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2-14 新人指導という名のお姉ちゃん公開わからせプレイ

「じゃあ頑張るんだよ『聖☆わからせ隊』」


 ビッケスは新しい冒険者タグを渡すとお昼寝タイム。

 そしてパーティー登録に同行していたパレットも名残惜しそうに帰宅する。


「うう……私も本当はカイトさんとダンジョン攻略に同行したいのですが、来週のテストの作成がありまして……」


「いや、いきなり呼び出しちゃってすいません。俺がしっかり新人二人を指導しますから安心してください」


「土日で一泊する流れですよね?どのダンジョンに行かれるのですか?」


「それが……リューネがセリアさんの行きつけの『エンシェントパレス』でレベリングするって聞かなくて……」


「えええ、よりによってあそこですか……それでは怪我に気を付けてくださいね」


 ドン引きした様子のパレットがそそくさと帰っていく姿を見たフェリスがカイトの袖を引っ張る。


「カイちゃん、その『エンシェントパレス』ってどういうとこなの?」


「簡単に言えば『国内で最も不人気なダンジョン』だ」


「え~、わざわざそんなところ行かなくても……」


 そんな不満そうなフェリスの背中をリューネが叩きながら、


「あんただってセリアに追いつきたいでしょ?この辺りで唯一のA級ダンジョンだから、レベリングには持って来いよ」


「それはそうだけど……いくらカイちゃんがいるとはいえ危ないんじゃ」


 A級ダンジョンと聞いて怯えるフェリス――これが新米冒険者の正しい姿であり、気がはやるリューネを危うく感じたカイトは新人指導を開始することにした。


「それじゃあ新人二人でエンシェントパレスでのレベリング計画をたててみてくれ。もちろん俺にアドバイスを求めたり頼ってくれて構わないけど、自分の力で情報収集の段階から始めてごらん」


 そう言われたリューネはますます意気込んでみせた。


「ふふ、まかせなさい。さあ、フェリス。ダンジョン情報はギルドの受付で閲覧できるはずだから行くわよ」


「うん。ボクも早く一人前になってみせる」


 こうして新人二人組が受付で受け取ったエンシェントパレスの情報は人気が無いこともあって、ひどく簡潔なものだった。



エンシェントパレス

 千年以上昔に滅んだ古代文明の宮殿跡。王都マクセラの北門から北北東に6キロの場所にある古代遺跡タイプのダンジョンで、出現するモンスターはエンシェントゴーレムのみ。すでに目ぼしい宝は持ち去られており、現在は考古学者の調査クエスト以外で人が足を踏み入れない場所。気象や地形的な危険は無いが、A級モンスターであるエンシェントゴーレムが徘徊しているので、A級ダンジョン指定されている。

〇ダンジョンランク【A級】 

〇ダンジョンタイプ【遺跡型】

〇出現モンスター

 エンシェントゴーレム(聖・A級)



 それを見たフェリスは距離的に近い事とモンスター以外の危険が無いことに胸をなでおろして、


「ふんふん、じゃあ次はモンスター情報を閲覧しよう」


「そうね。え~っと……これこれ」



エンシェントゴーレム

 エンシェントパレスを守護する聖属性のゴーレム。大きさは2.5m程で動きは遅く決まった動作しかできないが、圧倒的な耐久力を誇り生半可な物理攻撃ではびくともせず、一定以上の魔力を検知するとセイントバリアを展開するのでA級にランクはされている。しかし、近づかない限り攻撃してくることはなく、遺跡から追い出すだけで危険な攻撃はしてこないので危険度はかなり低い。

〇ランク【A級】

〇属性 聖

〇アビリティ

 支援魔法

〇スペル

 セイントバリア  

〇平均レベル・ステータス

 レベル43

 LP500 SP350 PW300 DF550 MP350 AG30 総合2080

  

 

 この資料を読んでフェリスはエンシェントパレスが不人気な理由が理解できた。


「なるほど……金にならないし硬いモンスターが徘徊するだけだから普通の人は近づかないわけだね」


 それはリューネも理解できたが彼女には腑に落ちない点もあった。


「でも、どうしてレベリングスポットにならないのかしら?」


「ああ、リューネちゃんは何だかんだお嬢様育ちだからなあ……」


「何よ……私が世間知らずだって言いたいわけ?」


「そうは言わないけど……こんな硬いモンスター相手だと武器の損耗が激しくて一般人には割に合わないだろうね。ボクもカイちゃん達がいなかったら、弱いモンスターをたくさん狩る方が経験値だけじゃなくて経済的にも効率いいって判断すると思う」


「確かに……こんなところに行くのは素手でトンデモ威力を出せるバケモノくらいかも……」


 そう言うと二人はセリアに視線を送る――あんな少女がA級のゴーレムをボコボコにしてる姿が想像できなかったが、セリアの異常なステータスがそれを証明していた。

 しかし、まだまだ未熟だと自覚しているフェリスはリューネに提案する。


「リューネちゃん、ボク達の目的はレベリングだよね?それなら王都南の階層型のC級ダンジョン『クリスタルホール』の方が身の丈に合ってるんじゃないかな?」


「正論ね。でも、あそこは王都の冒険者の人気スポットで混雑してるから、意外とレベリングの効率は悪いわよ。それよりもこの四人でゴーレム狩りをした方がいいと思うし……なによりセリアとの差を自分の目で確かめたいのよ」


 それを聞いたフェリスは生真面目な姉に従うことにした。


「わかった……じゃあ予定通りエンシェントパレスでレベリングだね」


「よし!そうと決まれば走って行くわよ!時間が勿体ないもの」


 そんな暴走気味な姉を意外と堅実派なリューネが押しとどめる。


「気持ちはわかるけど、そんなに慌てちゃダメだよ。もうお昼過ぎだし、走って消耗して夕刻にダンジョンに入るよりも、今日はダンジョン近くまで歩いていって余裕を持って野営しようよ……カイちゃん、それでいいかな?」


「ああ、初めて行くダンジョンに暗くなってからって突入するのは基本NG行動だからフェリスくらい余裕のあるプランがベストだ。そしてリューネは慎重さが足りない。それじゃあ、俺がいてもフォローしきれないかもしれないよ」


「にしし♪褒めて褒めて♡」


 フェリスがカイトに頭ナデナデを要求するので、彼女の望み通りにすると満足そうに目を細めていた……が、リューネはあまり面白くない。冒険者デビューということで張り切っていたのに空回りしており、堅実なフェリスが褒められていると情けない気持ちになっていた。

 そんなリューネの心境を察知したカイトはフォローすることにした。


「じゃあ、フェリスはセリアさんと今日の野営に必要な物資の調達をしてみてくれ。テントとかの道具は俺のアイテムボックス内にあるから、主に食料品とかだな。俺はリューネと道中でこなせそうなクエストがあるか見ておくよ」


 こうして二手に別れたがリューネは鈍いなりにカイトの気遣いを理解していた。


「ふん、張り切り空回り女を落ち着かせようって魂胆でしょ?」


 いつもの意地っ張りモードのリューネ……カイトはこうなると手強いのを知っているが攻略法も分かっていた。


「俺はリューネが……リューネお姉ちゃんが心配なんだよ」


 リューネはお姉ちゃんと言われるとチョロさが100倍増。


「え?お姉ちゃん……私が心配?」


「うん。頑張り屋だから、はやる気持ちはわかるけど……レベリングはあくまで目的で、それより大切な事を見落としてしまいそうで……」


 これで十分だった。リューネは冷静さを取り戻したが、同時に完全にお姉ちゃんモードになってしまった。


「カイトごめんね。私はカイトの……皆のお姉ちゃんなのに自分の事ばかり考えて……皆の安全が第一なのに……これじゃあ冒険者……いえ、お姉ちゃん失格だよね」


 リューネはカイトの言いたいことを理解したが、反省しすぎてカイトに弱々しく抱きついてくる。

 ここは冒険者ギルドの広い受付フロア――しかも、さっき悪目立ちしたばかりなのに、真昼間から女と抱き合っているので、再び白い目がカイトに注がれる。


『うわぁ、いきなり女と抱き合ってるよ』


『しかも姉みたいだぞ?でも……完全にメスの顔だよな』


『まさか人前で近親相姦?』


 そんな会話が聞こえ始めたので、カイトはリューネを引き離そうとする。


「リューネ……それさえわかってくれればいいから離れてもらえるかな?」


 しかし、リューネは頑として拒否――お姉ちゃん性癖が開放されてから少しセリアに似てきたリューネは、周りが見えなくなり人目も気にせずカイトにわからせを懇願する。


「いや!私から!お姉ちゃんから離れないで!その代わりにダメなお姉ちゃんにお仕置きして!ビンタでも!腹パンでもいいから!わからせて!今の私が新人ヘッポコ冒険者だって!ハードな指導をして!」


「ちょっ!人前で変な事言うのやめろ!」


 カイトの悲痛な叫びがギルドに響いたが、『聖☆わからせ隊』のパーティーリーダーが危険人物という情報はたちまち冒険者の間で共有され、特に女性は寄り付かなくなってしまった。

いよいよダンジョンでレベリング……ですがその前に次回はセリア視点の変態回です。

全年齢対象の健全な着衣SMですので大丈夫です。

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