6-21 ※セリア視点 聖女決別――聖女間の性の方向性の違い
等身大の人型二足歩行ゴーレム……それはロストテクノロジーです。現代の錬金術師や機工士がその再現を試みていますが、実用的な人型ゴーレムを作るのは困難だそうです。それよりも大型だったり、小型の四足歩行のものは製造が容易で、拠点防衛に使われることはあるそうですが……目の前のゴーレムはパッと見は人間にしかみえません。
『あ、あのゴーレム……二足歩行で滑らかに……あんなの見た事ないわ』
私達と同じくらいの女型のゴーレムの登場に強気なお姉ちゃんが怯えているのも無理はありません。あれは明らかに伝説の錬金術師アルエット・ベルトナーの造ったゴーレムに違いありません。そしてそいつの正体は伝説の聖女キオヴァス・シスカでした。
『おお、妾の触手ゴーレムを倒すとはやるではないか。しかし、妾の遺産を簡単に渡すわけにはいかんな』
今度は肖像画ではなく、ゴーレムに魂が宿っているようですね。心なしかさっきよりもテンションが高め……まあ、数百年ぶりに目覚めて人と話しているんだから無理もないですね……せっかくだからもっと情報を聞き出しましょう。
「やはりあなたはキオヴァス様……それがあなたの本体なんですか?」
『本体……う~む……そう聞かれても困るのお……妾の肉体はとっくの昔に滅びて魂だけを封印していただけじゃから……この人型ゴーレムの義骸もアルエットが残してくれた遺産の一つに過ぎん』
「遺産……そもそもこの宮殿はなんのために?私達はゴーレムについて調査していただけで、知らないことだらけなんです」
私は下手な駆け引きせずストレートに質問しました。キオヴァスという人物は直情的で噓が得意なタイプには思えませんし、ようやく封印を解いた私達とお喋りしたい雰囲気が駄々洩れ……そんな私の勘は的中です。
『そうか……妾の傑作が後世に伝わっておらぬなら……では、これを読んでみよ』
キオヴァスはそう言って私に分厚い本を投げて渡して来たので、お姉ちゃんと読むことに……他の三人はキオヴァスに対する恐怖と魔力を触手に吸われた疲労感で立ち上がる気力はないようです。正直、この『キオちゃんの愛の禁書目録――聖なる百合の花園』というクソみたいなタイトルだけでお腹いっぱいなんですけど、チラッと目次に目をやると……おえっ!明らかにクソ!でもお姉ちゃんは真面目にそれを読み上げて、
『え~っと……まえがき:男って本当にクソ……第一章:ビッチ死ね……第二章:女同士こそ至高……第三章:隠居先を女の楽園に……第四章:How to レズプレイ……第五章:魅惑の数字69……え?四章から第18章まで全部レズプレイのことしか書いてないじゃない!』
『どうじゃ?興味がそそるであろう?』
『全然!そりゃこんなの売れないわよ!聖女が書いたなんて信じられないわ!』
『ぐぬぬ……アグルの「聖女式アナルプレイ入門」が爆発的ヒットしたから対抗したのに……本名で書くのが恥ずかしくて「クンニマイスター♡キオリン」というペンネームで書いたのがマズかったのか……』
わかりました。この聖女アホです!それにしても…この本とエンシェントパレスにどんな関係が……
「キオヴァス様。この本にエンシェントパレスの事や封印の解き方などが書いてあるんですか?」
『そうじゃ。あとがきを読んでみよ』
私は言われるがまま本の一番後ろのページをめくると……
『あとがき
この本を読破したあなたは今日から立派なレズビアン!そんなあなたにご褒美をプレゼントのお知らせ!なんとなんと先着一組様にキオリン先生秘蔵のレズグッズを!場所は王都北の神聖白百合宮だ!そこのエントランスホールで素晴らしいプレイを披露した時!新たな扉が開かれる!素敵なレズカップルに祝福を!さあ、急ぐんだ!』
うわあ……てっきり封印の解除法は暗号で隠されているのかと思ったら、あとがきに思いっきり書いてある。でも、これで誰も来なかったということは……
『はあ?つまり売れなかったし、最後まで読んだ人間がいなかったってこと?仮にいたとしても、こんな胡散臭い本を信じるレズカップルがいるなんて思えないわ』
お姉ちゃんが言っちゃいました。ぐうの音も出ない正論にキオヴァスは地団太を踏みながら、
『むぎいいい!妾とアルエットはウキウキして待っておったのに!豪華なプレゼントを用意しておったのにいい!』
「その豪華プレゼントというのが遺産……具体的に何なんですか?」
『ふふん、なんだかんだ言って気になるようじゃな。お前さんからは妾と同族の匂いがするから教えてやろう。ずばりこの『神聖白百合宮』のダンジョンコアを含む全ての所有権とアルエットが開発したレズプレイグッズ……あの触手ゴーレムとこの義骸もその一部に過ぎん。しかし、終ぞ我らの後継者になる人物は現れず妾達の寿命は……それゆえにここをダンジョン化させて封印したのじゃ』
ほう……伝説の錬金術師のレズプレイグッズ……そちらには興味がありますが、こんな馬鹿聖女の後継者扱いされるはごめんです。それは私だけじゃなく他の四人も一緒のようですね。
『伝説の波動の聖女……伝記を読んだ時は尊敬してたけど、これじゃあセリアと大差ない……いえ、こじらせ具合はセリア以上のクレイジーサイコレズじゃない』
聞こえてるよお姉ちゃん!あとお願いだからイチイチ私とキオヴァスを見比べないで!
『こんな奴にボクの喉マ○コの処女を……淫乱聖女はセリアお姉ちゃんだけで間に合ってるのに……だいたい聖女が触手を使うなんて間違ってるよ』
ぐはあっ!もう少し木属性触手魔法が上達したらフェリスちゃんと一緒に触手緊縛レズプレイをしようと思ってたのに計画が台無し!これも全てキオヴァスのせいです!
『聖職の極みともいえる聖女がこんなに爛れているなんて……あ、セリアさんはその……ギリギリセーフかと……』
パレット先生……気を遣ってもらってありがたいんですけど、絶対にセーフって思ってないですよね。だいたい教師だって聖職なのに……私達は性職仲間じゃないですか!
『ひいい!聖女って何なんですの!?変態しかなれないジョブとしか思えませんわ!』
リリーナさんはすっかり聖女恐怖症に……これからは私が聖女のイメージ回復に励まなければなりませんね……
そんな私達の反応にキオヴァスはゴーレムの体のくせに頭に血が上ったように激怒……いえ、なんだか急に落ち込んでます……情緒不安定な奴ですね。
『ぐぎぎぎ!なぜ妾の思うようにいかんのじゃ!いつもいつも!聖女は清くあるべきだという価値観を押し付け負って!そのくせアグルの奴はアナルプレイの第一人者として上手くやりおって……確かに奴のアナルの締りは素晴らしかった……どれだけやってもガバガバにならない頑丈かつ極上のアナルを讃えていつしか「岩窟の聖女」と呼ばれていたのに……妾は生きてる間に男の手も握ることなく……それで女同士のプレイに活路を見出したのに死後もこの有り様とは……』
どうしましょう……もの凄く共感してしまっている自分がいます。私もキオヴァスと同じように聖女のイメージを周りに押し付けられて苦しい思いを……カイト君と出会ってわからされなければ同じ道を辿っていた可能性が……でも!そんな私だからこそキオヴァスの考えには賛同できないんです!
「キオヴァス様……私も同じ聖女として貴女の苦しみがわかります。そして女同士のプレイの素晴らしさも理解できます」
『おお……現代の聖女よ……では妾の遺志を継ぎ「神聖♡きゅんきゅん百合党」を……』
なんですかそのダサいネーミング……まあ、仮にイカす名前だったとしてもお断りです。
「しかし!私はレズプレイ一刀流にはなれません!なぜなら私はカイト君という至高の男の妻!わからさたメスだからです!そもそも貴女のレズプレイの根源は男達に対する恨みから……いわば妥協的レズ!純粋なメスへの欲求という土壌から芽生えた百合ではないんです!そんな惨めな徒花に賛同者など……ましてや後継者など現れるわけがありません!」
『な、なにぃ……貴様~……妾を……妾とアルエットの人生そのものを否定するつもりか?そのくせアグルなどという淫売の本を……』
「アグル・ルンガール-は決してただの淫乱女ではありません!彼女の『聖女式アナルプレイ入門』は単なるアナルプレイのハウトゥー本ではないんです!聖と性の狭間で揺れながらプレイを模索し、聖女として性の在り方を探求した苦悩と葛藤を描いた一大叙事詩だからこそ今なお読まれる名著に……それに引き換え貴女の本はただのモテない女の恨み節を書きなぐった醜いオナニーでしかありません!」
『醜い……オナニー……じゃと……』
「そうです!あなたが真にやるべき事は、こんな所で引きこもって女同士で乾いた寂しい股を舐め合うのではなく、自分の理想の男を探す事……それと同時に貴女自身が聖女という殻を破って自分の本当の姿をさらけ出して心のそこからのエロを開放……そしてメスの喜びをわからされることだったはずです!こんな本など臆病な負け犬の遠吠え!メス豚のアクメ絶叫以下です!」
ふう……言いたいことを全部言ってスッキリ。これで私とキオヴァスの違いを皆に見せつけて……あれ?お姉ちゃん……顔色悪いよ。
『セリア……いくらなんでも言い過ぎ……』
確かに……まあ、相手は何だかんだで聖女……謝れば許してくr……
『うごああああ!もう許さん!そんなにわからせを望むのであれば妾がわからせてくれようぞ!』
あちゃ~、もう戦闘不可避の流れですね。でも、きっとこうなる運命だったはず!だから私の責任じゃないですからね!
コロ助のせいで執筆用PCから隔離されてましたが、なんとか戻ってこれました。
まだ本業が溜まってるので、少し更新ペースが遅くなるかもしれませんが再開していきたいと思います。