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1-36 禁術『スパイラル召喚』解禁と『わからせ召喚士』の誕生

 カイトが集中力を高めて、2体の召喚獣に魔力を注ぎ込むと、ローガンはそのプレッシャーで動けなくなる。


「スパイラル召喚?」


 ローガンは聞いたこともない召喚魔法を目の当たりにして困惑する――彼は全くの無能というわけではない。人間性などの面を考慮されて宮廷召喚士になれなかった過去はあるが上級召喚獣を契約している以上、この世界では優秀な召喚士の部類に属している――その彼でも知らない召喚魔法に会場も騒めいていた。

 カイトはそんなローガンに少しだけ解説する。


「本当にこの世界では知られてないんだね。なんだかズルみたいだから、ちょっとだけ教えてあげるよ……基本はあんたと同じ魔法陣と詠唱。この魔法陣はあんた達の契約魔法印の役割だけど、その材料は召喚獣……タマ、コード化してくれ」


 カイトの指示を受けたタマは光の粒子になる。

 ローガンは初めて見る現象に理解が追い付かず直立していた。


「なぜ?なぜ自分の召喚獣をバラバラに……」


「バラバラ?ちょっと正確じゃないね。タマは俺の魔力を具現化した存在だから、深く繋がって理解すれば粒子化することで、魔法陣として再構築……螺旋魔法陣になれる」


 カイトはピースケの足元に、タマの粒子を集めて螺旋型の魔法陣を形成した。この魔法陣がスパイラル召喚と言われる理由だった。


「これで魔法陣は完成。あとはあんたと同じく詠唱するだけど、決定的に違うことがある」


「決定的に違うこと?」


「ああ、あんたは自分の体を媒体にして召喚魔法を行使したけど、俺は自分の召喚獣そのものを依代にする。さあ、ピースケいくぞ」


 そのカイトの呼びかけ「ピー」と反応したピースケの体が発光すると、カイトは詠唱を開始――


「聖戦こそが我が運命  悪を赦さぬ天啓が  光の龍を呼び覚ます  スパイラル召喚   聖光龍 ホーリージャッジメントドラゴン」


 詠唱が完了した瞬間――タマによって形成された光属性の螺旋魔法陣がピースケを光の奔流で包み込むと、その光は天まで届く勢いで雲を裂く――会場の人々は突然の光の氾濫に目を閉じる。そして瞼を開けた時に、光の翼竜が出現していた。

 その光の竜の正面にいたローガンは腰を抜かして座り込む。自分の火竜と格が違いすぎるのが一目でわかったのだから仕方ない。大きさそのものは大差ないが、纏う魔力の質と量が別次元。何よりその宝石で構成されたような美しい白亜の流線型の姿は上級召喚獣とは一線を画する品格を纏っていた。


「ば、馬鹿な……契約魔法印なしで上級召喚獣を……いや、それ以上?」


 ローガンはうわ言のように呟いて震える事しかできない。


 一方、観客席のベルリオーズ家はというと、ピピンはとりあえず安堵のため息をついていた。


「ふ~、しっかり制御できてるみたいだし大丈夫そうだな」


「そうね~、カイトちゃんも御前試合だから一番見栄えがして扱いやすい召喚獣にしてくれたみたいでよかったわ~。あの悪魔みたいなのをだされたら正直フォローできないものね~」


 騒然とする周囲とは対照的な反応をする両親にリューネはたまらず声を上げた。


「え!?カイトってあの上級召喚獣以外にもだせるの!?」


 そんな娘にもう隠し事をするのも疲れていたピピンが半笑いで答えた。


「ああ、カイト曰く『12体いるから色々な組み合わせでもっと強い召喚獣もだせる』そうだが、あの聖竜は防御よりで付帯被害のないものだそうだ」


 それを聞いたリューネとパレットは乾いた笑いしか出ず、フェリスは「いつか自分にもできるようになるのか」と目を輝かせていた。

 そしてセリアはというと、女の子モードからメス豚モードに戻っており――


 あああああああああ!カイト君最高!カイト君最強!あのドラゴンの圧倒的な魔力、威圧感、そして美しさ!カイト君の妻になれて本当に良かったです!なのに!なのにいいい!私はやっぱりメス豚!マゾ豚です!あのドラゴンと戦う自分を!ボロボロに陵辱される自分を想像しちゃいます!あの聖竜の聖魔法で浄化される醜い私!あの堅そうなシッポで打たれる私!そしてとどめに踏みつけられて!いい!血まみれで死に掛けの私って綺麗です!そんな私をカイト君が……ああああ!魔法で回復してからの熱いキス!両親の前で!姉妹の前で!陛下の前で!公衆の面前で!ああああ!皆見て!私を!そして私の男を!私の夫を!最強の召喚士を!その男の女にされる瞬間を!あははは!羨ましいでしょ!うふふふ……最っっ高!至高の男の女になったこの高揚感!絶頂!ああああ!カイト君!改めて好き!好き!大好き!愛してるううう!はあああああん!今夜も私をメチャクチャにしてえええええ!


 端から見れば、婚約者の雄姿に興奮しているだけなのだが、カイトから少し離れると変態妄想してしまう癖は治っていなかった。


 そして闘技場では決着の時が近づいていた――


「ひいいいいいい!」


 ローガンは完全に戦意を喪失しており、それは彼の召喚獣であるフレイムホーンドラゴンにも反映されていた。

 カイトはもはや巨大なハリボテと化した火竜を聖竜のブレスで消し飛ばす。

 すると、ローガンは完全降伏――カイトに土下座で命乞い。


「わ、私が悪かった!薬の事も!フェリスの事も!なんでもするから命だけは!」


 そんな必死なローガンにカイトは慈悲深い言葉をかける。


「いやだな~。殺すわけないじゃん。最初にも『ありがとう』って言ったろ?あんたがゴミなおかげでフェリスっていう宝物が手に入って、今はむしろ感謝してるからプレゼントを送るよ。そのためにホーリージャッジメントドラゴンを召喚したんだ」


「ふぇ?それってどういう……」


「最強クラスの聖魔法と光魔法をプレゼント♪」


 カイトがおどけた口調でホーリージャッジメントドラゴンになったピースケに指示を出すと「キュオオオオオ」という雄たけびの後に、口から光のブレスをローガンに放つ。しかし、それでは攻撃ではなかった。


「うおおおおお!背中の契約魔法印があああああ!貴様一体何をおおおおお!?」


「え?特上の聖魔法と光魔法のブレンドされた加護を与えてるんだよ」


「か、加護だと!?」


「うん♪どれくらい強力かっていうと死ぬまで呪いにかからなくなるくらい。副作用は……あんたの好きな契約魔法印が二度と使えなくなる事くらいかな?」


「なに!?馬鹿野郎!そんなことしたら!私は!私は!」


「そうだよ。二度と火竜を召喚できない。本当に宮廷召喚士になりたいなら、汚い賄賂や契約魔法印なんかに頼らないで一からやり直せ」


 カイトのある意味死刑宣告に近い言葉を聞いたローガンは意識を失い――決着。

 しかし、本当に大切なのはこれからだった。


「見事だったねカイト君」


 こちらから出向くつもりだったカイトはいきなり王が闘技場に降りてきたので急いで片膝をついた。


「はっ、我が義父の指導の賜物でございますれば……」


「あ、そういう堅苦しいのいらないから楽にしてくれ。君のドラゴンに驚いて、ほとんどの物見遊山の貴族達は逃げて私の近しい宮廷関係者以外残ってないから」


 王に言われて改めて観客席を見ると、確かに人が減っており、ベルリオーズ家一同も闘技場に降りてきて、カイトの横に並んだ。

 王はそんな様子に満足してピピンに語りかけた。


「ははは、ピピン。お前の報告書通り……いや、それ以上だったな。こんな事なら余の娘婿にすればよかった」


 カイトはその言葉にギョッとすると、セリアがカイトの腕に抱き着いて黙って抗議する――もちろん不敬な行為であるが、セリアの美しさはそんな事を感じさせない。


「セリア嬢よ、大きくなったな。半分冗談だから、そうムキにならんでくれ」


 その王の言葉に(半分は本気かよ)とカイトが困惑していると王が本題に入る。


「これでフェリス嬢はベルリオーズ家に籍を移し、カイト君も宮廷召喚士になる……のはいいのだが、せっかくだからこの場で決めたいことがある」


「決めたい事……ですか?」


 カイトは何のことだかさっぱり見当がつかなくて首を傾げるとピピンが替わりに答える。


「ああ、二つ名ですか」


「そうだ。後日正式に任官の証となる剣を授けるが、宮廷召喚士の場合そこに専用の二つ名を刻印する決まりがあってな。普通ならその者の契約している召喚獣にちなんだ二つ名にするのだが、カイトの場合は12体も契約しているからどうしたものかと……」


 それを聞いたカイトは一層真剣になる。なにせ王に授けられたら、おいそれとは変更できない一生モノの名前になるのは明白だからだ。


「あの~、ちなみに今のところ候補は……」


「そうよな……カイト君の身辺調査した者たちが挙げたものだと『女狂い召喚士』『変態召喚士』とまともなのがなくて困っておって……」


「ええ!?本当にまともなのが無い!もっとマシものを……」


「あとは……学園で広まっていた『わからせ召喚士』とかいう変なのが……」


 それに飛びついたのはセリアだった。


「それです!絶対にそれです!それ以外にカイト君に相応しい二つ名はありません!それにしましょうカイト君!」


 王の前だという事を微塵も感じさせないセリアの勢いに全員が押されてしまい、カイトも顔を引きつらせていた。


「でも……ほら、『聖龍召喚士』とか格好いい名前とか」


「昨晩はあんなに私をカイト君の女だとわからせたのに?」


 セリアが小悪魔チックな笑みを浮かべるとカイトが背筋が凍る感覚を覚える。

 次の瞬間――


「ちょっ!カイト!あんたやっぱり昨日セリアと!」


 疑惑が確信になり激昂するリューネ。

 それを見てニヤニヤしているフェリスと、興奮して目がギンギンになっているパレット……もはや王の御前だという事も忘れてメチャクチャになってしまう。

 ピピンが王にとりなそうとするが、王は気にせず笑っていた。

 かくしてカイトは正式に『わからせ召喚士』として生きていくことになった。

これで第一部は完結です。割とノリと勢いで書き始めたので、振り返りの意味でも、あらすじを含んだ人物紹介や設定資料を投稿して、タイトルとあらすじも変更しようと思います。

しばらくは新ヒロインは出さず、章立てなしでギャグ中心の軽いノリの一話完結風の日常回、恋愛エロ回、修行回、冒険回、を引き続き投稿していこうと思います。ただ、プロットも書き溜めもほとんど無いので、毎日投稿は難しいと思いますが、最低でも二日に一回は投稿していく予定です。

また、ここまで読んでの感想やレビューを頂けると幸いです。特に推しヒロインやキャラを教えて頂けると今後の創作が捗ります。

良ければブックマーク・高評価をよろしくお願いいたします。

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