1-33 ※セリア視点 聖女、わからされる
あああああああああ!ぐおおおおおおおおお!だあっ!だあああ!ぎいいいいいい!ふうううう……ふうううう……っつえい!きゃおらあ!むおおおおおお!っすううう、はあああああ……お見苦しいところをお見せしました。自責の念が強すぎて絶叫してました。
私は……聖女失格……人間の屑……豚以下です。
だって……知らなかったとはいえフェリスちゃんが辛い目にあってる時に遊びに誘うなんて……無理です……フェリスちゃんごめんなさい……その罪滅ぼしではありませんが、フェリスちゃんをいじめた女子グループはキッチリ教育しておきましたよ。
それにしてもカイト君はやっぱりすごいです。私をエロい目で見てきたクソ兄貴を追っ払って、王様にも根回ししてくれました。そのおかげでフェリスちゃんと家族になれます。一緒に住むようになってフェリスちゃんもだいぶ馴染んでくれたみたいです。
『セリアちゃん、おはよう♪』
朝の挨拶……控えめに言って天使ですね。それがカイト君と並ぶことによって我が家は尊い空間になりました。フェリスちゃんは最高です。
それを……こんな可愛いフェリスちゃんを……ああああ!クソオス!ゴミ以下!こんなカワイイ妹に暴力!?死ね!死ね!さらには他人に……ああああ!考えるだけで頭が!やっぱ死なせません!死んで楽にさせるものか!
あのクソオスのやった事はわからせではありません。たまに勘違いするオスがいますが、暴力で女性や子供、立場の弱い人を従わせることがわからせではありません。まして女を自分の所有物と勘違いしてる類人猿には人権を認めません。
わからせとは表面的なモノではないのです。わからせる側が絶対の力とそれに溺れぬ正しき心を持ち、わからされ側が心から屈服することで支配される喜びと安心感を得る……暴力と恐怖だけでは絶対になしえない至高の関係性なのです。
そして今、私の目の前にその理想の体現者が……
御前試合の前夜、カイト君の部屋から幸せそうな顔をしたフェリスちゃんがでてきました。ふふふ、幸せそうなフェリスちゃんを見てると私まで嬉しくなって笑顔になってしまいます。
あ、フェリスちゃんが私に気づきました。って、あれ?涙目になって、私に向かってきます。いったいどうしたのでしょう?
『ごめんなさいセリアちゃん!ボク……カイちゃんの部屋に……セリアちゃんの婚約者の部屋に忍び込んで……でも、いかがわしい事はしてないよ!えっとね、カイちゃんが明日ボクのために戦ってくれるから……ううん、違う……ボク、カイちゃんに尽くしたいの。捧げたいの。だからキス……バタフライキスをしちゃって……だから許してください!責めるならボクだけ!カイちゃんは責めないでください!』
いきなりフェリスちゃんを泣きながら謝ってきます。
これは……僭越ながら私がわからせなくてはいけませんね。
「私は怒っていませんよ。どうして謝るんですか?」
『だって……汚れてるボクがセリアちゃんの婚約者に触ったから……』
はい、わからせ開始。
「フェリスちゃんは汚れてなんかいません。汚れている人がこんなに綺麗な涙を流せるわけがないじゃないですか」
私はフェリスちゃんの涙を指で拭いてあげます。舐めたいけど今は我慢。
『でも……ボク、セリアちゃんみたいにキレイじゃないもん』
「カイト君はそんな事言ったんですか?」
『カイちゃんはそんな事言わない!汚れてないって言ってくれた!でも……』
「ならば大丈夫です。カイト君も私もフェリスちゃんが綺麗な心の持ち主だと知ってます。だから、もう自分が汚れてるなんて言っちゃダメですよ」
そう言って私は聖女のようにフェリスちゃんを抱きしめます……って、私は聖女でしたね。すっかり忘れてました。
そしてフェリスちゃんが私の胸で泣いてます。かわいい。
「うふふ、私の胸でいくらでも泣いていいですよ。だってフェリスちゃんは私の妹になるんですから」
『ボク、セリアちゃんの妹に……なっていいの?』
ぎゃああ!上目遣い可愛すぎ!
「もちろんです。セリアお姉ちゃんって呼んでください」
『セリア……お姉ちゃん。うん、セリアお姉ちゃん』
わからせ完了。これでフェリスちゃんは私の妹です。
私は愛しい妹の額にお休みのキスをして別れました。
そして……本命のカイト君に部屋へ――
ノックするとカイト君がビックリしてました。
『セリアさん!?こんな時間にどうしたの?』
「ふふふ、決戦前夜の婚約者を激励しようと……フェリスちゃんはよくて私はダメですか?」
ちょっと意地悪したらカイト君が慌ててます。ああああ!日頃強くてカッコイイのに!ギャップ!そうやってカイト君は私の心を!……おっと冷静にならねば。
私は部屋に入って、ベッドに腰を下ろしてカイト君の隣に……ああ、エロ展開不可避シチュの確保に成功です。
「緊張してますか?」
『まあね。フェリスの運命がかかってるから』
「ええ、なんてったってフェリスちゃんを婚約者から奪って、自分の女にするんですもんね」
『……そうだね。フェリスにも言われたよ。寝取りだって』
「ふふふ。じゃあ試合に勝ったら、その場でフェリスちゃんにキスぐらいしてあげてください」
『でも、俺はまだセリアさんとも……』
ふふふ、その言葉を待ってたんです。
私はすかさず隙だらけのカイト君の唇を奪いました……そう、ここまでは計画通りだったんです。あとは、悪戯っぽい笑みを浮かべながら、明日頑張ってくださいねって言い残してクールに去る……これで明日カイト君は心置きなくフェリスちゃんとイチャイチャできる……その予定だったんですが……
ああああ!キスすごい!ファーストキス侮ってました!唇だけじゃない!全身に幸せの電流が流れてます!私は自分がメス豚……いいえ……女の子です。いつもは変態な妄想ばかり……マゾ、メス豚、ド変態……自分がそういう人間だと……わからせの第一人者だと思ってましたが……カイト君の前ではただの一人の女の子だとわからされました。
「カイト君……愛してます。だから……もっと私も見て」
もう好きが止まりません。フェリスちゃんのために……そう思ってきたのに、今はカイト君のことしか考えられませんでした。
そんな私の想いが通じたのかカイト君も積極的に私の唇を求めくれました。そして名残惜しそうに唇を離すと、
『最近フェリスにばかりかまけて……寂しい想いをさせてごめん。もちろん皆大事にするけど、一番最初に俺を好きになってくれたセリアさんは特別だよ』
私はベッドの上の男の人の言葉を鵜呑みにするほど馬鹿ではない……そう思ってましたが、こんなの無理です。カイト君に特別って言ってもらえて目が潤んでます。ただ、潤んだのはそこだけではありません。体がカイト君を欲しています。
「カイト君……口だけじゃ嫌です。全身でわからせてください」
私がそういった瞬間、カイト君は男になりました。女の子な私は押し倒され、今度はカイト君に唇を奪われる――甘美な時間でした。言葉はいらない。互いに唇を求めあい、唾液を交換し合う淫靡な音と荒い息遣いだけが部屋に響きます。
そしていつの間にか舌を絡ませあっていました。それは最早キスなんて可愛い言葉では表現できない熱く激しい大人のディープキス。カイト君の舌が私の口の中を隅々まで味わってくれるのが嬉しくて、お礼にその舌を丁寧に愛しました。
そんな至福の時も一旦小休止。互いに荒い呼吸を整えながら見つめあいます。するとカイト君の目に理性の色が戻りはじめているではありませんか!そんなの許しません。私はもうスイッチが入っているんです。ここで終わりなんて嫌!カイト君、好きです。大好きです。だから力強く抱きしめました……今夜は逃がしません。
これが効果抜群。カイト君は再び男になってくれました。カイト君も私を離すまいと力強く抱きしめてくれます。それが何より嬉しい。だって私はカイト君が大好きな女の子ですから……
こうして私がカイト君に女の子だとわからされた夜……そのまま『女の子』から『女』になったかどうかは……ふふふ、秘密です♡
ただ、一つだけ間違いない事は、明日は多くの人の運命が決まる日だということです。