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1-16 BSS加害者による失恋わからせ講座とメスガキとの遭遇

 ランベルク学園ではS・A・Bの三つのクラス分けがされている。

 昔はA・Bの二つだったのだが、爵位が高すぎて扱いに困る貴族を別に分けるためにSクラスが後から作られた。そして現在は平民も考慮したクラス分けが行わている。

 Bクラスはダメダメな貴族と普通の成績の平民

 Aクラスは普通の貴族と優秀な平民。

 Sクラスは優秀な貴族と優秀すぎる平民と位の高すぎる貴族。

 現在はこの様な感じの振り分けがされているが、カイトに絡んできた三人組はBクラスの貴族――つまりダメダメボンボンだ。面を貸せと言っておいて、人目のある廊下で一悶着始めようとしたので、絡まれた側のカイトが気をきかせて、人目のない空き教室へ誘導していた。

 カイトは『わからせレイパー召喚士疑惑風評被害』という理解不能な難敵ではなく、ようやく異世界っぽいイベントが起きて内心楽しんでいたので頬が緩む。

 そんなカイトにチビデブが吠えた。


「ニヤニヤしやがって……平民のくせに聖女の婚約者になって勘違いしてるな!」


 まさかこの状況が嬉しいとは言えずカイトが黙っていると、二重アゴも続く。


「噂は知ってるんだぞ!召喚獣で女性を辱める卑劣漢だと!恥を知れ!」


 二人が唾を飛ばしながら吠えるのを一番デブが大物ぶって止めるそぶりを見せる。


「まあまあパラッポ、ピレン……我々貴族は平民をいじめてはいけませんよ」


「流石ポクロスブヒダボさん……由緒正しい伯爵家の生まれは違いますね。ほら平民、名前を名乗れ」


「あ、うん、カイトです。パラッポさん、ピレンさん、ポーク……ブヒ……えーと長くて覚えられないからポクさんでいい?」


 ポクさんはさっきの大物感が嘘のようにキレた。


「貴様!誇りある我が名を勝手に略すとは!しかも最初ポークと少し伸ばして、ブヒだけ抜き取って、豚扱いする気ですか!?」


「そんな怒んないでよ~。それに豚って意外と可愛いから、その覚えられない名前より以外と人気出るかもしれないよ?」


 カイトのナチュラルな煽りにポクさんは最早本音を隠せなくなる。


「貴様~!だいたい、平民のくせにいきなり現れて聖女と婚約とはどういうですか!私の方が先に彼女のことを好きだったのに!家を通じて婚約の打診をして断られたのに!」


 そのポクさんの言葉に対してのカイトの反応は、


「その辛い気持ち……めっちゃわかる」


 これには三デブも拍子抜けというより純粋に困惑していた。


「俺もね……この一年失恋続きだったから……女盗賊のサラ……道具屋のアンジー……エルフのエスカム……思い出すだけでまじ辛い……あの胸がキューってなる切ない感覚……何もかもやる気無くすよなあ……わかるよ、うん」


「そ、そうですか……なんだか調子の狂う奴ですね。では、身の程をわきまえて……」


「いやいや、それはそれ、これはこれ。俺とセリアさんはラブラブなのに、他人に言われて別れるとかありえないから。ポクさんだって、もし俺の立場になったら同じ事いうでしょ?あ、でもリューネとはまだラブラブには……」


「ん?リューネ嬢は別にいいですよ……可憐で清楚な聖女であるセリアさんと血が繋がっているとは思えない男勝りな女魔法剣士なんて……」


「ちょっとポクさん!あんたリューネの何を知ってるんだよ!」


「え?いや……」

 

 この頃には完全に主導権はカイトに移っていて、ポクさん呼びも定着していた。


「リューネはファザコンでマザコンだし、短気だし、すぐに剣抜くし、かまってちゃんだし、意外とドジだし、見栄っ張りだし、可愛い台詞の一つも言えないし、すぐに叱ってくるし、いつも命令口調だけど……顔は可愛いんだぞ!あとスタイルも抜群!」


「いや、私はそこまでリューネ嬢を貶してませんよ!それに容姿以外にいいところは無いのですか!?」


「ん~、まあ、努力家で、家族思いで、カワイイモノ好きな女の子っぽい面もあって彼女なりに頑張ってはいるんだけど……比較対象がセリアさんだからね~。ちょっと可哀そうではあるかな~」


「はあ……そうですか……」


 ポクさんは取り巻きの二人に目線を送る。

 三人とも噂以上のやばい奴に絡んだことを後悔しはじめており、正直もう引き上げたくなっていた。


「ま、まあ、今日はこの辺で見逃してあげましょう。くれぐれも調子に……」


 引き揚げながら吐き捨てるポクさんの捨て台詞をカイトは最後まで言わせなかった。


「ダメだ!」


「「「ええ?」」」


 三人はおまえが言うのかという顔をしていた。

 事実その通りだったが、カイトなりの言い分があった。


「ポクさん達はケジメをつけに来たんだろ!?先に好きだった女がぽっと出の男にとられたやり場のない気持ちをぶつけに……俺にそれをわからせに来たんだろ!?」


「わからせ?いや……まあ、そうですが……」


「だったらこんな中途半端はダメだ!それじゃあ次のステップに行けない!そんなの……辛すぎる」


「えええ……で、私たちはどうすればいいのですか?」


「……俺を殴れ!」


 この瞬間、ポクさんはカイトに絡んだことを本気で後悔した。


「え?あなたは本当に何を言ってるんですか?」


「そうすればポクさんの俺への気持ちが伝わるし……俺もそれを受け取ってセリアさんを幸せにしたいって思える……うん完璧だ。さあ、来いっ、カモン!」


 カイトはそう言うと頬を突き出してスタンバイOK

 ポクさんは取り巻きに救いを求めようとしたが、彼らは被りを振っている。

 ポクさんは観念した。


「では、いきますよ……」


 ポクさんは嫌々ながら拳を握って振りかぶるとカイトの指導が入った。


「ダメダメダメ?何それ?やる気あるの?拳の握りはこう!で、手首を捻挫しないようにして……よし、サマになったね、ポクさん」


「は、はい……ご指導ありがとうございます、カイトさん」


「じゃあ仕上げに俺のとっておきの支援魔法をかけてあげるよ」


 カイトは希少な『創作支援魔法』でポクさんに特殊なバフを付与した。


「こ、この湧き出るような力は?」


「ああ、俺自作の『キラキラ演出で相手が吹っ飛ぶ青春度+20%』だ。さあ、青春しようぜ!キャモン!」


 ポクさんは早く終わりたい一心でカイトの頬に右ストレートをぶち込む。 

 案の定カイトはノーダメージだったので、気を利かせて、自分から窓の外に吹っ飛んでいった。

 残された三デブはシュールな体験をしてしまって沈黙。


「……もう、彼に関わるのは止めましょう」


 ポクさんがそう言って空き教室から出ようとすると入口に人影が……


「ひい!せ、セリアさん……」


 笑顔で凄まじい殺気を放つセリアを見たポクさんは恐怖で固まる。




 一方の殴られて吹っ飛んだカイトは満足げに芝の上で大の字になっていた。


「はあ……やっと異世界らしい事できたよ。そして、やっぱり学生はこういう甘酸っぱいイベントがなくちゃね……ありがとうポクさん」

 

 クラスの風評被害の悩みも忘れて、すっかり上機嫌のカイト……

 しかし、そんな安息の時間は長く続かなかった。


「うわ~、凄い転入生って聞いてたのに、デブに殴られて吹っ飛ばされるクソザコだったんだ~……ざぁこ♡ざぁこ♡ほら起きられないの?雑魚召喚士♡」


 いい気分を台無しにされたカイトは、イライラして起き上がる。

 そこにいたメスガキはクラスメイトだった。

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