2-7 ※リューネ視点 優等生魔法剣士の秘密の趣味♡
『リューネ……絶対誰にも言わないから……だから返事してくれ』
今、私の婚約者がドア超しに心配そうに語りかけてくれている……それなのに私は布団を被ってダンゴムシみたいに丸まって……すごく情けない……私ってダメダメ……そんな私も学園では優等生で通っていて――
『リューネさんって本当に素敵ですね!美人で剣も魔法も男以上……才能に溺れず努力できるなんて……』
『本当です!私もこんな風に……そういえばプライベートはどのようにお過ごしですの?ご趣味とかは?』
私の取り巻きの女子によく聞かれる質問――私は答えを用意してある。
「私の趣味?もちろん剣と魔法の練習よ。その両方で頂点になるために遊んでる暇なんてないもの」
こう答えると皆は黄色い歓声をあげてくれる。
でも真っ赤な嘘。私の本当の趣味は――
『うふふ♡あなた♡チュッ♡』
ママの甘い声が両親の寝室から漏れている……私は聞くだけでは満足できなくて鍵穴から覗く……そう、私の本当の趣味は『両親の夜の姿を盗み見すること』だった。
鍵穴からだとパパの上で抱き着いているママしか見えない。私にはそれで充分。
いつもおっとりして優しく美人で強いママ……私の自慢の世界一のママ。でも今の私の目の前には昼のママじゃない。
ママはいつもパパの上で抱き着い甘えてる……もうすぐ40歳の二児の母とは思えない美しさに釘付けになる。だって……エッチすぎる。女の……娘の私から見ても魅力的だ。最近、男子生徒がママをオカズにしてるらしいけど、正直責められない。それくらいにママはエロい……そう、だから私がこんなにドスケベなのは仕方ないのよ!だってあんなエロいママのオッパイを吸って育ったんだからエロく当たり前!
そんな馬鹿な言い訳をしながらママの姿を瞼に焼き付けて自室のベッドへ……それが私の趣味……だった。そう、過去形。今は少し違う。もっとダメな方に……より変態な趣味になった。それはセリアが『わかシス会議』とかいうヘンテコな会合をしたのがキッカケで……
『ごめんなさい、お姉ちゃん。決戦前のカイト君を勇気づけたくて……最初はキスだけのつもりだったの!途中から……えへへ…カイト君が燃えちゃって♡』
薄々感づいていたけどセリア本人の口から言われて……いや、それでも信じられなかった。カイトと出会ってから少し変わったけど、セリアは昔から大人しくて男が苦手でそういった知識なんて……もしかしたらキスして抱き合うだけで赤ちゃんができるってカワイイ勘違いしてるのかもしれないわね。だから私は確かめることにした。
月曜日の夜、カイトはセリアの部屋で寝る。セリアの姉として……カイトの婚約者として……そう、これは二人が間違った知識で変なプレイをしてないか確かめるため……そう自分に言い聞かせて高まる鼓動と荒い息遣いを抑えながら鍵穴から二人の夜の営みを覗いた。
『チュッ♡カイト君♡好き♡』
セリアがカイトとベッドでキスしてる……でも当然これは大人の行為じゃないわ……つまり、まだまだお子ちゃまね!
そう油断してるとキスがネットリしたディープキスに……ふ、ふ~ん、少しはやるじゃない……
そんな風に強がってはいたが、二人の圧倒的な愛の迫力で、敗北感と認めたくないという気持ちで胸がいっぱいになって自室に逃げ込んだ。
そしてこれが私の日課に……私の趣味はバージョンアップしてしまった。
月曜日はセリアの艶っぽいキス音を壁越しに聞いて……
木曜日はパレット先生に昨晩の会話の内容を聞かされて……
金曜日はフェリスの無邪気な声を盗み聞きして……
私は毎晩、妄想の中でカイトと愛し合う。でも、しっくりこない……どれだけ他の婚約者達とキスをするカイトの姿を見たり聞いたりして補完しても、私との関係は……だからとにかくイトの名前を口にする事しかできない。
「カイト♡好き♡私も♡ああん♡寂しいよお♡私の部屋に来てよ♡私にもキスしてよ♡」
毎夜毎夜飽きることなく寂しい一人遊びする私……カイトは、そんな私の気も知らないで普通に接してくれる。他の婚約者と変わらない対応をしてくれるのが嬉しい……可愛げないのに……変に優しくしてこない……好き♡好き♡そういうところが好き♡どれくらい好きかっていうと……本当は今すぐカイトと結婚したいけど……
「だ、ダメに決まってるじゃない!そういうのは、しっかり結婚してから!学園卒業してから!」
わかシス会議でセリア達にはそう言ったけど、アレは自分に言い聞かせるための言葉……そうしないと私を歯止めがきかなくなる。
ああ……剣の練習よりもカイトともっと仲良くなりたい!魔法?カイトを魅了する魔法教えてよ!優等生の肩書なんかカイトの前ではくだらない!本当は今すぐ結婚して学園に通いたい!私とカイトの愛を周りに見せつけたい!そして新しい家族を!大切な家族を増やして……
「あんたと家族になるなんて嫌!私に負けたら出て行って!」
初めてカイトに会った日に言った言葉……もちろん後悔してるし、今のカイトは私の大切な婚約者……でも……婚約者って存在が家族としてどういう形で組み込まれるのかわからないっていうのは今も変わらない。それが今でもカイトを上手に受け入れられない理由だって自覚している。私なりに考えて悩んでいたのに、昨日あのお茶を飲んで……カイトが帰ってきた時……
『ただいま~。いや~パレット先生に捕まってさ~』
あ、カイトだ♡私の大切な弟♡強く優しく最高の男で私の婚約者♡好き♡カイトもお姉ちゃんが大好き♡いつもみたいにおかえりのキスしてあげなくちゃ♡
……うん、流石に鈍い私でもセリアとフェリスが薬盛った事に気が付いた。でも、今はそんなことよりも……
カイトがカワイイ!弟ってなんでこんなに可愛いの?なんでもしてあげたい!お姉ちゃんが甘やかしてあげたい!小っちゃい頃はいつも私の後にくっついてたのに!私よりも大きくなっちゃった!しかも強い!もう宮廷召喚士だもんね!そんな自慢の弟と……私は結婚する!
『リューネお姉ちゃん!俺……ずっとリューネお姉ちゃんが好きだった……俺と結婚してくだい!』
突然のプロポーズに私は泣きながらカイトに抱きついた……気がする。
あ、ああ……カイトの弟として記憶がどんどん溢れてくる……そうよ……カイトは私の弟なんだから……どんなにイチャイチャしても恥ずかしくない……だって私はお姉ちゃんだから!
「カイトおかえり♡ほら、お姉ちゃんにただいまのキスは?」
ふふ、お互いの頬にキス♡いつもしてるはずなのに……なんだか凄く新鮮♡
「オヤツができたよカイト♡ほら、ア~ン♡」
美味しそうに食べるカイト可愛い♡そのままお姉ちゃんも食べて♡
「カイト♡お姉ちゃんが耳掃除してあげる♡ほら、膝枕♡」
カイトは私の足が好き♡お姉ちゃん、脚線美には自信があるんだよ♡
「ふふ♡カイトはかわいいね♡よしよし♡」
カイトの頭をナデナデ♡可愛いだけじゃなくカイトは頭もいい……ああ、最高♡
「カイト♡夕飯の前にお姉ちゃんと剣の特訓しよ♡」
ああ……カイトの汗……舐めたい……でも、あまり露骨にすると……カイトの洗濯物を嗅いでるのがばれちゃう♡
こんな感じで私達はいつも通りラブラブ姉弟♡それなのに帰ってきたパパとママは変な顔してる……どうしたのかしら?
そんな幸せな時間が……セリアに終わらされちゃった。
「カイト……昔みたいにお姉ちゃんと一緒に寝ようよ……」
『ごめんね、お姉ちゃん。今日は月曜日だから……』
「そっか……カイトはセリアと……」
セリアは申し訳なさそうにしてるけど悪いのは私……お姉ちゃんぶって卒業するまでダメって言っちゃった……そんな事言わなければよかった。
「大丈夫だよ。気にしないで……でも、お姉ちゃん……カイトならいつ部屋に来てもいいからね♡」
精一杯強がって涙を目に溜めて自室に逃げ込んだ……でもカイトに私の本心を聞いて欲しく声もいつもより大きくなってた。
「カイト♡好きいい♡だいしゅきいい♡ああん♡今頃セリアと……私もカイトと♡チュッチュしたいよおお♡……はあ♡はあ♡どうしたらカイトと……カイト……お姉ちゃん寂しいよぉ……でも毎晩カイトのことしか考えられない変態なお姉ちゃんなんて嫌だよね……ダメなお姉ちゃんでごめんね……ああん♡せめて妄想でカイトと♡カイト♡カイト♡カイトオオ♡」
こうしてグッスリ寝た私だけど翌朝――
「うわあああ!昨日の私なんなのよおおお!絶対セリアが薬盛ったわね!ああああ!恥ずかしく皆の顔見れないじゃない!」
薬が切れた私は早朝から布団の中で発狂していた。
うあああ!昨日皆の様子が変だと思ったけど、変なのは私じゃない!そりゃ作り笑い浮かべるわよね!ああああ……カイトに呆れられちゃう……本当にカイトが弟だったらこんな……
その瞬間、私の脳内に電流が走ってイケナイスイッチが入る。
「そうよ……薬が切れてないフリをすれば……そうすればカイトがずっと私の弟で……これよ!だって誰も不幸にならないじゃない!バレないように演技するのなんて簡単よ!だってカイトのお姉ちゃんになる妄想はずっとしてたからシミュレーションはバッチリ!ふ、ふふふ……これでカイトと素直にイチャイチャできる……」
そんな浅はかな考えの結果がこれ……
『リューネ……アレが演技だって気づいてるのは俺だけだよ……恥ずかしい気持ちはわかるけど……皆が帰って来る前に話し合おう……』
カイトの馬鹿!あんたにバレるのが一番気まずいのよ!ああ……時間を巻き戻したい……でも、いつまでもこのままってわけにも……私は観念して、布団を羽織った状態でドアを開けた。
おかげさまで3万PV突破できました。ありがとうございます。
次回もリューネのお姉ちゃんプレイのエロ回です。
お姉ちゃん役はリューネなので新ヒロインはケモ耳妹キャラにする予定です。