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眼差しの少女  作者: 虜囚
目次
16/31

近衛師団に戻る

 俺は近衛師団に戻ると、ギニニ師団長は「いやー、ご苦労さん。ガナシアからの書状は呼んだ」と言った。「リヨサと言う女性は来たのですね」、「うん」


 そこで師団長はリヨサ達からは夜襲の件を聞いていないと思い「私はその後ガナシアと一緒に行動しました。ガナシアがモグチツ側に夜襲を掛けたところモグチツは城を放棄し海に逃げました。逃げた先は多分リクモ帝国と思います」と、そしてモグチツ家の怪しい出来事のことも話すと、師団長は「お手柄だ。君を使者の護衛にして良かった。ガナシアからの報告を文書にして各師団に配布するから明日また此処にきて目を通してくれ。ところでこの事を誰かに話したか?」、「いいえ誰にも」、「なら暫く秘匿にしておいてくれ」、「分かりました」


 翌日また師団長の元を訪れると、机に果物などが一杯置いてある。「?」とそれを見てると「先程ガナシアの部下が此処に来て新しいガナシアからの書状を持ってきたのだ。その果物は農民達からのお礼だそうだ。なんだモグツチの城を攻めたのは君の策だったんだな。ガナシアは君の事をえらく褒めているぞ。ガナシアは良い男のようだ。一度有ってみたいな。・・とにかくこの件は君の大手柄だ」


 「これが各師団へ配布するこの事件の顛末書だ、ざっと目を通してくれ。何か感じるところがあるか?」、・・・・「モグチツの出自の事とか、私のこともあえて避けて書いているように読めます」


 「その通りだ。その理由が何か分かるか?」、「この件がモグチツ藩のことだけでなく、もっと深い闇があるからでしょうか」


 「流石軍師様だ。もし深い闇が有ったのなら、知りすぎた君の立場は悪くなるかも知れない。何れ皆が知るだろうが、それまではこの件のことを誰にも言わないようにした方が良いだろう。先程来たガナシアの部下にもそう伝えてある。彼らが君に挨拶もせずに急いで帰ったのはそのためだ」


「分かりました。只この件を知っているのは使者のミツタワの従者がいます。彼がどのように朝廷に報告しているか知りませんが」、「うん、近々王宮に行くので確かめて見る」、『・・王宮に行くなら俺も付いて行きたいな・・』


 「あとは、君の昇進の件だ。君を師団長直属の独立支隊長に任命する。支隊長と言っても、部下は今君が訓練してる軽騎兵の50騎と変わらんけどな。でも今度は正式な隊長なので給金は上がる。劍術指南の補佐役の方も正規の劍術指南役にする。そんなところかな」、「有難う御座います」、

『ぶっつけ中隊長ってところかな』


 モグチツの件についての近衛師団長からの報告書は各師団長に送られた。報告書の内容は、モグツチ藩で起きた事は、モグチツが人身売買を行い、リクモ帝国と通じたスパイだった事で、それ怒った者達がガナシアを中心にして反乱を起こしたもので、彼らには非が無く、むしろ功労者であることが書かれている。

 

 こうしてヤマテニア国国軍の幕僚の殆どはこの件に付いて知ることになったのだが、朝廷の動きは鈍い。モグチツ領は朝廷の直轄地としたのだが、事件の顛末は公表されず、功労者であるガナシアをその地の責任ある役に据えることも無く、ガナシアの軍は放置状態である。


 そこでギニニ師団長は王宮に赴いた。王宮に行く名目は近衛師団の予算獲得の掛け合いであるが、本当の目的はモグチツ藩で起きたことを国王に知らせる為である。


 以下はギニニ師団長から後で聞いた話であるが、国王はギニニ師団長から話を興味深く聞いた。特に眼光鋭く聞いたのはモグチツがスパイの可能性がある事とモグチツ藩内のごたごたの事である。ギニニ師団長の話を聞き終わった後、国王はギニニ師団長にわしは「今日から浮気するよ」と言い出した「それはまた」、「王妃を守らなきゃな」、「?・・・」ギニニ師団長はなんとなく納得した。


 ガナシア軍については、国王は国王だけが使える秘密予算からガナシア軍支援の為の予算を割り振ってくれたようである。ガナシア軍支援の予算を秘密にしたのも、国王には含むことが有ったのだろうとの事だった。


 ギニニ師団長は国王との会見の後、ミツタワの従者に会いに行った。これも名目は俺がミツタワの護衛を果たせず、ミツタワを死なせてしまったお詫びをするためであったが、本当の目的はモグチツ藩で起きた詳しい内容を口外させないためであったが、従者はミツタワを捨て駒にした宰相を快く良く思って無く、ガナシアからの書状を只渡しただけで、宰相からも何も聞かれ無かったようである。


 このような事からガナシア軍は、解散させられることは無くなったが、モグチツ領を離れることになり、ヤマテニア国中央の地にやってきた。


 ガナシア軍は正式な国軍の師団ではないが、兵力の足りないヤマテニア国としては、訓練されたガナシア軍が増えたのは良いことである。だが、これだけの戦力が、この前の戦争でリクモ帝国軍が上陸したモグチツ領を離れることになったのは危険なような気がする。


 モグチツ領を守るのは、別の方面を守る第4師団が兼任することになったが、それは先の戦争でこの地点に上陸されたことを反省し、モグチツ領の海岸は海底に隙間なく杭が埋め込められ、大型の船が近づけないようにしてあるので、リクモ帝国は次の侵攻のとき、上陸を試みようとしても出来ないので別の地点に上陸をするだろうとの予測によるものである。


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