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2-19 ※リューネ視点 最強魔法剣士への第一歩 ジョブ固有アビリティ『魔法剣』開眼

 長所は短所の裏返しというけど、私の生まれつきの負けず嫌いは今の状況においては良いのか悪いのか……カイトもそれで判断に困ってる。


『ん~、レベリングするって目標は達成できたと思うけど……』


「それはそうだけど……」


 私は言葉を詰まらせたけど、その場の全員が私の考えていることを見抜いていた。


『自分だけソロでエンシェントゴーレムを倒せないのが悔しいんだね?』


 カイトにズバリ言い当てられた私はバツの悪そうな表情で黙って頷く。カイトは苦笑いをしたけど……だって……セリアとカイトだけじゃなくて……フェリスまでエンシェントゴーレムを瞬殺できるのに……力不足なのは私だって分かってるの!でもレベルアップしたのにチャレンジもせずに帰るのは嫌!

 そんな私の気持ちはやっぱりカイトに筒抜けだった。


『わかった。だけど、いつでも助けられるように俺が後方で待機してるから、くれぐれも無茶しちゃダメだからね。冒険者にとって強さよりも引き際の判断力の方が大事だって事を肝に銘じて欲しい』


 今のカイトの顔は私の婚約者でも弟でもない……『聖☆わからせ隊』のパーティーリーダーとしての厳しい顔をしてるけど……やっぱり優しい……そんなカイトにふさわしい女に……最強の召喚士のパートナーになるには私は最強の魔法剣士にならなくちゃ!


「ええ、頼りにしてるわ」


 こうして私の単独エンシェントゴーレム討伐が始まった。

 私は三人の仲間に見守られながらノロマなデカブツと対峙した。


『ギ……ギギギ……ギギー』

 

 ゴーレムが私はロックオンして右腕を振り下ろして殴りかかってくるけど、これまでの戦いでゴーレムの攻撃パターンを把握しているから回避は余裕だった。その攻撃をかわしざまに私は反撃する。狙いは膝の関節部分――私は炎を纏った剣の斬撃をおみまいした。


「バーニングスラッシュ!くっ、やっぱり一撃じゃダメか」


 カイトの関節技が効いたのを見て思いついたけど、狙いは悪くなさそう。いきなりコアを破壊する威力がないから、まずは足を破壊することにした。そしてバーニングスラッシュを7発くらわせると、ようやくゴーレムの膝の可動部が折れて、両手で体を支えている。隙だらけになったけど、うかうかしてられない。すでにゴーレムの自動修復が始まっているから、私は魔力を入念に練って自分の最大威力の攻撃魔法を放つ。


「くらいなさい、ソルプロミネンス!」


 私の自慢の火と光の混合魔法をゴーレムのコアめがけてぶっ放した――鉄をも溶かす熱量が弾けて爆発と煙が発生――私は確かな手ごたえを感じたのにゴーレムの装甲を焦がすだけでコアにはノーダメージだった。


「そんな……カイトのニシキの火魔法は効果があったのに……」


 そうだ……私が勝算を見出したのはカイトが火魔法でコアを破壊してたから……魔法の威力は十分なはずなのに……

 そんな当惑する私の背中を見たカイトが後ろからアドバイスをくれた。


『威力は十分だけど、魔法発動までの時間があったからゴーレムがバリアを張ったんだよ。ソルプロミネンスをファイアボールと同じくらいの発動スピードで出せれば倒せたかもしれない』


 私は言われてようやくゴーレムの周りのセイントバリアに気が付いて、冒険者ギルドの資料に書かれていた事を思い出した。よく観察するとゴーレムの肩の球体部分から魔法が発動している……きっと目ざといフェリスなら気づいただろう……改めて自分の視野の狭さを思い知らされた。


「それなら……先に肩を破壊すれば!」


 私は単細胞だから無我夢中で肩に斬りかかったが……


パキンッ


 鋼の剣は根元からぽっきりと折れる――私って本当に馬鹿だ。剣の消耗具合も把握せず、やみくもに斬りかかっていた。仮にこのバリア発生装置を壊せても、まだもう片方の肩にもバリア発生装置があるのだから、両方は破壊して、それらが自動修復する前にソルプロミネンスを撃つなんて無計画すぎた――でも不思議と私の闘志は折れていなかった。


『リューネ……もう……』


 カイトが心配そうに撤退を促してきたけど、私は何も言わず片手でそれを制した。そして私のもう片方の手には刀身のない剣……それを見ながら、今日の経験を振り返って……強力だけど発動時間がある魔法……それならば予め……その魔力で剣を作ろう……そんな私の安直な思いつきが新しいアビリティ『魔法剣』を発現させた。


「ふう……最初は火で……『フレイムタン』ってとこかしら」


 私は火の魔力で刀身を形成すると、ちょうどゴーレムも自己修復が終わって再び私に向かってくる――こうして第二ラウンドが開始――狙いは最初と同じ膝関節の破壊だ。


「むう……思ったより難しいわね」


 冷静にゴーレムの攻撃を避けながら自分の剣を観察する。文字通り付け焼き刃なので、いつもと同じ要領で振ると炎の刀身がブレてイマイチ威力が出ない。まだ慣れてないのだから仕方ないと割り切って、刀身を半分くらいに圧縮することでようやく安定した。


「よし!これならどう!」


 私は斬りかかりながらゴーレムの膝関節に問いかけると破壊音が返ってきた。普通の剣よりも威力は上で一撃で破壊できた……でもこれではコアまで貫けない。私はゴーレムが再び隙だらけになったのを見計らって再び魔法剣を形成する。


「炎の刃に光を……混合魔法と同じ要領で……はあっ!」


 気合を込めて、あらん限りの魔力と集中を消費することで、ソルプロミネンスを刃にするイメージで火と光の魔法剣を具現化することができた。もう名前なんてつけてる余裕も振りかぶる体力も残ってない。


「これが今の私の全力!いけええ!」


 やっぱり私は単純だ。もはや剣術とは呼べない不格好な構えでゴーレムのコアめがけて突進して魔法剣を突き立てた……気がする。体力、魔力、気力、あらゆる力をふり絞った私は意識が朦朧として、ゴーレムを倒したのかどうか分からない……けど、達成感と幸福感に包まれていた。


『リューネ……よく頑張ったね……きっと最強の魔法剣士になれるよ』


 愛しい人の褒め言葉――それが現実か夢か分からないけど満足――そのまま完全に意識を失って皆に迷惑かけちゃったけど、ダンジョン攻略に来て本当によかった。薄れゆく意識の中で、これからも皆に負けないように頑張ろうと改めて決意した。

次回はセリア視点のエピローグ的な2部最終話です。

午前中に仕上げて投稿する予定です。

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