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4-5 ※リューネ視点 ライバルとの和解のきっかけは夫のBL防止協定

 自慢じゃないけど私は女なのに女子から人気……というよりモテる。見た目がキリッとしてるのもあるだろうけど、ストイックに剣と魔法に打ち込む姿がカッコイイらしい。ま、悪い気分じゃないわね。でも、それが理由で競ってくる相手もいるんだけど……


「本当にどうしたの?名門パーマストン侯爵家の令嬢が軽々しく頭なんて下げないでよ」


 私は同じSクラスに所属している名門パーマストン家の令嬢であるプライドの高いリリーナが人に頭を下げる姿にビックリ……しかもライバル視している私になんて……


 そんな私達の付き合いは長くてランベルク学園入学以来の縁で、初めて会ったのは主席合格した私が生徒代表に選ばれた入学式の直後――


『あなた……リューネさんとおっしゃいますの?この私を差し置いて生徒代表なんて……不愉快ですわ!』


 いきなり突っかかってきたのは一目で名門貴族だとわかる身なりのいいツヤツヤした緑のロングヘアの美少女……それがリリーナだった。いかにも悪役令嬢といった雰囲気だったのもあり、とにかく第一印象は最悪で私の家が毛嫌いするタイプの貴族だと思って適当にあしらって相手をしなかったが、意外と共通点が多く無視もできなかった。


『さあ、リューネさん。私のサーベル捌きをご覧あそばせ』


『おーほっほっほ、私の風魔法で貴方の火魔法を消してあげますわ』


 こんな調子で私の選択授業のほとんどにリリーナがいて絡んできたので、てっきりストーキングされたのかと思ったがそれは私の杞憂だった。私は魔法が得意な剣士である【魔法剣士】でリリーナは剣を扱える魔導士である【赤魔導士】だったので、自然と授業が被っていただけ……そして最初の言動のせいで勘違いしていたけど、リリーナは真面目な努力家タイプだった。普段の高飛車な態度が嫌味な貴族っぽい印象を与えるけど、ただ単にプライドの高い優等生……そう、私と似た者同士。だからライバルであっても決して険悪な関係ではない……そんな距離感のクラスメイトだったから、リリーナの今の態度に頭が混乱してしまった。

 そんな私にリリーナは更に変な事を言い出す。


『この際ですから直接確認したいことが……リューネさんの婚約者であるカイトさんの事ですわ』


 私はカイトの名前がリリーナの口から出た瞬間、今度はこちらが反射的に頭を下げて謝罪。


「ごめんリリーナ!やっちゃったのね?カイトがわからせちゃったのね?婚約者として!姉として……ごめん!」


『え?わからせ?私は何もされておりませんわ。だからリューネさんが謝る必要は……それより姉ってどういう……』


 あわわ、しまった!クラスメイトの前でうっかりミス!カイトとの姉弟プレイがリリーナに知られたらライバル関係が崩れちゃうじゃない!


「わ、忘れなさい!そんなことよりカイトがどうしたの?リリーナがカイトと話してるところなんて見たことないけど……」


『ええ、そうですわ。淑女としてみだりに殿方と話したりはしません……いえ、話したことないからこそ婚約者であるリューネさんに確認したいことが……』


 それを聞いて私は安心してほっと一息ついたけど、次のリリーナの言葉は完全に想定外のワードだったので、一瞬頭がショートすることに……


『カイトさんは殿方に……単刀直入に聞きますわ。カイトさんは同性愛者ですか?』


「はあ!?ちょっ!え?えええ?アンタいきなり言い出すのよ!」


『その様子だと……カイトさんは異性愛者ですのね!』


「当たり前じゃない!カイトは女好きよ!それも超が付く……膝枕大好きの甘えん坊でエッチな……って、そうじゃない!カイトはストレート超エロエロ女好き健全男子よ!」


 私が思わず叫ぶと周りがひそひそ話を……ああ……カイトごめん……カイトの変な風評被害が……でも仕方ない!同性愛者に誤解されるよりはマシに決まってるじゃない!私は念のため後ろを振り向いてセリアとフェリスにも確認すると、


『もちろんカイト君は異性愛者ですよ。男子とも仲はいいですが、カイト君はメスをわからせるための存在であることは世界の真理です』


『カイちゃんは絶対にノンケ!もし男と……その時はボクの女としての全てを使って女の良さをわからせちゃうもんね♡』


 よかった……そうよね……リリーナが変な事言うせいで私まで取り乱しちゃったじゃない。リリーナも三人分の証言を得られた事で安心したみたいだけ何でこんなことを……てっきりカイトがリリーナに手をだしちゃって婚約者が増える方向かと思ったけど違うみたい……そもそもカイトが同性愛者でもリリーナには関係ないじゃない!


「リリーナ……答えてあげたんだから、こんな事聞いた理由くらい教えなさいよ」


 リリーナは真面目だから正論に弱い……周りの目を気にして小さな声で、


『そうですわね……その……カイトさんが私の婚約者であるドレイク様とそういう関係になったのかと心配になってしまいまして』


「え!?そういえばドレイクはリリーナの婚約者だったわね……でも、大丈夫よ。そういう関係じゃないだろうし……あの一部で出回ってる薄い本でも信じちゃったの?」


 私もカイト達が『バラを愛でる会』とかいう腐女子の集団に目をつけられて、変なエロ本が出回っているのは知ってるけど……リリーナったら箱入り娘だから真に受けちゃったのかしら?

 私は割とノンキに構えていたけどリリーナはサラッと爆弾を投下してきた。


『あの本がどうというより……その……ドレイク様が男色のようなので……カイトさんともそうなってしまったのかと……』


「え……ドレイクって……そっちの人だったの……」


 私はドレイクの事は詳しくない。クラスが違うから超ナルシストの竜騎士という基本情報しか知らないし、ほとんど話したことはない。でもドレイクの評判は決して悪くない……少なくともドレイクの悪口を言う人を見たことがないわね。超ナルシストであのテンションは疲れるし、名門公爵家の息子だから下手にツッコミをするのも気が引けるから遠巻きにされてはいるものの、他人を馬鹿にしないし困った人を見つけると迷わず助けるらしい。だからドレイクが二日連続で『道に迷っていたお婆さんを助けていた』と言って遅刻してきても誰もそれを疑わなかったと聞いてる。それに自分の美貌を武器に女を口説こうともしないって……あっ……


『いきなり言われても困ってしまいますわね……しかし、私は知っているのです。家では執事といつも一緒で……メイドには目もくず執事とベタベタボディタッチを……』


「そ、そうなの……リリーナも大変ね……」


『他人事ではありません!もし、カイトさんがドレイク様と肉体関係になったら……私達はあの二人を通して肉体関係の輪で繋がってしまいますわ!』


「確かにそれは嫌だけど……」


『何を吞気なことを……リューネさん……想像してごらんなさい……カイトさんがドレイク様のアソコにアレをああして……そのアレが自分の体に……』


 リリーナが精一杯ぼかして表現してくれたけど私は容易に想像できてしまった。私も取り巻きの女の子がカイ×ドレとかいう薄い本を読んでいてそれがチラッと見えたから……すると全身に鳥肌が!


「いやああああ!私のカイトが!お姉ちゃんは認めないわよ!カイトのアレは私の!私達のものなの!結婚したら丁寧にしゃぶってあげるつもりなのに!毎晩ディルドでジュポジュポグポグポ練習だってしてるのに!それなのにドレイクのケツ穴に入るなんてダメエエエ!」


 私は周囲の事を完全に忘れて絶叫。カイトの風評被害はいよいよ取り返しのつかない領域へ……それよりも発狂する私をリリーナとセリアとフェリスが落ち着かせようとしてくれた。


『リューネさん落ち着いてくださいませ!私が余分な事を……いえ、それよりもお姉ちゃんって本当にどういうことですの?』


『お姉ちゃん大丈夫!大丈夫だよ!カイト君を信じて!』


『そうだよリューネちゃん!ボク達もそんなの嫌だから、絶対に阻止しよう!』


 そんな三人の呼びかけでようやく正気に戻った私はリリーナの言いたいことが理解できた。


「はあ……はあ……リリーナ……あんたの目論見はわかったわよ。カイトとドレイクが模擬パーティー実習試験で良い雰囲気になってデキちゃわないよう監視するために同じコースを選んで目を離さないってことね」


『流石はリューネさん。それでこそ我がライバル……いえ、今からは同じ目的を共有する同士ですわ』


「ええ、その通りよ。リリーナの模擬パーティーのメンバー加入を認めるわ……それに今週末に行くと言ってたクリスタルホールにもコッソリ同行するわよ」


 まさか模擬パーティー実習試験でライバルと手を組むことになるとは……思わぬ副産物とともに、私達の模擬パーティー実習試験のメンバーが決定した。

 でもそれより気になるのは……セリア……この話を聞いても妙に冷静ね……きっとアンタにはアンタの考えがあるだろうけど、カイトとドレイクのカップリングは私とリリーナで阻止してみせる!

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[良い点] セリアは性格がアグネスデジタル(ウマ娘)化してるから…
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