1-25 聖女は見た? イチャイチャ実技試験と甘酸っぱい青春
ジョブ別選択授業の実技試験は一日がかりで行われる。
テイマー・召喚士合同クラスの試験会場は王都のすぐ東にある「白狼の森」。この森は危険なモンスターが少なく、極めて安全なので、学園や冒険者ギルドの試験会場としてよく利用される場所だった。
当日現地集合で、マリアは生徒が全員揃っているのを確認した。
「それでは試験を開始するけど、あんまり張り切らないでね~。安全第一よ~」
マリアが緊張感のない間延びした言い方をした。
実際、競争というよりも、二人一組の班でチェックポイントを通過して時間内にゴールにたどり着くだけで、そのタイムを競うわけでもない。ただし、全てのチェックポイントを通過して時間内に到着するのは難しく、チェックポイントを優先してタイムオーバーすると減点。このバランスが難しい試験――残りの時間や体力等を考慮しつつ、地図を見ながら判断する能力を求められる。
実技試験初参加のフェリスは柄にもなく緊張していた。チェックポイントで記録をつけるための腕輪とチェックポイントの場所が記された地図を受け取る手が震えている。
そんなフェリスを見たカイトは自然と頭を撫でると、彼女は少し落ち着いて、
「にしし♪採点甘くしてくさだいね、カイちゃん副試験官さん」
そんなフェリスを見ると前任の男の先生が甘くなった気持ちがわかった気がするカイトは戒めの気持ちと悪戯心を込めて叱った。
「はい、試験官買収しようとしたから減点1な」
「も~、カイちゃんの意地悪♡腹黒♡童貞♡」
試験直前なのにイチャつく二人を微笑ましく見ていたマリアが開始の合図を出す。
「それでは地図を開いて試験開始よ~」
その合図で全員一斉に地図を開いてチェックポイントとゴールを確認し始める。すると、あちこちから悲鳴のような声があがる。
「げえ!ゴール地点、ここじゃん。ってことは戻ってこないと……」
「チェックポイントが全部で3か所しかない……逆に見つけづらいよ」
生徒が頭を悩ますのも無理はない。ゴールが森の反対側にあればチェックポイントを通過しながら森を抜ければいいが、戻ってこなければならない今回のケースの方が移動距離が長くなる。しかもチェックポイントが少ないので、たまたま見つけるということも難しい。こうなると最初にルートを策定して、捨てるチェックポイントを予め決めるのが無難……多くの生徒がそんな風に地図を見ながら会議を始めた。
しかし、フェリスは地図の確認もそこそこに大きな声をだして出発。
「カイちゃん行こう!とりあえず一番近いAポイント!」
今回はあくまでフェリスのサポートなのでカイトは黙ってついていった。
そんな二人を見た他の生徒が負けじとAポイントに向かいフェリスたちを追い抜いて行った。
「おいおいフェリス、せっかく一番先にスタートしたのに追い抜かれけどいいのか?」
「え?だってボク最初はAポイントに行かないよ?」
「そ、そうなの?」
「にしし♪大きい声出せば皆がそっち行くと思ったんだ。一番近いポイントなんて最後でいいのにね。皆で従魔と森踏み荒らしてくれれば、後からその痕跡たどるだけで簡単に見つけられるよ♪」
フェリスは要領がいい。根本的な地頭がいいのに加え、するどい観察眼もあり、人を手玉にとるセンスは天才的――しかし、彼女には致命的な弱点がる。根本的に体が強くなく、スタミナが無い。もちろん彼女はそれを自覚していた。
「ボクの体力を考えると、一番遠いCを最初に行って、B、Aの順が三つチェックポイント全部を時間内に回れる最善ルートだと思うの」
カイトも同感だったが、必要以上に口を出さない。
そして、実際に森に入ってフェリスなりのルートで進んだが、やはり彼女には体力はもちろん絶対的な経験が足りなかった。すぐに息が上がってしまう。
「ハアハア……森の中って……こんなに歩きにくいの?」
「慣れないときついだろうな……足場も平坦じゃないし、何より視界が木々で遮られて、弱いモンスターしかいないとわかっていても神経つかうだろ?だからテイマーは従魔を斥候に使ったり足替わりにしたりする」
「なるほど。全部自分一人でこなすのは大変だから従魔と役割分担するのが大事なんだね……」
「そういうこと。だから、テイマー・召喚士合同クラスの試験はオリエンテーリングなんだよ……さあ、どうする?」
「うん、アゲハ出ておいで!先行して、モンスターに幻覚魔法をお願い」
フェリスはアゲハを召喚――この一週間でアゲハのできる事、長所を把握したフェリスは現状の最善策を導き出す。
「これで歩く事に専念できるな」
「これだけじゃないよ。えいっ♡」
フェリスはカイトの背中に飛びついておんぶを要求してきた。
もともと二人一組で行う試験なので、これくらいはいいだろうと思ってカイトが受け入れた。
「……しゃあないな。その代わりしっかりナビゲーションするんだぞ」
「うん、任せて」
そこからは非常にスムーズだった。アゲハが弱いモンスターを鎮静化させ、フェリスが淀みない指示をカイトにだして森を進む――大きなトラブルもなしにCポイントに到着する。カイトは少なからず驚いていた。
「よく迷わずこれたな。地図があるとはいえ結構分かりづらいところにあったぞ?」
「逆だよ、カイちゃん。ボクならこの辺り見渡して一番見つけにくそう場所に隠す。だから見つけられたの……でも、多分ここが一番簡単だと思うよ」
「え?そうなのか?」
「チェックポイントが三つしか無いってなると、とりあえず一番近いAポイントを確実に見つけて、一つも見つけられませんでしたっていうのを回避したいのが人間心理。そうなるとボクがマリア先生だったら、Aポイントをわざと一番難しくするかな?」
「最近気づいたけど、フェリスとマリアさんって気が合うっていうか、なんか似てるよな」
「うん♪ボクもマリア先生もすっごく性格いいもんね」
そういう意味ではないがカイトは苦笑いをするだけだった。
「はは、そうだな。で、次はどうする?」
「もちろん予定通りBポイント。カイちゃん号出発!」
カイトは再びフェリスをおんぶして出発する。そして次のBポイントは割とあっさり見つけることができた。というのも、他の生徒がBポイントに群がって腰を下ろしていた。しかも、ほとんどがボロボロの状態――その中の一人にポクさんがいた。
「あっ、ポクさん!?ボロボロだけど何があったの?」
「これはカイト神。それがAポイントで散々な目に合いまして……あきらめてBポイントに来たのですが、もう体力的にも限界で、時間的にもCポイントは遠すぎるので、どうしようか協議してるのです」
「カイトシン?よ、よく分からないけど、Aポイントってそんなに危ないの?」
「ええ、チェックポイントに見たこともない巨大な植物が生えていて、近づくと蔓で攻撃してくるし、甘い匂いで従魔のテイムを弱らせて指示を聞けない状態にしてくるのでお手上げでした」
「なるほど……ありがとうねポクさん」
その会話をカイトの隣で聞いていたフェリスはドヤ顔。
「ね♪ボクの予想通りだったでしょ?」
「ああ、流石だよフェリス……これでチェックポイント2つか。このままAポイントを無視してゴールしても、たぶん成績トップだと思うけど、どうする?」
そのカイトの問いにフェリスは少し考えて込んで、
「やっぱりAポイント行く。カイちゃんにあれだけ特訓付き合ってもらったんだもん。完全制覇したいよ」
フェリスはやる気に満ちあふれていた。
カイトは嬉しかったが、今の自分が副試験官な事を思い出した。
「心意気は素晴らしいけど、冷静な判断も大切だぞ。危険だと分かってる所にわざわざ近づく必要がないなら避ける選択肢はアリだ。多分Aポイントは突破する実力よりも、見切る判断力を測るために設置したものだと思う。だから、俺との特訓なんか気にする事……」
カイトが諭すように語っていると、それまで冷静だったフェリスが突然豹変した。
「『なんか』じゃないもん!」
「え!?」
「……『特訓なんか』なんて言わないでよ……ボク頑張ったもん……カイちゃんにはどうでもいい事かもしれないけど……ボクには……凄く大事な時間だったもん……」
フェリスが涙目になりながらカイトに訴えかけるように声を絞り出す。
カイトは女の涙に勝てる人間ではなかった。
「ち、違う!そういう意味じゃない!俺もフェリスとの特訓は大事な時間だよ。これからだって、いくらでも特訓に付き合うから……だから冷静になろう。な?」
カイトがフェリスの両肩に手を置いて慰めると、彼女は少し落ち着いた。
「ボクもごめん……でも、カイちゃんが悪いんだよ。馬鹿カイちゃん。雑魚カイちゃん。ヘタレカイちゃん」
そう言って頬を膨らませてご機嫌斜めのフェリスは、少し間をおいて、
「それでもやっぱりAポイントに行くよ。とりあえず自分の目で判断する。それならいいよね、カイちゃん」
そういう理屈ならカイトは止めるつもりはなかった。
そう離れていないAポイントへ二人は歩いて向かう――その時フェリスは自然にカイトの手を握ってきた。カイトは思わずフェリスを見ると、彼女が屈託のない笑顔を返してきたので、何も言わずそのまま進んだ。
「カイちゃん、もうすぐ着くよ」
フェリスは気持ちを切り替えて、カイトの手を離して慎重にAポイントに近づく。
カイトも少し後ろから様子を伺うと一言ポツリ。
「リアクティブプラントか……」
「え?何それ?」
「昔の文明が品種改良して作った防犯用の植物だよ。近づいた生物を蔓の鞭で追い払うだけで、大怪我したりする心配はない。今は半野生化して一部のダンジョンで自生してるけど、あれは間違いなく試験用に持ってきたんだろうなあ……普通の学生じゃ無理だろ。最低でもBランク冒険者レベルじゃないと近づけないな」
カイトはフェリスに諦めさせる意味合いも込めて丁寧に説明した。せっかく自信をつけられそうな彼女が失敗する姿を見たくないという一種の親心もあった。
しかし、フェリスには届かなかった。
「じゃあ、失敗しても大丈夫ってことだよね?……よし!」
「ちょっ!お前、俺の話……」
カイトはフェリスを制止しようとしたが、逆にそれを止められる。
「カイちゃんは副試験官なんだから見てて!」
フェリスは温存していた体力を振り絞って全力で走る。別にリアクティブプラントを倒す必要はない。その後ろのチェックポイントに記録用の腕輪を一瞬かざすだけでいいのだから、不可能でないとフェリスは判断した。
「アゲハ!あいつに『ミストウインド』で足止めして」
ファントムバタフライのアゲハは妖属性。幻惑・攪乱系の魔法が得意で、『ミストウインド』は幻覚作用のある強風で相手の動きを封じる今のフェリスが使える最強の魔法――しかし、巨大な植物相手には効果が薄かった。
リアクティブプラントはまるで何事もなかったかのように、向かってくるフェリスに蔓を伸ばして迎撃した。
「きゃああ」
蔓の鞭に打たれたフェリスは悲鳴をあげて倒れこむ。試験用に調整されたリアクティブプラントだから大怪我をするような威力はない。しかし、フェリスは震えて立ち上がれそうにない。おまけに、そのショックで召喚獣のアゲハも消えてしまった。これが召喚獣の最大の欠点――術者の影響をもろに受けてしまうのだ。
やっぱりこうなるかと少し呆れたカイトはフェリスに呼びかける。
「おい!フェリス!早く離れろ!射程内にいる限り攻撃は止まらないぞ!」
しかし、フェリスは反応しない。ブルブル震えて動けない。召喚獣使役の訓練はしていたが、実践的な戦闘訓練はほとんどできなかった事がこういう形になって現れた。しかし、フェリスはここまで十分頑張った。体力と戦闘力は未熟だが、全体戦略を練ったりする判断力という点では最後以外は満点だったといえる。このまま撤退して時間内にチェックポイント2つでも間違いなくクラス内では最優秀――カイトはフェリスを抱き上げて、リアクティブプラントの射程外に一時退避。
「まったく……調子に乗るからそうなるんだ」
カイトは軽く言ったのだが、フェリスは顔を真っ青にして震えてながら小声で謝罪を繰り返していた。
「ごめんなさいごめんなさい怒らないください叩かないでくださいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」
カイトの腕の中にはメスガキのフェリスはいなかった。何かにひどく怯える弱弱しい女の子の姿にカイトの方が動揺して、肩をゆすって正気に戻させる。
「おい、フェリスしっかりしろ目を覚ませ」
この呼ぶかけにようやくPTSD状態から戻ったフェリスだが、まだ完全ではない。
「カイちゃんごめんなさい。言うこと聞かなくてごめんなさい。カイちゃんに認めてほしくて……ボクを見捨てないでください……」
「大丈夫!こんな事で見捨てるわけないだろ!」
「でも、でも……うううう、やっぱりボクはダメな子なんだ……」
うなだれて、ひどく落ち込むフェリス。
そんな姿を見たカイトはこのまま撤退という考えを放棄した。
「フェリス腕輪借りるぞ」
「え、でもカイちゃんは副試験官で……」
「ああ、サポートするよう言われてるし……それに俺はフェリスの召喚獣なんだろ?じゃあ、問題ないな」
カイトはそう言いながら、フェリスにニカッと笑ってリアクティブプラントへ向かって走り出した。せっかくフェリスが頑張った実技試験のラストがこんな形では嫌だという気持ちが大きいが、カイト自身も日頃の杖の練習の成果を試したかった。
「う~ん、植物相手だしブリザードワンドでいいかな?」
カイトはアイテムボックスから青い杖を取り出すとリアクティブプラントに対峙した――リアクティブプラントの射程内に入ったカイトに数え切れない蔓が襲い掛かるが、ギリギリで回避しながらブリザードワンドを蔓に叩きつける――30秒ほどで、ほとんどの蔓が凍り付いて、リアクティブプラントは沈黙した。
「やっぱ植物系には氷が有効か……でも、これ人に使うには強力すぎかな?」
カイトは吞気にブリザードワンドを眺めていた。先のテイマー7人との模擬戦の反省から、対人戦闘で相手を無力する手段を増やそうと思って杖の練習を始めたのだが、いざ実戦で使った感触だとこれでも殺しかねないので、再検討が必要だった。
何はともあれ、これで無事三つ目のチェックポイントもクリア――腕輪をチェックポイントにかざそうと思ったが、寸でのところで踵を返してフェリスのところに戻って、彼女に腕輪を返した。
「ほら、フェリス、一緒に行くぞ」
「え?でも……ボクただ見てただけだし……」
まだフェリスは本来の元気を取り戻していない。しかし、フェリス抜きでチェックポイントクリアするのはカイトが耐えられなかった。
「その……細かいこと気にするなよ。それに……召喚獣が勝手にやりましたじゃあ召喚士失格だぞ。ほら!」
カイトにしては珍しく女の子に強引になって、フェリスの手を引っ張ってチェックポイントまで連れていった。それでもフェリスはまだ落ち込んでいる様子だった。
「ほら、フェリス、これで全チェックポイントクリアじゃないか。もっと喜べよ」
「う、うん……じゃあ、カイちゃん……一緒に腕輪をかざそう」
カイトはそれでフェリスが納得するならば、と黙ってフェリスと一緒に腕輪を握ってAポイントのチェックをすませた。
すると、フェリスは何か吹っ切れたようにカイトの背中に飛びついてきた。
「にしし♪これで全部クリア!ボク達は最強の召喚士コンビだね♡」
いつものフェリスに戻って一安心したカイトは戸惑いながらも喜びを隠せない。
「お、おう。そうだな。とりあえず降りろよ」
「だ~め♡ボク疲れちゃったからカイちゃんがゴールまで運んで」
「仕方ねえな。ただし減点だからな」
「えへへ、カイちゃんの意地悪♡」
そんな事を言い、ふざけあってゴールでもあるスタート地点へ戻る。
その帰路、カイトの背中にへばりついているフェリスが真剣なトーンで突然囁いた。
「カイちゃん……本当にありがとう」
「おう、いいってことよ」
「カイちゃん……ボク、カイちゃんの事大好きだよ」
「あ、ありがとうフェリス、そう言ってもらえて嬉しいよ」
「カイちゃんは?」
「え?」
「カイちゃんは……ボクのこと……どう思ってるの?」
フェリスの真剣な声は、茶化したり、誤魔化すといった選択肢をカイトから奪った。しかし、改めて聞かれると……カイトは言葉が出てこない。
一番無難なのは友達。カイトは最初からそのつもりで接してきたつもりだった。しかし、自分の背中にいるフェリスに女性としての魅力を感じていないと言えば噓になる。絶世の美少女とこれだけ密接に関わって、大好きと言われた以上フェリスを一人の女性として見ているのは事実だ。しかし、カイトはすでに三人も婚約者がいる。いくら一夫多妻制とはいえ、安易にフェリスに手を出すのは、三人の婚約者にもフェリスにも不誠実な気がしてならない。そして、フェリスが自分の事をどういう意味で大好きと言っているかわからない。しかし、聞いてしまったら、今までの関係が壊れてしまう……それが怖くて聞くことができない……
そんな風に頭がぐしゃぐしゃになったカイトの結論は、
「フェリスは……大切な人だよ。何かあったら守りたい……そんな存在」
カイトは自分で言っていて、自分はなんて情けない意気地のない男なんだと歯がゆい思いをしていた。フェリスにいつもみたいに、ザコ、童貞、意気地なし……そう罵って欲しかったが、そうはいかなかった。
「嬉しい……そう言ってもらえて……ボク、凄く幸せだよ……カイちゃん」
今まで一度も聞いたことのないような穏やかな声のフェリス……カイトは振り返って彼女の顔を見る勇気がなかった。
その後、二人は何も喋らないでいるとゴール地点が見えてくる。すでに諦めて戻っている生徒がチラホラ。
そんな中に別のクラスのはずの女の子が一人……
「カイト君!フェリスちゃん!大丈夫ですか!?」
セリアがダッシュで向かってくるので、カイトとフェリスは驚いて、先ほどまでのしんみりした空気が消えてしまった。
「せ、セリアさん!?何でここにいるの!?」
「私には二人の愛を……いえ、無事を見届ける使命があるので、試験を秒殺して馳せ参じてきました」
「ええ!?セリアさんは回復職クラスだから秒殺っておかしいよ」
「え、ええっと……てへ♡とにかく頑張って終わらせてきました。そんな事よりカイト君!フェリスちゃんをおんぶしてますけど、怪我をしてるんですか?」
「ボクは大丈夫だよ、セリアちゃん。疲れたのと、ちょっと蔓で叩かれた手が痛いだけ……」
「フェリスちゃんの手が!?ダメです!すぐに私の『エクストラヒール』を使いますから、カイト君はフェリスちゃんを優しく降ろしてください」
「セリアちゃん大袈裟さすぎだよ!」
そんなフェリスの声は無視され、フェリスの少し腫れた手に、セリアのS級の回復魔法が炸裂する。明らかに過剰なのだが、異常に興奮しているセリアが怖くて、カイトもフェリスも何も言えなかった。
そして、セリアの心中は――
ああああ!最後しか見れませんでした!でも、ふふふ、何かありましたね!?雰囲気でわかっちゃいます!でも、安心してください!私は腐っても聖女!根掘り葉掘り聞くような無粋な事はしません!その代わり妄想はさせてもらいますよ!苦難を乗り越え愛し合う男女!なにも起きないわけありません!ああああ!やっぱり見たかったです!見るだけ!邪魔しませんからあああ!あ、やっぱ嘘です!だって、挟まりたい!尊さに挟まりたいんです!尊さに押しつぶされることで自分の醜さを!メス豚だということをわからされたいんですうううう!ああ、二人に軽蔑されちゃう!辛い!でも感じちゃいます!カイト君!この卑しい下品なメス豚に罰を!今日の私は蔓の鞭で背中を思いっきり打たれたい!そんな気分です!いや、氷攻めも捨てがたい!全裸の私がカイト君に氷漬けにされて鑑賞されるのも……ああああ!それ、いい!私はカイト君によって永久の芸術にされちゃうううう!あんの植物ごときがああああ!え?やっぱり見てただろですって?違います!私は植物からのわからせの波動を受信しただけで見てません!その場にいたら私はカイト君にロッドでぶってくれと懇願してます!はい、これでQ.E.D.私のアリバイの証明完了ですね!
それにしても……私の聖女としての勘が告げてます!二人に大いなる苦難が訪れると!二人の愛を引き裂こうとする魔の手の気配が!でも、同時に確信してます!それを乗り越えた末に、二人は真実の愛を手に入れると!さあ、カイト君!あなたの本当の力を見せる時は近づいてますよ!覚悟を決めてください!一人の男として!史上最強わからせ召喚士として!私は絶対に傍を離れませんから、負けちゃダメですよ!
ここまでがメスガキわからせ後編の恋愛・ギャグパートになります。
次回からフェリスの重い設定(性的××など)や展開が続くため、『ざまぁ』パートが始まる部分までの5話をまとめて投稿しますので、一気に読んでいただけたら幸いです。
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