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6-17 目覚めた伝説の聖女と特殊すぎる封印解除法

「どういうことなの?こんなのおかしいわ」


 特に目新しい発見ができずにエントランスホールに戻ってきたリューネはダークプリズムアイを発動させていた。


「合流の約束の時間なのに……しかも、三人の闇の反応は全くない……どんな人間でも多少の闇はあるから、宮殿内にいれば壁を貫通して私の右目に反応するはず……」


 リューネが自分に言い聞かせるようにキョロキョロしていると、セリアはビーナスハンドで聴覚を強化したが、そちらにも反応が無かった。


「うん、私の耳にも反応が……三人が歩いてこちらに向かっていれば足音が聞こえると思うんだけど、私とお姉ちゃん以外の音は全く無いよ」


 二人は互いの索敵の結果を伝え合うと同じ結論に――三人は何かのアクシデントに遭遇――最悪の場合は死。そんな受け入れがたい推測が頭をよぎったリューネは責任を感じて泣き出しそうな顔になる。

 そんな姉の心情を察したセリアが落ち着いた口調で、


「多分大丈夫だよ、お姉ちゃん……念のためビーナスハンドで嗅覚を強化してみたけど血の匂いなんかはしてない。でも……くんくん……この宮殿内から三人の気配が全くないのも事実だね」


「ええ、あの三人が簡単にやられるとは思えないし、もし何かと戦闘になっていれば私達も気が付いたはずね。そう考えると……」


「うん。きっと罠にかかってどこかに閉じ込められてる……そう考えるのが自然だね。そうだとしたら……どうする?二人で探しに行く?」


「一刻も早く探し出したいけど、迂闊に動いて私達までトラップにかかったら最悪……ここは一旦外に出てカイト達と合流するのがベストよ」


「同感。もしかしたら外でも異変が……とにかく入口から脱出しよう」


 意見が合致した二人は同時に頷いて、宮殿から出る事を決断――リューネは周囲を警戒しながら、入口の玄関に触れた瞬間、ドアノブに伸ばした手がバチッと弾かれた。


「きゃあっ!」


「お姉ちゃん!大丈夫!?」


「え、ええ……でもどうして……入口にも結界が……昨日も……今日、入ってきた時もこんなものは無かったのに……これって……」


「……どうやら私達も閉じ込められたみたい」


 不測の事態の連続で、弱弱しく声を震わせるリューネに対して、セリアは動揺を押し殺すような口ぶりで現実を伝える。

 こうして二人はしばらく沈黙して打開策を考えていると、その様子を面白がるような笑い声がエントランスホールに反響した。


「ふふ、はははは……」


 その聞いたことのない女の声に対して、リューネは驚きや恐怖よりも怒りが上回り、即座に剣を抜いて臨戦態勢になった。


「誰!?出てきなさい!」


 リューネは剣を構えたまま周囲を見回して、ダークプリズムアイで人やモンスターの影を探すが反応は全くない。そんな視覚に頼りすぎな姉とは違い、五感を研ぎ澄ましていたセリアがファイティングポーズをとりながら、


「お姉ちゃん!あそこ!声はあの絵からだよ!」


「絵?絵ってあの聖女の……ひっ!」


 セリアの視線の先の聖女の肖像画を見たリューネはホラーが苦手なので短い悲鳴をあげる。その肖像画にも聖属性の結界があるのでダークプリズムアイに闇が映らなかったが、額縁の中の聖女は邪悪な笑みを浮かべていたので、リューネは涙目になって震えていた。

 そんなリューネの反応に、それまで歪んだ笑みを浮かべて固まっていた聖女の肖像画は、擬態をやめて額物の中で腹を抱えて大笑いしていた。


「ははははは!なんと可愛らしい悲鳴よ!さっきの三人よりも反応が良くて驚かしがいあって楽しいのお」


「さっきの三人!?まさか三人はあんたが!?」


 リューネは怒りで頭が沸騰して、そのまま斬りかかろうとしたが、セリアがそれを片手で制しながら、


「落ち着いて!迂闊に近づいたら奴の思う壺だよ!それより……ねえ、聖女様……三人は今どこにいるんですか?」


 内心では腸が煮えくり返っているセリアだが、冷静を装って淡々とした口調で肖像画に問いかけた。

 そんなセリアの対応に、絵の中の聖女は感心した様子で、


「ほお……そちらの女魔法剣士と違って貴様は手強そうじゃのう……それにあの三人が無事だという確信を持っておるな?」


「ええ……貴女からは殺意を感じませんし、その気ならば私達に不意打ちをしかけているはずです。それに私と同じ聖女の魔力が……おそらく貴方は本当にキオヴァス・シスカ……違いますか?」


「……間違ってはおらん。もっともキオヴァス・シスカ本人はとっくの昔に死んでおるから、妾はその思念体……まあ、キオヴァス・シスカの魂そのものと思ってもらって構わんぞ」


 それを聞いたリューネはそんな事は有り得ないと思いながらも、本当に邪悪なモンスターではなく伝説の聖女ならば三人が無事な可能性が高まるので信じたいという気持ちが強くなり、構えていた剣をおろして、


「キオヴァス様……本当に伝説の聖女の……」


「おお……どうやら妾は伝説の存在になっとるそうじゃのう……さっきの貴族風の娘もそんな事を言っておった」


「り、リリーナのこと?それでリリーナは!?フェリスは!?パレット先生は!?皆無事なの!?」


「安心せよ……全員傷一つ付けてはおらん……ただ……妾の寝室を荒そうとしたので、ちと躾をしている最中ではあるがな」


「し、躾?」


 リューネが顔を青ざめさせると、キオヴァスはニタニタと笑いながら三人の現在の姿をエントランスホールの天井に映し出す――それを見上げたリューネは、ショックのあまり剣を落としていた。


「そ、そんな……ひどい……」


 リューネはそれ以上言葉が続かない――三人の命が無事だったのを確認できて安心したことよりも、触手ゴーレムによってハードに犯されている映像が衝撃的すぎて何も考えることができなかった。セリアも同様に押し黙ったまま天井の映像を確認してから、冷たく鋭い目でキオヴァスを睨みつけ、


「確かに三人は無事のようですね。しかし触手で拷問するなんて……伝説の聖女様の躾にしては悪趣味すぎます」

 

「拷問とは心外じゃ……まあ、映像だけではそう思われても無理はないか……では音声も再生してやろう」


 キオヴァスはそう言ってからパチッと指を鳴らすと、三人の甘く激しい嬌声がエントランスホールに大音量で反響した。


『ジュポッ♡グポグポ♡ジュルル♡ゴッポッ♡ぷはっ♡ひゅー♡ひゅー♡きゃうううう♡ビリビリイクウウ♡』


『ん゛ん♡おお゛ん♡ぬう゛っ♡ああ゛あ゛♡オッパイ壊れりゅうう♡あ゛う゛ううん♡バイブしゅごいいい♡も゛う゛イギだくない゛♡お゛ほおおおお♡』


『ひい♡締まる♡こんな縛り方が♡はあん♡もう出ません♡膀胱は空っぽですわ♡だから尿道は弄るのは♡んひいい♡ドレイク様ともこんなプレイしてませんのにいいい♡』


 エントランスホールは大迫力の触手プレイ上映会場に変貌――その観客であるリューネとセリアは、生死の心配していた三人の甘い声を聞いた途端に、それまでのピリピリした雰囲気が失せてしまった。それを察したキオヴァスは満足そうなドヤ顔で、


「どうじゃ、これで信じたであろう。あの三人はしっかりと妾自慢の触手ゴーレムとのプレイを満喫しておるぞ」


 それは疑いようのない事実であるので、それ自体は否定しなかったリューネだが、納得できないこともあった。


「それは確かなようね。でも、どうして急に私達に……これまでだって宮殿に入ってきた人間はいたはずなのに?それに昨日だって……」


 そのリューネの当然の疑問にキオヴァスは露骨に残念そうな表情を浮かべて、


「は~……やはり、そなた達が妾を目覚めさせる条件を満たしたのは偶然じゃったか」


「条件?私達は何も……」


 リューネはキオヴァスが目覚めるような事をした覚えはなく、皆目見当がつかなかったが、変なところで勘のいいセリアはハッとした表情になって、


「条件……昨日と違うのは……まさか!ここは女性だけが住んでいた場所だから女だけのパーティーでないと……」


「その通りじゃ……ヒントを残したはずなのに、まさか何百年も誰にも気づかれないとは思わなかったぞ」


 まさか過ぎる条件に、リューネとセリアは驚きながらも、妙に納得して黙りこくってしまった。

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