#1 こんなヒロインは嫌だ
—放課後の教室―
「こんなヒロインは嫌だ。どんなヒロイン?」
「また急やなあ」
「いいから考えてみてよ」
「そう言われてもなあ」
「こんなヒロインは嫌だ。どんなヒロイン?」
「うーん、痛風持ち」
「え、痛風って朝の電車で必要以上に体をぶつけてくるタイプのおじさんしかからないんじゃないの?」
「その二つに因果関係はないやろ。というか、ヒカリがそういうタイプのおじさんが嫌いなだけやん」
「ふーん。でもあんまりピンとこないなあ、他にない?」
「まだやるん?もうええやん」
「諦めたらそこで試合終了だよ?」
「試合終了で結構です」
「いいや、バスケの試合に換算するなら今はハーフタイムぐらいなのでまだ大喜利は終わりません、残念でした〜」
「諦めたら試合終了なんちゃうの?」
「違うよ。諦めたって試合時間がまだあるなら物理的に試合は終わらないんだから」
「安西先生の教えに冷静に反抗しなさんな」
「ぎんちゃんなら、やーれーばーできる! でっかいビタミンカラーの服着た芸人さんもそう言ってたよ!」
「さすがにあの人でも放課後JKの大喜利まで想定して応援してないやろうけど」
「こんなヒロインは嫌だ。どんなヒロイン?」
「道端にタンを吐く」
「うわー。おそらく学校では清楚系でおしとやかに振る舞ってるけど裏があるタイプの人だね」
「そやろ、ちょいちょいおるやろうな」
「そうそう、ちょうどぎんちゃんみたいな人だね!」
「あんた私がタン吐いてるの見たことあるんか? なぁ?」
「タン食べてるとこなら見たことあるけど」
「はぁ? そんなことあるわけないやろ」
「ほら、ぎんちゃん好きじゃんか、塩タン」
「タン違いや、アホ!」
「失礼、タンだけにタン違い、なんつって!」
「ひくほどおもろないねんけど」
「でもさ、なんかもっとあるでしょ、もっとこう、しっくりきてもっと面白いのが」
「人にやらせといて酷い言い草やなぁ」
「こんなヒロインは嫌だ。どんなヒロイン?」
「あんた、それさえ言うといたら私が答えると思ったら大間違いやで」
「えー、いいじゃん、減るもんでもないんだから」
「考えるのが面倒なんよ、ほんで答えたらダメ出しするやん」
「まあまあそう言わずに。最後に一つだけお願い、ねっ?」
「ほんましゃあないなあ、最後やで」
「こんなヒロインは嫌だ。どんなヒロイン?」
「援交してる」
「……」
「なぁ、なんか言うてや」
「ぎんちゃんさ……」
「うん」
「あんまり大喜利のセンスないね!!!」
「やかましいわ!! あんたに付き合ってあげてるんやろ!」
「準なにわ人でも大喜利が苦手な人いるんだね……」
「なにそれ、スーパーサイヤ人みたいなノリやけど」
「それよりもぎんちゃんの大喜利にはがっかりだよ」
「ほなあんたがやってみいや、こんなヒロインは嫌だ。どんなヒロイン?」
「…………」
「ほら、はよ答えてや」
「……大喜利を強要する女」
「あんたなあ……」