろそろ学園では模擬パーティー実習があるだろう?あれのモンスター討伐演習コースは見かけのステータスや学園の成績で調子にのって勘違いしないように、現実を見せるためのものだから受けた方がいいね」


 ビッケスの挑発めいた言い方に、リリーナは余計にプライドを傷つけられて、啖呵を切ってしまう。


「言われなくともそうしますわ!それに私の方が……決めました!ドレイク様!これからクリスタルホールでどちらが先に最下層へ行けるか勝負いたしましょう!貴方達『わからせ組』に私の優秀さをわからせてあげますわ!」


「はーはっはっは、私のフィアンセは情熱的だね。もちろん受けて立つさ!」


 それに一番ウンザリしたのはカイトだった。この二人の痴話げんかに巻き込まれただけでなく、勝手に『わからせ組』なんて名前をつけられてしまい、冒険者登録をしただけなのにドッと疲れを感じてしまった。

おかげさまで12万PVを突破できました。

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