1-9 ※パレット視点 女教師の悲しき過去~NTR脳破壊婚活物語~
私の名前はパレット・ポルンカ。
自慢の黄金色の髪を靡かせ、勤務先の王立ランベルク学園へ。
今日も王都のメインストリートにハイヒールを響かせます。
バストサイズ97の私のたわわに街ゆく男の視線は釘付け。
赤い縁の眼鏡がそんな男達の欲情の眼差しを見逃しません。
そんなイケてる私は26才――処女!!!!
おかしい。こんな事は許されない……
私の人生が狂ったのは8年前。魔法学校卒業の時――
『すまないパレット……ルイズが俺の子を身籠ったから別れてくれ』
幼馴染の恋人を寝取られました。
清い交際を続けて、卒業したら結婚しよう……そう誓っていた男の隣にいるのは、勝ち誇った顔でお腹を摩っている白魔導士の女。
注目!魔導士系のジョブには恋愛カーストがあります。
白魔導士>黒魔導士>赤魔導士>青魔導士>>>>緑魔導士。
これは女魔導士の共通認識。
昔、母がこう言いました。
『白魔導士は清楚系ビッチ、黒魔導士は小悪魔、赤魔導士はテクニシャン、青魔導士は変態プレイ可の淫乱、緑魔導士は……頑張れ』
そして私は緑魔導士です。特技は支援魔法。10年に一人の結界魔法の天才。
美人、眼鏡、巨乳……だけど笑顔の無いプライベートもお堅い結界魔法女。
そんな評判ゆえ、美人なのに魔法学校での男受けはハッキリいって微妙でした。
自覚していたけど、私には恋人がいるから別に……その慢心の結果がコレです。
今思うと、おっぱい触ろうとしたのを拒否したからですかね?
男にとって揉めない巨乳よりもヤレる貧乳の方がいいのですね……
はははは、今はこうして冷静に振り返れるけど、あの時の私は発狂しました。
今までの価値観、人生観、自尊心……様々なものと一緒に脳が破壊されました。
結果、内定していた魔導局もブッチして、誰にも告げず傷心旅行へ……
魔導局には同期もいたので、寝取られ女と指差されるのが耐えられませんでした。
そんな旅先で大発見――冒険者パーティーでチヤホヤされる女魔導士。
魔法一筋で生きていた私は冒険者というものを見下していました。
でも、屈強な男たちに囲まれて姫プしている女魔導士を見た瞬間――
これだ!!と背中に電流が走りました。
そして私はすぐに冒険者登録。
すると来るわ、来るわ、パーティー勧誘。人生最大のモテ期到来でした。
ただ、明らかに私の体目当ての男もいました。そういうのはNG。
女パーティーは……女だけってドロドロするし、私の目的と違うのでパス。
そんな私が選んだのは高い志の駆け出しパーティー《穢れなき光刃》
全員、光属性のイケメン三人組。つまりは逆ハーレムです。
リーダーのアルムスさんは真面目なイケメン【双剣士】
ソース顔ムキムキ体育会系なラングさんは【重戦士】
細身のインテリ【神官】のリナルドさんが最推しでした。
そして結界魔法を中心に支援魔法を使える私が加入すると快進撃開始。
互いを認め、信頼しあう素晴らしい仲間たち。
冒険者生活は順調……いえ順調すぎて恋愛方面はサッパリ。
でも、どんどん自分が冒険者として成長している事が嬉しく、わざわざ自分からはアクションを起こしませんでした。
まあ、失恋の後遺症で完全に受け身になっていただけですが……
そんな冒険者として活躍する充実した日々を送ること早5年。
気が付いたら、もうすぐ24才。
そろそろ誰か私に告白してもいいのでは?
もう好感度は十分だから、肉体関係に移行するフェイズ。
そう思っていたのは私だけでした。
ある日の冒険者ギルドに併設されていた酒場――
私達《穢れなき光刃》のA級冒険者パーティー昇格祝いの場で事件が起きました。
『遂にA級!これかも今の調子でS級目指して頑張ろう!』
アルムスさんの乾杯の音頭にラングさんとリナルドさんが拍手しています。
でも仮に順調にいっても今の調子でS級になる頃には、私はきっとアラサー。
この5年間、皆さんの前では、真面目な堅物女魔導士を貫きました。
でも、お酒が入って酔っていた私は、隠していたメスをさらけ出しました。
「私は女として幸せになりたいですよ~。ほら、早く私に告白して~。先着一名様に巨乳美人女魔導士をプレゼント~。今なら処女膜もついてるよ♡」
その瞬間、三人は酔いが吹っ飛んだ顔で私を見つめて、
『『『え?』』』
完璧なシンクロ。流石5年も一緒にいたチームワーク。
おえええ……あの時の三人の顔は一生のトラウマですよ。
私は女として見られてない事を知り、驚愕して立ち上がっていました。
「え?って何ですか皆さん!私はアレですか?バリア発生装置?そういう系の便利な女ですか?いやいやいや、え?え?待ってください!普通、紅一点の女魔導士を取り合ってパーティー崩壊っていうのが相場じゃないですか?」
私の醜い慟哭が酒場に響きました……がアルムスさんから返ってきたのは、
『パーティー内に色恋沙汰を持ち込むのはダメだよ』
ぬふうう!真面目!冒険者なのですから、冒険しましょうよ!ラングさんも腕組んで、うんうんって頷かないでください。え、リナルドさん……ど、ドン引きしている?あれれれれ、私がおかしいのですか?
『パレット……ごめん。君は美人だとは思うけど、そういう目で見れないよ。あと、言ってなかったけど、故郷に幼馴染の恋人がいるんだ』
『すまん。俺も信頼できる仲間としか……そもそも俺はゲイだ』
『すいませんパレットさん。私は神に仕える身なので生涯童貞を貫きます』
ぬおおおん、皆さん本当にいい人達だから責めれませんでした。
そう、私の選択ミス――失恋の反動で、意識高すぎるパーティーを選んで、お高く留まってるくせに、自分は脳内ピンクの告白待ち。もう、あれですよ。恋愛脳のバカ女がいるのは申し訳なくて、逃げるようにパーティーを抜けました。
これからどうしようか……そもそも私ってどう見られているのか?
酒場で他の冒険者からの私の女としての評価を集めたら……ガッカリですよ。
『顔と胸はS級だけど……いつも敬語で愛嬌がないんだよねえ』
『え?結婚願望あったの?だったらもっと笑顔を見せなきゃ』
『喘ぎ声が汚そう』
『絶対マグロ』
『バリアだけじゃなく処女膜も硬そう』
『胸はでかいけど陥没乳首じゃない?』
だああああ!何ですか、その偏見!でも、陥没乳首は当たってるうう!
いいじゃないですか陥没乳首!いつもは引っ込み思案だけど、気持ちよくなると、すぐにコンニチワしますよ?私の乳首は誰にも迷惑かけてないでしょおおお!
やっぱり冒険者はダメでした。女を見る目がありません。
私は再び婚活プランを再設計します。
魔導士はコリゴリでした。冒険者も期待外れでした。残りは貴族?
狙うは人生一発逆転!でも出会おうにも接点がまるで……って、ぬおおお!あの時、魔導局に就職していたら!そうです!貴族がたくさんいるのですね、魔導局!
ルイズウウウウウウ!このビッチが!てめえええ、どんだけ私の人生、滅茶苦茶にすれば気が済むんだあああ、糞があああ!そもそも、あっくん!いや、アルベルト!お前が浮気しなきゃ、こんな事には……うううう、もう嫌。全部嫌です……お酒だけが私を癒してくれます。ごくごくっ……ぷはああ、うぷっ、おええええええ。
そんな酒に溺れる私の前に求人のチラシが――
『王立ランベルク学園・支援魔法科・女性教員募集』
んほおおおお!これこそ天啓です。
王都勤務!名門貴族学校!女教師!第二のモテ期の予感!
貴族学校なら周りの教師も貴族が多いはずです。
生徒の父兄もほとんどが貴族……ええ、これしかない。
神はこのために私に試練を与えていたのですね?
私はすぐさま王都に飛んで即面接。
A級冒険者っていうのが採用の決め手でした。
そういう意味では冒険者を選んだのは正解でしたね。
こうして王都でバラ色の女教師生活、もとい婚活ライフがスタートしました。
でも……現実ってなかなか思うようにはいきません。
2年経過してわかった事……それは、貴族は基本ガードかたいという事です。
まともな貴族は幼い頃に親が決めた婚約者がいて、意外と一途なのですよ。
で、馬鹿で下品な借金塗れの貴族がたくさん女を侍らして……流石に無理。
こう、ちょうどいいって人がいないのです。
だからといって生徒は……職業倫理以前にガキすぎてダメでした。
つまり私は悪くない。私に見合う男がいないのが悪いのです。
はあ……わかっていますよ。こんな事いっているから未だに処女だって。
でも、今更妥協したくないじゃないですか……
いっそ仕事に生きた方がカッコイイかなって……
そんなだから、今日の編入試験の試験官なんて損な仕事を押し付けられました。
そもそも、こんな時期に編入試験を受けるなんてどんな子でしょう?
えっと……名前はカイト。
姓なしの平民ですか……でも国の推薦だから編入は確定です。
え?最年少のS級冒険者?それでもって貴族に婿入りする?
うーん……私の中で評価は既にマイナスですね。
たぶんオラオラ系のヤリチンDQNタイプの剣士。
そいつに世間知らずのお嬢様が惚れてデキちゃったパティーン。
そんな娘と外聞のために親バカ貴族が国に根回したってとこですかね?
あーあ、下半身優先で生きている馬鹿共の後始末ですかあ……
婚活マイスターとしての現在のカイトさんの採点結果は以下の通りです。
●平民=-20点。せめて姓くらいは欲しいですね。
〇S級冒険者=+80点。正直嘘くさいですけどね。もし本当なら+120点ですよ。
●オラオラ系=-15点。無理無理無理無理無理。やっぱ男は優しさ大事。
●ヤリチン=-30点。浮気性、病気持ち、口先だけの三重苦。
●DQN=-50点。私これでも名門魔導士の家系なので品のない人は生理的に無理。
その他貴族のしがらみ等も計算して……総合-52点。はい、不合格。
日頃の鬱憤を晴らすように、まだ会ってもいない受験生を格付けする悲しい女――
この時の私はこれから何が起こるか知る由もありません。
そう、私の婚活ロードが、この編入試験で最終局面に突入する事を……