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1-35 火竜再び 舐めプで公開わからせタイム

 カイトは御前試合の闘技場の中心で深呼吸をしていた。会場は貴族や騎士団などが詰め寄せ、王もすでに着座している――ようやく対戦相手が闘技場に現れると、カイトは空になったコップを不敵な笑みをローガンの足元に放り投げた。


「これで例の映像スフィアは破棄してくれんだよね?もし、そんなものが本当にあればだけどさ」


「なんだ、ブラフだと感づいていたのに飲んだのか?フェリスに似て本当に甘ちゃんだな。あの飲み物には……」


「モンスター捕獲用の鎮静デバフ薬でしょ?わかるよ、冒険者時代にふざけて飲んだことあるからね……人に気づかれずに飲ますために大分薄めてあったから、効果も3割、持続時間もあと10分ってところかな?」


 カイトが見事に言い当てたので、ローガンは苦虫を嚙み潰したような顔になる。


「ふっ、それだけではない。私は強壮剤を飲んできたから、今の私は一時的にA級冒険者クラスの能力になっている。つまり私の方が圧倒的有利ということだ」


 すでに勝ち誇った顔をするローガンにカイトはぺこりと頭を下げる。


「そう……ありがとう」


「あ、ありがとうだと!?」


「だって、ここまでクズだと却って楽だよ。一番困るのはフェリスの事も含めて何か深~い事情があってお涙頂戴話されることだったけど、その心配もなさそうだしね」


 カイトは悪気無くナチュラルに煽るとローガンは苛立ちを隠せず声を荒げた。


「そんな軽口を言っていられるのも今のうちだけだ!さあ、試合を始めろ!」


 ローガンはリングの外の係員を怒鳴りつけると、試合開始の銅鑼がなる。

 それを確認するとローガンはすぐさま召喚魔法を始めた。


「ふふ、フェリスが火竜の召喚を失敗したのは不完全な契約で召喚詠唱を知らなかったからだ。しかし、私は違うぞ。 煉獄の火竜よ その双かk……  」


 ローガンは威勢のいい啖呵を切ってから呑気に詠唱を始めたが、カイトはお構いなしに一気に間合いを詰めてローガンの鳩尾に前蹴りをぶち込んだ。


「こひゅっ!?」


 互いに召喚魔法を繰り出すものだと思っていたローガンは反応出来ず、腹を抑えてもんどり打って倒れた。

 そんなローガンにカイトは憐れむような視線を送る。


「いや~、いくらなんでも隙だらけだってば~。ステータス上がっても、格闘戦が急に強くなるわけじゃないんだよ?」


「く、くそっ!貴様卑怯な!神聖な召喚士同士の戦いに野蛮な蹴りなど……グボォ!み、見てみろ、会場の空気を!」


 そんなローガンの負惜しみを笑っていたカイトだったが、実際に会場の空気は凍り付いていた。


「ちょっと!何だか俺が悪者みたいじゃんか!ったく、しゃーないな、宮廷召喚士を決める試合がこれじゃあ格好つかないから待ってあげるから早くしてよ!」

 

 そんな愚痴を言って、不貞腐れながらローガンから離れていくカイトを観客席のベルリオーズ家の人々は笑いながら見ている。

 特にフェリスは興奮して飛び跳ねていた。


「いいぞカイちゃん!その屑男の金玉蹴り上げちゃえー!」


 そんな下品かつ辛辣な声援を送る妹を忌々し気に睨みながらローガンはよろよろと立ち上がると気を取り直して詠唱を開始した。


「煉獄の火竜よ その双角に業火を纏い 我が敵を滅する矛となれ  出でよ フレイムホーンドラゴン」


 ローガンの詠唱と共に、彼の背の契約魔法印が輝いて、フェリスの時のように火柱をあげて火竜になっていく。その火竜をフェリスの時よりも一回り大きく、灼熱を纏った双角に大きな顎――ドラゴンというよりも大型の肉食恐竜を思わせる風貌に観客席は騒然となるが、カイトは冷めたような目で見上げていた。


「ああ、フレイムホーンドラゴンか。ゲームだと通常のレアでそんなに特別な召喚獣でもなかったけどなぁ……じゃあこっちは……タマ頼むぞ」


 カイトはデバフ薬の影響で今は同時召喚すると消耗が激しい。だからこそタマ単体が最適なのだが、ローガンは笑いを抑えられなかった。


「ふははは、そんな猫みたいな虎で私に勝てると思ってるのか?」


「昔から龍相手には虎って相場が決まってるんだよ。御託はいいから来な。俺のデバフが切れちゃうよ?」


 カイトが手招きしてみせると、ローガンはフレイムホーンドラゴンを突っ込ませた。


「芸がないねえ……タマ『フラッシュ』パシャパシャいったれ」


 タマはカイトの指示通り、閃光弾のような光を連続で放つと、もろに光を浴びたフレイムホーンドラゴンはたまらずのけ反ってバランスを崩して倒れる。眩しさの耐性には上級召喚獣も下級召喚獣も変わりなく、有効だった。

 ローガンは信じられない光景を前にして地団駄を踏んだ。


「く~、どこまで卑怯な奴なんだ」


「あんたがそれ言っちゃう~。そんな事言って悔しがってる暇があるなら、さっさと起き上がらせて攻め来なよ。デバフ切れるまで、あと7分くらいかな?」


「うぬ~、フレイムホーンドラゴン!早く立って、あいつを潰せ!」


 ローガンがそんな雑な指示とも言えない発破をかけると、フレイムホーンドラゴンは再び攻めてくる。突進、噛みつき、踏みつけ、爪で引っ掻く、時には火炎の息を放った。

 それに対してカイトは落ち着いて対処する。タマの攪乱魔法・結界魔法を要所要所で使いながら、フレイムホーンドラゴンの死角に入る事を意識した立ち回りで、危なげなく全ての攻撃をいなす――ステータスでは測れない戦闘経験とセンスの差は歴然だった。


「はあ……はあ……何故だ!?ステータスも召喚獣も私が圧倒的に上のはずなのに!」


 カイトのデバフが切れる前にローガンの息が上がっている。強壮剤と上級召喚獣の同時併用は彼を想定以上に消耗させていた。

 そんなローガンに涼しい顔をしたカイトは率直な感想をぶつける。


「あんたの戦い方は……なんていうか童貞臭いんだよね?」


「ど、童貞!?」


「何の駆け引きもないし、独りよがりなんだよ。相手のいないオナニーみたいな戦い方って意味で……あんた、今まで対等以上の相手と戦った経験ほとんどないでしょ?自分が絶対有利な状況か、相手が抵抗できないような場合しか戦わない……まあ、そういうポリシーそのものは否定しないけどさ」


 つい1年前までレベル1で、死に物狂いでレベリングをしたカイトだから言えるセリフなのだが、完全に馬鹿にされていると感じたローガンは、汗をだらだら流しながら唾を飛ばして吠える。


「戦いにおいて万全を期すのは当たり前だろ!それより貴様!どんなズルをしているんだ!そうでなければこんな事は有り得ない!」


「ズルっていうか、チートはこれから……おっ!ステータスが戻ったな」


 カイトはデバフが切れたのを確認すると、アイテムボックスから回復薬を取り出してローガンに放り投げた。


「こっから仕切り直しだ。その前にあんた回復してくれよ。じゃないと弱い者いじめみたいになっちゃうだろ」


 さんざんコケにされて既にイライラしていたローガンはいよいよ怒髪天を衝く。


「どこまでも!どこまでも馬鹿にしおって!神聖なる御前試合を!勝負をなんだと心得ている!」


「おいおい、先に薬盛っといてそりゃないでしょ。それにこれは勝負じゃない……俺の奥さん風に言えばわからせだよ」


「わ、わからせ?」


「ああ、召喚士として、男として、格の違いをわからせるための場だと思ってる。だから、ヘロヘロで召喚獣を維持できなくなった相手をなぶるわけにはいかない……つまり100%俺の都合だから、遠慮せずにホラッ!グイッと一気に!」


「ふん!後悔しても知らんぞ!」


 ローガンはそう言ってカイトから渡された回復薬を飲む。罠の可能性も疑ったが、カイトの様子からその線は薄く、何より本当に限界だった。

 そんなクールダウン中のローガンに背を向けたカイトは観客席のフェリスに叫ぶ。


「フェリス!前に言った『とっておき』を使うからよく見とけよ!そのうちフェリスも出来るようになる!俺が教える!俺の次に強い召喚士にしてみせる!」


 突然の事に驚いたフェリスは一瞬固まったが満面の笑みで大きくうなずく。

 それを見たカイトは満足して、すっかり全快したローガンに再び対峙した。


「あ~あ、今の隙があんたのラストチャンスだったのに……卑怯なくせに間抜けな人だな」


「回復薬を渡されて不意打ちなど陛下の前で出来るわけがなかろう!それよりも『とっておき』とは何だ!?今まで手を抜いていたのか!?」


「誰かさんの薬のせいでコントロールしきれない可能性があったから、薬が切れるのを待ってただけさ。だから、いまからあんたにも見せてやるよ。なぜ召喚士が最強なのかを……では手始めにマルチ召喚から。出ておいで皆」


 カイトは12体の召喚獣を同時召喚すると場内がざわめく。カイトの関係者以外は驚きを隠せないが、ローガンは強がって見せた。


「ふっ、複数の召喚獣と契約して同時に召喚できるのか?確かに見事だが、所詮は下級召喚獣。手品の域を出てはいないな」


「いや~、ゴクウだけでもフレイムホーンドラゴンくらい倒せるけど、陛下から全ての力を見せろと言われてるから、今回使うのはこの2匹だけさ。ピースケとタマ以外は戻ってくれ」


 そうしてカイトの前にはピースケとタマだけが残る――ペットサイズの白いドラゴンと猫みたいなホワイトタイガーの二匹の召喚獣――とてもローガンのフレイムホーンドラゴンに適うようには見えないがピピンとマリアだけは顔色を失っていた。


「あの2体の組み合わせか……確かに御前試合向けではあるが……」


「カイトちゃんは相手がドラゴンだから、それに張り合う気ね。たぶん大丈夫だと思うけど……」


「ああ、いざとなったら私は陛下の護衛に参加するから、マリアは皆を。そしてパレットさんは、いつでも結界魔法を出せるようにしてくれ」


 もはやカイトの勝敗など気にしていない両親にリューネは声を掛けようとしたが、それを断念した。それほどに二人の顔つきが真剣だったのだ。

 

 そんなベルリオーズ家の反応とは正反対で余裕たっぷりなのはローガンだった。


「なんだ。結局弱そうな2匹だけ残して……それで何をするつもりだ?」


 そう言われたカイトは頭をひねってからバツが悪そうに、


「言われてみると……基本はあんたと同じだな。魔法陣と詠唱による召喚魔法」


「貴様も上級召喚獣と契約しているというのか!?」


 ある意味、今日一番の衝撃を受けて愕然とするローガン。

 カイトはそんな対戦相手を無視してチート召喚魔法に取りかかる。


「上級召喚獣?それ以上さ……じゃあ久しぶりの『スパイラル召喚』といきますか」


 そう言い放ってカイトはゲームでナーフされたチート魔法を解禁する。

メスガキわからせ編が想定より長くなってしまいました(9月中には終わると思ってた)

次回で第一部ラストで、その後は人物紹介やあらすじを挟んで、各ヒロイン視点のエロ要素強めのラブコメパートになると予定です。

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