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5-3 S級ダンジョン行きを決意する姉と盛大に勘違いする色ボケ変態妹聖女

 魔眼系のギフト宝玉のある場所……そんな情報をカイトがリューネに今まで教えなかったのは理由があった。


「そうか……リューネの今の実力なら……でも少し早い気も……」


 ブツブツと歯切れの悪いことを呟くカイト――普段のカイトらしくない様子からリューネは色々な事を推測できた。


「……危険なのね?」


「うん……でも俺一人で行くって言ったら……」


「ダメ!自分のこと何だから!私も一緒に行く!」


 力強く言い切るリューネの目はやる気に満ちあふれている。こうなったら説得するのは難しいとわかっていたから、カイトはこの情報を慎重に扱っていた。しかし悩んでいるリューネを見かねて黙っていられなかったのだが、こうして打ち明けてなお積極的に勧める気持ちになれない理由があった。


「……それがS級ダンジョンでも?」


「S級……ボトムレスアビス以外のS級ダンジョンって『ヘルマウンテン』か『月神の洞窟神殿』かしら……」


「いや、そっちじゃなくて……冒険者の間でもマイナーなんだけど『雷獣連峰』は知ってるよね?」


「もちろん。王都の東にある山岳地帯……年中暗雲に覆われて雷が落ちてくるから人が寄り付かない不毛の山々ってことくらいしか知らないけど……」


 勉強熱心なリューネでさえ浅い知識しかないマイナーダンジョンである『雷獣連峰』は名前通り年中雷が降り注ぎ、それをエネルギーに変換できる雷属性のモンスターが生息する山岳型ダンジョン。モンスターがいなかったとしても過酷な場所で、危険を冒してまで登る労力に見合う物が無いと思われているという点ではエンシェントパレスに似ているが、あちらとは危険度が段違い。モンスターの強さもさることながら、その厳しい気象条件が冒険者の足を遠のかせており、冒険者ギルドもほとんど調査できていない未知のダンジョンというのが一般の認識だった。


「実は雷獣連峰のモンスターの多くはA級ダンジョンレベルのステータスでそこまで強いわけじゃない。その中の『ライトニングバジリスク』の目が稀に魔眼系のギフト宝玉に変化してることがあるんだ」


「そうだったんだ。でもダンジョンのランクがS級ってことは……やっぱり環境がそれだけキツイってことなのね」


「俺としてS級モンスターがひしめくボトムレスアビスより危険だと思う。山岳型ダンジョンの死因はモンスターとの戦闘よりも滑落死や凍死の方が多いくらいだからね」


「確かにモンスターなら戦闘で倒すか逃げればいいけど、自然の力には敵わないものね……カイトが慎重になる気持ちもわかった……でも……それでも私は行きたい」


「わかった……俺も全力で協力するよ。それじゃあ、明日は準備を整えて明後日出発にしよう。そして……セリアさんも誘っていい?S級ダンジョンだから優秀なヒーラーは絶対に欲しい」


「ええ。本当はフェリスやパレット先生も誘いたいけど……あの二人は追試やその試験監督があるから仕方ないわね。当然パパとママも無理だし三人か……」


「模擬パーティー実習試験まで10日くらい準備期間を兼ねて補講や再試験が組まれてるからな。試験の後の長期休暇に行ってもいいけど、距離的にはこれくらいの日程が丁度いいしね」


 カイトが雷獣連峰の攻略を提案したのはこれも理由だった。雷獣連峰まで少し距離があり、陸路だと片道で二日ほどかかってしまう。しかし、一般講義のテストが終わってから模擬パーティー実習試験まで2週間近く準備期間が設けられており、その間に追試や補講が組まれていた。フェリスはカイトと出会うまでにサボったりした実技系試験の追試を受けなければならないし、パレットとピピンとマリアは教師としてその試験監督や模擬パーティー実習試験の準備があって忙しかったので、フリーなのはカイトとリューネとセリアの三人だけだった。


「じゃあ、セリアには私からお願いするわ。それから準備を……って、一日もかけて準備するものあるの?」


「そりゃあもちろん。登山装備が必要だし、S級ダンジョンに行くわけだから冒険者ギルドで最新の情報を集めておきたい……それに馬車だと時間がかかるから騎竜のレンタルもしよう」


「わかった。その辺はカイトに任せるわ……それで……もう一つお願いがあるんだけど……いいかしら?」


「おう。ここまで来たら俺にできることならなんだってするさ」


 それを聞いた瞬間に、リューネは真面目な魔法剣士からエッチなブラコンお姉ちゃんモードにチェンジ。


「えっと……S級ダンジョン攻略中は気を引き締めないと……浮ついた気分は絶対にダメだと思うの……だからその前に思う存分カイトとイチャイチャして甘えさせたい……そんなワガママな理由だけど……今晩は一緒に……お姉ちゃんと寝て欲しいの」


 顔を赤らめながらモジモジと可愛らしくするおねだりするリューネ――カイトはもちろんOKなのだが、あまりにも可愛らしいので少し意地悪したくなってしまった。


「まったく……お姉ちゃんは真面目なんだかエッチなんだか……」


「カイトは真面目でエッチなお姉ちゃんは嫌い?」


「そんなの……もちろん大好きだよ」


 こうして二人はいつも以上にイチャイチャトロトロにベッドでキスをしながら夜を明かした。

 そのおかげ色んな意味でスッキリしたリューネは朝一番にセリアに雷獣連峰探索の協力を要請する。


「セリア!お願いが……私とカイトと一緒に行って欲しいところがあるの!」


 そのリューネのお願いに対してセリアは信じられないといった表情で驚きながら、


「いいの?私も一緒にイって……」


「もちろんよ。今回の冒険にはセリアが必要なの」


「わかったよお姉ちゃん……それでどういう冒険的なプレイでイくの?」


 この段階になってリューネはセリアと会話がかみ合ってない事に気がついた。特に『いく』という言葉が二人の間で全くの別物。


「は?あんた何言ってるの?」


「え?私がお姉ちゃんとカイト君の新しいところを開発するプレイのお手伝いするって話でしょ?昨日二人が『大事な話をする』っていうからどんなプレイに挑戦するのかハラハラしてたけど……大丈夫だよ!お姉ちゃんのアナルでもカイト君の前立腺でも、どんなところでイッても私がいるから!デリケートな部分の怪我でも私のビーナスハンドで一発で治せる!だから!早くプレイの詳細を教えて!予習しなくちゃ!学園のテストが終わったから思いっきり弾けようね♡」


 テスト勉強の疲れのせいなのか……あるいはテストが終わった開放感のせいなのか……実の姉であるリューネにも今のセリアの色狂いの原因がさっぱりわからない。それよりも沸々と闘志が湧いてきて、


「こんな妹に……こんな変態聖女に負けてられないわ!絶対に雷獣連峰で魔眼系のギフト宝玉を手に入れて強くなって見せるんだからね!」


 そんなリューネの決意表明を聞いてセリアはようやく自分が勘違いしていたことに気がついて、少しガッカリしていた。

次回は勘違いしたセリア視点の変態回です。エロというよりも頭がおかしい系なので、ある意味健全な内容です。

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