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2-10 わからされし婚約者達とパーティー結成へ

 カイトとその婚約者達は関係が深まると、本業にもプラスに働き、メキメキと強くなっていた。

 カイトとセリア、リューネ、フェリスの放課後の日課はベルリオーズ家の庭で特訓――それぞれが創意工夫して日々、切磋琢磨していた。

 そんな中でも特に成長が著しいのはフェリスだった。


「来て!アゲハ!ヘラク!」


 フェリスはマルチ召喚を習得して、今ではファントムバタフライの『アゲハ』とエメラルドビートルの『ヘラク』を同時に召喚できるようになっていた。


「カイちゃん!どう?完璧でしょ?」


「ああ、契約魔法印が無くなって本来の力が出せるようになったな」


「にしし♪でも、スパイラル召喚はまだ……」


「スパイラル召喚は召喚獣同士の相性が大事だから仕方ない……才能とか努力とかの問題じゃないから、ゆっくり契約できる召喚獣を増やしていけば、いつかできるようになるはずだ」


「う~ん……でも、早くセリアお姉ちゃんやリューネちゃんに追いつきたいなあ」


 少しいじけたようなフェリスの視線の先では、セリアとリューネが模擬戦をしていた。


「ファイアボール×3を喰らいなさい」


「なんの!カイト君直伝廻し受け!」


 成長して威力も精度も上がったリューネの三連続ファイアボールをセリアはビーナスハンドを活かしたオリジナル空手(自称:カイト・セリア流ラブラブ聖拳)の受けでかき消した。


「くうっ!私の魔法を素手で!ならばバーニングスラッシュ!」


「お姉ちゃん甘いよ!シェアッ!」


 リューネが模擬専用の刃を潰した剣を使っているとはいえ、セリアは聖女とは思えない気合いと共に手刀を繰り出すと、リューネのバーニングスラッシュを剣もろともに真っ二つに……


「うう……また負けた!ステータスを私と同じくらいに抑えてるはずなのに!」


「ふふふ、そうです!これはステータスではなく、私とカイト君の愛の力の勝利!二人だけの秘密の肉体特訓(意味深)の成果ですね!」


 悔しがる姉と恍惚表情を浮かべる妹――完全に学生のレベルを超えた二人の姉の戦いにフェリスは自信を無くしてしまう。

 カイトはそんなフェリスの肩を叩いて励ました。


「何だかんだあの二人は特殊だから気にするな……じゃあ、マルチ召喚も実践級になったし、次のステップに……フェリス向けの召喚魔法を教えるよ」


 そのカイトの言葉にフェリスは目を輝かせた。


「ボク向け?うん!うん!早く教えて!」


 そんなフェリスとは対照的に、カイトは少し暗い表情で自信なさげだった。


「その……俺もまだ練習中で……ぶっちゃけ苦手だから期待するなよ……」


 カイトは普段のお調子者の彼らしくない前置きをしてから、ニシキを召喚して大きく深呼吸をしてロッドを構えた。


「ふーっ……ニシキ頼むぞ……憑依召喚!」


 カイトはスパイラル召喚の時と同じようにニシキを光の粒子に分解――コード化を行って、魔法陣にするのではなく、自分のロッドに宿した。

 フェリスは初めて見る現象を少しも見逃さないようにジックリ観察した。


「凄い凄い!召喚獣をコード化して、ロッドに火属性を付与したんだね?」


「ああ、このまま武器として使ってもいいし……ファイアボール」


 カイトは空に向かって最上級のファイアボールを放ってみせたが、それで憑依召喚は解除されてしまった。


「まあ、これが憑依召喚ってやつで召喚獣をコード化して属性付与したり武器や防具に具現化したり……強力だけど、やっぱ俺には合わないな……」


「え~、何で?」


「俺の場合は自前の体術で自衛は十分だし、召喚獣をそのまま戦わせた方が効率いいし……何より俺の召喚獣は憑依召喚に向いてるのが少ないんだよ」


「憑依召喚に向き不向きがあるの?」


「ああ、そして憑依召喚に向いてる召喚獣が昆虫系なんだ。エメラルドビートルみたいな甲虫系なんかは特に」


 それを聞いたフェリスは得意げな顔になった。


「ふ~ん♪ボクがカイちゃんより……よし!ヘラク!コード化!」


「おいおいそんな簡単に……って、できてる!?」


 フェリスは武器を使ったりする近接戦闘の才能は乏しい反面、召喚士としては天才的なセンスの持ち主だった。そしてフェリスは本能的にコード化したヘラクを自分の服に防具として再構築すると――


「これ……鎧だよね。わあ、ボクに虫の羽が生えたみたい♪」


 フェリスは驚いて固まっているカイトの前でクルリと一回転。フェリスはエメラルドの鎧のような衣服を身に纏っている――ガッシリした騎士に鎧というより、胸や肩などが硬質化した機動性重視のボディスーツという出で立ち――そして最大の特徴は昆虫特有の薄い透明な羽がマントのように背中に展開されていた。

 そんなフェリスの変身に気が付いたセリアとリューネも駆け寄ってきた。


「わあ、フェリスちゃん綺麗です!いい!フェリスちゃんの褐色エロカワボディと緑の宝石アーマーの組合せ!はあはあ……昂ります!」


 そんな感じで完全に見た目の事しか頭にないセリアと対照的にリューネは性能面が気になって仕方ない様子だった。


「へー、これも召喚魔法?フェリス、ちょっと動いてみなさいよ」


「うん。この羽は……きゃあっ!やっぱ飛べるんだ!」


 フェリスは自身の想像以上スピードで空中に飛び上がる――虫の特有の高速の羽ばたきで浮き上がると器用にホバリングしてみせた。


「どう♪すごいでしょ♪」


 初めて空を飛んだフェリスはすっかり上機嫌で、カイト達の頭上を旋回してみせると、セリアはいよいよ興奮してしまい、


「妖精!私の妹可愛くエッチな妖精!ああ!捕まえたいです!」


「あんた変なところで頭がファンシーね……それにしても飛べるのは羨ましいわ」


 そんな二人の姉を見下ろすフェリスは完全に調子に乗ってしまい、どんどん高度を上げていくのでカイトが大声を上げた。


「おい!フェリス!危ないから、もう降りてこい!」


「にしし♪大丈夫だいじょ?きゃああ!」


 フェリスの初フライトは憑依召喚が急に解除されてしまって落下してしまう。

 もっともカイトはこうなるのが予想できたので、落ち着いて対処した。


「だから言ったろ!まったく……」


 そう愚痴りながらメルを召喚して、植物でトランポリンのようなクッションを作って受け止める――フェリスは反省するどころかそれを楽しんでいた。


「わあ、流石カイちゃん♪もう一回やっていい?」


 そんな無邪気なフェリスをカイトは優しくコツンと叩く。


「だ~め、憑依召喚は慣れないと持続時間が短いから、とにかく練習」


 カイトは妹をあやすように叱るが、フェリスの反応はカイトの予想と違い、嬉しそうに頭をさすっていた。


「カイちゃん……もっと強くぶって♪ボクにお仕置きして♪」


 最近すっかりマゾとして開花しはじめたフェリスにカイトが困り果てていると、リューネが助け舟を出した。


「もう!昼間から庭先で特殊なプレイはやめなさい!」


 自分はお姉ちゃんプレイしてる癖に堂々としているリューネを見てセリアがクスクス。

 そんな妹を無視してリューネはカイトに詰め寄った。


「カイト!セリアに体術教えて、フェリスにこんな凄い技を伝授して……おね、私にも何かないの?」


 少しお姉ちゃんモードになりかけのリューネにカイトは頬をポリポリ。


「そうだな……魔法剣士は大器晩成タイプだから地道に強くなるのが一番なんだけど、そろそろ皆でダンジョン攻略するか?」


「ダンジョン!?そうよ!私はずっと行きたかったの!セリア!あんたの行きつけのダンジョン連れてきなさいよ」


 そんなノリノリのリューネのテンションとは真逆のトーンでセリアは、


「え~、あそこは正直おすすめできないけど……でも!いいですね!お姉ちゃんとフェリスちゃんの冒険者登録と一緒に、パレット先生も誘って『素敵なカイト君withわからせシスターズ』のパーティー登録に行きましょう!」


 そのパーティー名を聞いた三人のテンションは若干下がったが、こうして冒険者ギルドに行くことが決定した。

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