3-3 わからせ召喚士、超肉食系ケモ耳お姉さんに獣人族の性文化をわからされる
王宮での逆プロポーズ……そもそもカイトは宮廷召喚士の叙任式に来ただけのはずなのに、それをカットされた挙句に急な王命……それで姫様に会いに行けば護衛の獣人族の美女に妨害されて、流れで料理を振舞ったら精子まで要求される……もうカイトは頭がこんがらがって固まっていると、マーリェンは抱きついてさらに匂いを嗅いでいた。
「クンクン……レベルは70オーバー……ステータスは魔導士タイプだけど、ステゴロもいけるみたいだね……ますます気に入った!アンタの子種なら物理も魔法もこなせる強い子供を孕めそうだね!」
どんどん勝手に盛り上がっているマーリェンにステータスを言い当てられたカイトは驚きを隠せない。獣人は鋭い五感を持っているが、それだけでは説明できないレベルの精度だった。
「マーリェンさん……もしかして固有スキルですか?」
「わかるかい?アタイの『エアロアナライザー』は簡単に言えば鑑定眼の嗅覚・聴覚版みたいなもんさ」
それを聞いたカイトはようやく今までの事が理解できた。固有スキル『エアロアナライザー』は空気中の匂いや音をより敏感に察知して分析できる優秀な感知系の能力だからだ。
「なるほど……鑑定眼レベルの精度はないですけど、危機察知能力に関しては最高峰の能力だから護衛には理想の能力ですね」
「ほお、詳しいじゃないかい。この能力のおかげで、初対面のアンタから色んな女の匂いがして姫様の護衛として警戒したけど……はふう……一人の女として、アンタは最上級のオスで気にいったよ」
「気に入ってもらえるのは光栄ですが……ねえ!ピピン!黙ってないで助けてよ!」
少し離れたところで頭を抱えている義父にヘルプを要請したカイトだったが、ピピンもデリケートな問題でうかつに手が出せなかった。
「その……カイトは獣人の文化と接していないから知らないのは無理もないのだが、獣人の女性は特定の男性と婚姻関係を結ばずに優秀な男と子供をつくる風習があるんだ」
「はあ!?今まで関わった獣人のほとんどは冒険者の男だから知らなかったけど……そんなのダメでしょ……」
いくら異世界とはいえ、亜人種特有の風習にカルチャーショックを受けているカイトにマーリェンは不満そうな顔をする。
「なんだい?獣人は野蛮だって言いたいのかい?まあ……人族から見れば無理もないかも知れないが、仕方ないのさ」
少し自虐的な言い方のマーリェンにピピンは静かに頷いているがカイトにはさっぱりわからなかった。
「一族の掟みたいなやつですか?」
「い~や違う。もっと根本的な獣人の身体的特徴……早い話が獣人のメスは自分より強いオスの子供しか身籠れないのさ」
それを聞いたカイトは大体の事情を察した。
「あっ……確かにマーリェンさんのレベルは50近くありそうですし、そうなると……」
「そうさ。私を孕ませられるオスなんて一握り……S級冒険者クラスの男くらいさ。だからピピンの旦那も狙ってたけど、怖い嫁さんがいるから流石に無理でね……でもアンタはいい。若くて、強くて、女好きで、おまけに料理の腕も一級品ときた」
ケモ耳長身巨乳美女のお姉さんはカイト的にはストライクど真ん中だが、婚約者達の相談なしで進めていい話ではないし、このペースで女を増やすと自分の体が持たない気がしたので遠まわしに拒否しようとする。
「え、でも……マーリェンさんみたいな美人ならいくらでも男が……」
「ああ、これまで何人も男とヤったけど、どいつも情けなくてねえ……向こうの方が先に参っちまって……あんな弱い男じゃあアタイはちっとイケやしないし、妊娠なんて夢のまた夢さ」
「……それって獣人族がどうじゃなくて純粋にマーリェンさんの性欲が強すぎるだけじゃ……」
「本当にダメ男ばっかりでね。姫様の護衛になる前の諜報員時代の話だけど、A級危険度盗賊団の潜入調査の時なんて、わざと捕まって野郎どもに三日三晩手籠めにされたけど、群れるだけの弱いオスばかりだから孕むどころか、そいつらがバテちまったからアタイだけで捕まえちまったよ」
サラッとハードな話をする超弩級の肉食系女子に目をつけられたカイトは足が震えていた。これまでも欲求不満の変態女と接してきたが、彼女達とはまた別のタイプなので、対応の仕方がわからない。しかも、獣人族の文化だと言われてしまうと、それを頭ごなしに否定するのは差別になってしまう気がする……カイトはようやくピピンが困り果てていた気持ちを理解できた。
「獣人族って大変なんですね……」
「だから獣人族のオスは強くなろうと一生懸命なのさ。小さい頃から一緒に育った幼馴染のメスが好きなのに、弱くて相手してもらえないなんて切ない話は獣人族あるあるでね……そういう情けないオスの目の前で惚れてるメスを強い他のオスに孕まさせて、それのショックで潜在能力を引き出すっていう『孕ませ寝取られ脳破壊リミット開放修行』なんて業の深い事をする一族もいるくらいさ」
「いやヤバすぎでしょ!っていうか、それなら獣人族の女の人は強くならないようにした方がいいんじゃないですか?」
「はあ?アンタ馬鹿だね……そうするとダメな弱いオスに犯されるリスクが増えるから、獣人族のメスも自然と強くなるのさ……もっともアタイは強くなりすぎだけど」
そう言って胸を張っているマーリェンに対してカイトは何も言えなくなっていた……獣人族のオープンすぎる特殊な性文化に関してはそういうものだと割り切る他なかった。
そんなカイトの手をマーリェンがガシッっと掴む――獣人族の高い身体能力と身体強化魔法のコンボで凄まじい力だった。
「ほれ!それじゃあ、私の仮眠室でさっそくヤルよ!」
「ちょっと待って!いくら何でも……それに俺は仕事が!」
「なあに、天井のシミを数えているうちにイカせてやるさ。姫様との面談はそれからでも十分!」
マーリェンは待ち望んでいた強いオスを見つけて暴走する。本来は真面目な性格なのだが職務放棄して完全に肉食モードに……そんなマーリェンを唯一止められる人物が離宮から現れた。
「マーリェン……騒がしいようだけど、どうしたの?」
品のある澄んだ声――ルミナ姫の声がマーリェンは正気に戻すことに成功した。