6-5 ※セリア視点 異世界アダルトグッズ購入事情と演技派聖女の抵抗
エログッズの購入……それは簡単なようでいて奥深い行為です。大々的に店を構えているような所には聖女である私が堂々と行くことはできませんし、通販系では信頼できる業者を見つけるのが難しい……そんな時に相談したのはロベルト叔父さんでした。叔父さんは少し特殊な性癖なので詳しいだろうと思ったら、信頼できるルートの仲介役になってくれました。最近は長期出張で会えませんが、そういう自体を想定して、留守の間も冒険者ギルドを仲介してエログッズを受け取れるようにしてくれていて……信頼しすぎて、それがどういうルートなのか確認しなかったのですが、まさかそれが宮廷錬金術師だったなんて……品質は間違いありませんでしたが……
『ん?どういうこっちゃ?最近も上級者向けのローションとバイブをロベルトはん名義で冒険者ギルドを仲介してウチから買うたはずやで?』
ぎいいい!ベラベラ喋らないでええ!このチビ錬金術師!顧客の守秘義務ってものをなんだと……いえ……言うだけ無駄ですね……こいつは叔父さんに頼まれて調達していただけで、本職のエログッズ屋ではありません。それに下手な言える状況では無いのです!
『せ、セリアさん?え~っと……その……ん、んん~……』
いやあああ!カイト君が言葉を詰まらせながら汚い物を見るような目で!プレイの一環ならOKですけど!これは素でドン引きしてる!今はまだカイト君の中では『少しエッチな清純派聖女』でいたいんです!そのイメージを守りつつ『淫乱マゾ豚変態聖女』をカミングアウトする機会を慎重に……興奮しながら楽しみに伺っていたのに!それがこんな場面でバレるなんて嫌です!
そんな私の気も知らないでお姉ちゃんときたら……
『あ!私に飲ませた薬……確か「ソメルニアの涙」だったかしら……アレも?』
『お、せやせや!少し前に調達した覚えがあるわ』
ぐ、ぐぬぬ……証人が揃ってる……もはやこれまでなんでしょうか……
『全く……我が妹ながら呆れたわね。聖女としての自覚を持ちなさいよ』
うるさいです!お姉ちゃんなんか顔を隠して直接王都のエログッズ屋『ドラゴンのアツアツ前尻尾♂』に買いに行くくせに!私は尾行して見てたんですね!店でお姉ちゃんは口と喉の鍛練用の張形を見比べてボソボソと……
『カイトのは……うーん……もっと太くて長いかな……あ、この形綺麗……でも、カリがちょっと物足りないわね……』
なんだかんだでまだ処女のくせに一丁前にディルドソムリエばりに商品を品定めしてたのをバッチリ見てました。いっそそれを暴露して、お姉ちゃんと相討ちに持ち込み……
そんな破滅願望が芽生えた時に思わぬ援軍が……それは元凶のエログッズバイヤー錬金術師でした。
『聖女やて?確かにこの透明感あふれる美貌と清らかな魔力は……わかったで!さては姉ちゃんに頼まれて無理矢理買わされたんやな?』
んん?私が涙目で黙って震えていると錬金術師は勝手に勘違いを……やっぱり聖女ってそういうイメージが……少し不本意ですが、この流れに乗るしかありません!
「うっ……ぐすっ……私……本当は嫌って……でもお姉ちゃんが……」
『やっぱりそうやろ!ウチの目に狂いはないで!こんな綺麗な聖女様が、あんなにエグいエログッズ買うわけあらへん!』
よっしゃ!とりあえず騒動の大元を味方に付けました。でも、まだまだ私が不利な状況は変わりません。
『ちょっと!ふざけないでよ!それじゃあ私が妹を脅して代わりにエログッズ買わせてた淫乱変態女みたいじゃない!』
当然お姉ちゃんが抵抗を……しかし、今は被害者ムーブをするのが吉ですね。私は人生で一番演技力を発揮して、穢れの無い美しい涙を……王都オペラ座の主演女優ばりの熱演をしていると、本当に私はお姉ちゃんに脅されて買わされた気分になってきました。
それが功を奏して、錬金術師が私の代わりに舌戦を繰り広げました。
『そない大きい声出すなや。聖女様が泣いてもうたやんけ』
『どう見たって嘘泣きじゃない!それにアンタはどうして、そんなにセリアの味方するわけ?』
『そらウチは人を見る目が抜群やからな。このモノクルはレアアイテムで人の魔力の強さや性質を見れるねん。この聖女様の魔力はキラキラの聖属性に木属性の緑がムラなく混じってとって、見てるだけで心が洗われるようや。それに比べて姉ちゃんの方は……おえっ!』
『はあ!?「おえっ」って何よ失礼な!』
『だってなあ……火属性と光属性と闇属性の三色がグッチャグチャや。こないなムラッけのある魔力の人間見たことあらへん。きっと心の中もグッチョグチョのムラムラやろ?』
『それは最近闇属性が目覚めたからよ!それに魔力の色で人を判断するもんじゃないわ!私のダークプリズムアイで見ると……やっぱりセリアは真っ黒じゃない!』
『そないな事言うても、それは姉ちゃんにしか見えてへん。それに比べて聖女様の涙を見てみい……ああ、真珠みたいに綺麗やわ……ウチは何と言おうとも聖女様の味方やで』
この半ドワーフ錬金術師の聖女信仰は筋金入りですね……私よりも信心深いようで助かりました……しかし状況は好転せず、遂にカイト君が参戦してしまいます。
『あの~、セリアさん……リューネに飲ませたソメルニアの涙を買ったのはセリアさんだよね?』
ここは下手な言い訳をしない方がいいですね。何でもかんでも否定して嘘をつくとボロが出てしまいます。
「はい……でもそれ以外は……」
『そ、そっか……エビュアさん……それ以外には何を買ったんですか?』
『せやな……沢山あるけど、最近なら「感度1000倍ヌルヌルローション潮姫」と「激震――超振動即イキバイブ」に「乳首吸引式ローター・チュッチュ♡」……あとは「淫夢誘導アロマ“スイートナイトメア”」と「激アツSM用キャンドル・煉獄」ってとこか……そないな変態グッズを買う聖女なんておるわけないやろ!』
ここにいますよ!味方だけど物申したい!聖女が変態だって良いじゃないですか!エロくて何が悪いんですか!そんなの偏見です!正直、もう市販品では満足できないから自作しようとしてるのにいいい!
それにしても、我ながら恥ずかしい購入履歴ですね……流石にこれ全部をお姉ちゃんが買った事にするのは無理が……そうだ!私の聖魔法を!ほとんど練習していないけどイチかバチか……ヤルしかありません!この世は弱肉強食!ヤラれるまえにヤルが鉄則!あ、カイト君にはヤラれますけど♡……って!今はそんな事を言ってる場合ではありません!これは聖女の尊厳の危機なのです!しかし、聖女に受難はつきもの……それを打破するのも聖女の力……私の成長した力を発揮する時が来たという事です!
セリア視点の変態回は基本的に一話でまとめる方針なのですが、少し長くなってしまったので
ここで一旦切って、次回もセリア視点の変態回です