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眼差しの少女  作者: 虜囚
目次
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大芝居計画

 「ユリサクヤさんお疲れ様でした。 皆さんお疲れ様でした。本当に有難うございました。でもこの件は未だ終わっていません。

 この件を終わらせる普通の手順は、この秘密書類を証拠として人々に知らしめて、宰相を逮捕すれば良いのですが、生き証人でもあられる王太后陛下が、若しお亡くなりにでもなられれば、奪取した秘密書類は偽物とされるかも知れません。

 その場合、宰相は秘密書類を公開した近衛師団長を国王の座を狙う奸物に仕立てあげて、多くの人を扇動するかも知れません。実際宰相は、そのような噂を王宮に広めている事に成功しています。若しこの噂を信じる人が多ければ、ヤマテニア国は内戦状態に陥るかも知れません。

 宰相を生死に関わらず拘束してしまえば決着するのですが、これもその動きが宰相に知らられば宰相は国王を道連れにするかも知れません。そうなったら全て水の泡となってしまいます。

 この件を終わらせる絶対条件は、国王の身柄の確保、つぎに王太后の身柄の確保で、それが出来れば宰相の拘束は先でも後でもかまいません。

 まずは国王の安否確認ですね」と俺が言うと一同から出たのはため息。


 続けて俺が「という事でユリサクヤさんとリヨサとリセスは、この件が終わるか、生き証人としての出番が有るまでしばらくこの屋敷に潜んでいて下さい」と言うと、リヨサとリセスの返事は「はい」、ユリサクヤの返事は「妻なのですから、さん付けは止めて下さい」、『返事はそれかよ』


 皆が押し黙っていたとき、マヤナカが「アキノスケ。オノサス叔父から預かってきた物があるんだ」と言って持ってきたのは白鞘の拵えの一振りの刀。


 そこで白鞘の刀を抜いて見た。『おう、まさしく会心の出来だ』。近衛師団長に渡った刀が豪壮だったのに比べ、今度の刀は華やかなのに上品である。添状には『ようやく満足出来る刀が出来た。お前の2本め目の刀としても良いが、誰かに上げても良い』と書いてある。


 俺は暫く考えると「マヤナカ兄さん。この刀の拵えを頼みたいのですが」、「どのような拵えにすれば良いんだ?」、「金をふんだんに使った豪華な奴でお願いします。後、腰に差すのでは無く、腰にぶら下げる形でお願いします」、「誰かにあげるのか」、「国王です。新国王陛下に差し上げるのです」


 それを聞いてマヤナカはその意味をすぐ理解した。「なるほど、国王の安否も分かるし、うまく行けば対面出来るかもしれないな。分かった」


 そこに俺とマヤナカの会話を聞いていたユリサクヤが口を挟んできた「アキノスケ様が国王陛下にお会いなさるのですか?」、「うん」、「なら私もお供致します。王宮の中を一番知っているのは私ですから」、「駄目だ。ユリサクヤは顔を知らている」、「ユリサクヤではなくユリと呼んで下さい」、『また新たな要望かよ、第一ここで言うことか』


 それを聞いていたリヨサが「顔を隠すような変装をすれば良いのでは」と言い出したので、それから皆で智慧を出し合い。王宮に刀を献上に行くときは、秋乃介は前の国王に初めて合ったときの衣装を来て、ユリサクヤは顔の半分を隠してそれらしき衣装を着て、うやうやしく刀を持って秋乃介の後について行くことにした。

 

 「じゃあマヤナカ兄さん。刀の拵えはお願いします。拵えが出来上がったら国王に刀を差し上げるとの手紙もマヤナカ兄さんが出してくれませんか、献上者はオノサスで献上の代理人は俺。国王から対面を許されることになったらその日にちを教えて下さい。後、ユリサクヤは馬に乗れませんから馬車で迎えにきてくれませんか?」、「うん分かった。都に着いたらユリサクヤさんはコビエクのところで泊めてもらうことにする。リホホにも何か手伝わそう」、「お願いします。それと若し俺が行けない事情が出来たら、献上はマヤナカ兄さんでお願いします」、「分かった」


 「私も行くからね」とリヨサが言えば「私も」とリセスも。『まあ変装が上手だし、第一くノーだし、助かる』、「ありがとう」

 

 ユリサクヤは「これから衣装を縫います」と大張り切り。


 「クグニタ。近衛師団長に俺が国王に謁見するかも知れないと伝えておいてくれ。日にちと時間が決まれば追って知らせますと」、「はい」


 これを聞けばギニニ師団長は何らかの行動を起こすだろう。クーデータをだ。


 さあ芝居衣装を着て大芝居を打つのだ。


 そして待つこと20日あまり。俺が芝居で着る鎧直垂などの衣装は既にユリサクヤの下に届けてある。そこに国王に拝謁する日が決まったとの知らせが入る。


 『まずい。拝謁する日はリクモ帝国の駐留軍が上陸する日の3日後じゃないか、若し戦闘が始まって仮に戦が1日で終わっても、都に行くの2日。ぎりぎだな。でもしょうがない。やるしかない』


 俺は直ちにクグニタを呼び、近衛師団長の下に走らせた。そのとき何かがひらめいた。そしてクグニタの若い配下の一人を俺の変装をさせ、同じくクグニタの配下の数人を独立遊撃師団の兵に変装させ、都の王宮に近い宿に泊まるように言った。俺の影武者である。


 流石、忍びの者である。変装がうまい。傍目に見たら俺とそっくりだ。仮に誰かが俺だと思って近づこうとしても、そこは軍人。秘密行動だ近づくな誰にも話すなと言えば済む。


 俺が影武者を作ったのは、これから起きるであろうバナイ湾での戦に俺が無縁であることを、宰相に思わせる為だ。

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