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3-17 わからせ召喚士の本気 自宅地下に巨大ラグジュアリースパリゾート建設

 カイトのゴリ押し多数決によって可決された『ベルリオーズ家風呂建設プロジェクト』は反対派に配慮しながら着手――反対意見のほとんどは世間体を気にしての事なので、人目に付かないよう今は使われていない地下倉庫に作ることにしたのだが……


「ダメだ!これじゃあ狭すぎる!俺の理想の風呂はこれじゃあ収まらない!」


 いつになく熱くなったカイトの咆哮が地下室で響いていた。

 その隣で工事現場監督を自称してヘルメットと作業着姿のセリアが腕くみしながら相槌を打っていた。


「その通りです。私達のパラダイスは無限大ですもんね。でも安心してください。カイト君がそういうだろうと思って、お父さんから敷地内ならば、地下空間を広げてもいいって許可を貰っておきました」


「流石はセリアさん!工事現場監督は伊達じゃないね!」


「褒めてもらえて嬉しいです!それでは早速、私がビーナスハンドの素手シャベルで掘りまくってみせます。思う存分こき使ってください♡」


 そんなやる気満々のセリアを少し冷静になったカイトが落ち着かせながら、


「いや、こういう時のための召喚獣が……ブー、お前の出番だ」


 そう言ってカイトがミニブタサイズの猪を召喚すると活躍の機会を奪われたセリアは頬を膨らませてブーブー抗議する。


「むむむ……私の出番が……私の豚としての役割を奪われました……」


「まあまあ、これを見れば納得してくれるはず……それじゃあブー、下水道を傷つけないように土魔法で地下空間の拡張をするぞ」


「プイプイッ」


 ブーは鼻を地下室の床につけることで周囲の地下空間を把握すると、土魔法で地下室の外壁をドンドン広げていく。その魔法で発生した余った土砂はカイトがアイテムボックスに収納していくので、土魔法に専念できたブーは地下室をただ広げるのではなく、床だけでなく壁や天井も補強しながらツルツルに仕上げる――こうしてブーを召喚してから、10分ほどでベルリオーズ家の地下に巨大空間が出現。

 そんなブーの完璧な仕事ぶりセリアは敗北でうなだれていた。


「うう……完敗です……現場監督としても……カイト君の豚としても……やっぱり私はダメな女です」


 そんな敗北メス豚聖女に拡張工事を終わらせたカイトが肩をたたいて慰める。


「落ち込まないで。セリアさんにはこれから意見を出して欲しいんだ。だから一緒にお風呂建設プランをたてよう」


「はいっ!」


 こうして簡単にセリアが立ち直るのと同時に、地下室にリューネとフェリスがパレットを連れて降りてくる。


「まったくカイトったら……地下室をこんなに広げるなんて……風呂づくりに本気出し過ぎよ」


「わあ、お風呂は興味無かったけど、なんだか地下の秘密基地みたい楽しそう。ねえねえ、ボクも参加させてよ」


「お風呂なんてエロすぎるから教師として止めようと思いましたが……これだけカイトさんの本気を見せられたら応援しないわけにはいきませんね」


 図らずも婚約者4人が全員集合ということで、カイトは拡張した地下室のサイズを確認しながら、改めて『みんなが楽しめる風呂プラン』会議を開くことにした。


「俺の中には既にプランがあったけど、想像以上に広い空間を確保できたから、この世界の人の意見を改めて聞かせて欲しい……それじゃあ、セリアさん」


「そうですね……正直カイト君に任せれば最高の風呂ができると思いますが……そうだ!反対派のお母さんを満足させるためにお風呂以外のくつろげるエリアを作ってはどうですか?」


 それを聞いたカイトはハッとした表情になる。セリアに指摘されるまで、男性視点で考えていたので女性がくつろげる環境という概念は抜け落ちていたことに気が付いた。


「そうか。風呂にばかり気を取られてたけど、せっかくだから岩盤浴とかリラックスルームやマッサージルームにも力を入れるか……じゃあ次はリューネ」


「わ、私?私は別に……それならエロ目的じゃないって証明できるように、修行できるようなエリアを用意しなさいよ」


 反対派のリューネは世間体を気にして、とにかくエロ目的でない地下の修行施設として偽装するように進言。

 カイトも風呂関連の施設だけでは広すぎると思っていたので、スポーツジムも併設するのもアリだと思い始めた。


「なるほど……それじゃあ鏡張りのフィットネスエリアとダンベルとかのある筋トレエリアのあるスポーツジムを……それならシャワールームとサウナも欲しいな……じゃあ次にフェリスの意見は?」


「え~……それじゃあ、せっかくなら普通の風呂じゃなくて特殊なお風呂が欲しいなあ……刺激的なお風呂ってある?」


「ふっふっふ、それなら安心しろ。最近肩こりに悩まされてるピピンのために薬湯とジャグジーバスや電気風呂なんかも用意してるから、フェリスの想像しているようなただのお湯とは違うはずだ」


 それを聞いたフェリスは目を輝かせる。フェリスの風呂のイメージだと、温いお湯に汚れた垢が浮いてるような不潔なものなので、聞いたこともないお風呂に期待が湧いていた。


「にしし♪何だかボクも楽しみになってきた。ヌルヌルな温泉もある?」


「ヌルヌル?う~ん……硫黄温泉も用意してみるか……それでは最後にパレット先生の意見も聞かせてください」


「そうですね……私は風呂そのものには特に要望はありませんが……恐らくカイトさんの風呂はいつか外部にバレるでしょう。そんな時に外部の人間に見られても恥ずかしくない……いえ、圧倒するような外観にしてはどうでしょうか?」


 そのパレットの意見を聞いた瞬間にカイトの脳内の漠然としていた地下施設のデザインが固まり始める。


「うんうん……風呂のイメージが向上するようなラグジュアリーだけど下品じゃない高級ホテル風に……階段を降りたらラウンジとバーがある感じにして……鑑賞魚が泳いでる水槽や地下と思えない照明を……うん、間接照明もいい……空調を万全にするだけじゃなくて観葉植物もこだわって空気も爽やかに……そして風呂は高級素材で……よし!」


 もうあとは作るだけといった雰囲気のカイトを見たセリアはキョトンとした表情で、


「あの……カイト君……随分と壮大なプランになったみたいですけど、材料はどうするんですか?」


 少し不安そうなセリアを見たカイトはハイテンションになって陽気に答える。


「ふ、ふははは!この日のために準備してきたんだ。材料なら、ほら、この通りさ!」


 カイトはアイテムボックスの中でずっと保管していた風呂用建材を開放すると、皆が驚いてレア素材を手にとって観察していた。

 セリアはピカピカの白いブロックをさすりながら、


「か、カイト君!この石材はS級モンスターのホワイトパールゴーレムですよね!?しかも、すでにブロック状に加工済みじゃないですか!」


「建設ギルドのドワーフの親方の採集依頼のついでにたくさん獲れたから、サービスでほとんどただで加工してもらったんだ。まさかこんなところで役に立つなんて思わなかったよ」


 他にも高級素材が山のように積まれており、リューネは半永久的に熱を生み出す『マントルサラマンダーの龍核』を見つけて言葉を失い、フェリスは清水が無限に湧き出る国宝級アイテムの『水神の瓶』を覗き込み、パレットは神聖樹林でしかとれない自動浄化機能のあるオーク材の手触りを楽しんでいる。

 こうして風呂建設反対のスタンスだった三人もカイトの本気具合をわからされて、もはや口をはさむ勇気を失っていた。

 そして当の本人はやる気に満ち溢れて早速建造開始。


「それじゃあ、俺は召喚獣をフル活用して一気に作るよ。かなり本気の魔力を使って危ないから、外で待っててね」


 こうして地下室から出た四人の婚約者達は顔を見合わせていた。


「カイト君……まさかあそこまで本気だったなんて……私の矮小なエロ妄想なんて相手にならない本気工事……風呂に対する情熱をわからされちゃいました」


 そんなセリアに他のメンバーもコクコクと頷いて、カイトを待つしかなかった。

 結局、カイトは徹夜でぶっ続けて工事を行い、一晩で最高級の風呂を仕上げてしまった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界でテルマエ・ロマエをするのは日本人にテンプレですね。 [気になる点] 風呂上りのコーヒー牛乳の出番は在りますか
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