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文學的日記  作者: 外来種
1/1

《 雨と曇り 》

6月〇日 あめのちくもり


パラパラとした雨音は次第に止んでいき、外に出た頃には今にも水をはきだしそうな雲が鬱々として浮かんでいた。


梅雨の季節に合わせ新調した雨がっぱを着込みフード被らないまま、ホワイトブルーのフィルターがかかったみたいな風景の中を自転車で漕いでいく。誰も人がいなければ平行世界にでも飛んでしまったのではないかと思うほどに周囲は薄暗くみえてなんだか不安になる。


先程まで雨が降っていたから涼しいかと思いきや、空気に存分に含まれた湿気と雨がっぱの所為で蒸れて暑い。

砂地の道も普段は気にならない石が目に留まり、じゃりじゃりという音が耳に障る。

この天気で唯一良い事と言えば虫が少ないことくらいだ。


一向に晴れる気配がない雲はどこまでも続いているようで終わりが見えない。

ふと、『曇』なんて文字を生み出した人は天才だなあ、なんて思う。

『日』の下に『雲』があるというシンプルかつ分かりやすい形。それでいて文字に起こしてみるとどう書いても縦長でずーんとした感じになる。

上の『日』が少し潰れた感じになっているのもなんとも言えない。


なんだか初めて飛行機に乗った時のことを思い出す。

厚い雲をどんどん斜め上に進んでいき、少し光が差し始め、次第に青と白が半分になって、明るい光が広がり、窓に映る全てが美しい青に包まれる。

空がこんなにも澄んでいて、綺麗だなんて思ってもいなかったから、本当に感動したのをよく覚えている。

下の方を見てみるとふわふわとした雲が絨毯のように広がっていて、絵本のように跳ねてみたくなったものだ。


...まあ、つまり、明るい『日』の光を『雲』が隠し、邪魔しているようにも見える『曇』の字はよく出来ているのだな、ということだ。

安直とは言うまい。




そんなことを考えていたら、

気づいたら雨が降り出していた。

フードを被り首元の紐を団子結びにした後リボン結びをする。これで家に着くまでは解けないだろう。

新しい雨がっぱはキャップのつばのような部分が透明になっており、前や横が見えなくなる心配もなく、顔も雨から守れるという優れものだった。

いつも前髪が乱れに乱れまくって困っているのでとても助かる。かっぱを着ている以上、後ろを振り向きにくくなるのはまあ仕方ない。


ニュースでは今年の梅雨入りは今日からだと言っていた。梅の実が熟す頃だから『梅』雨なのだそうだが、この雨では梅農家さんも大変だろうなあ、とぼんやり思う。

鮮やかな花は春の風物詩となり、収穫期には雨と掛けて用いられるとは昔の人の梅への親愛度が測り知れない。

個人的には、ぱきっとした白や朱色の花に対し、薄緑と淡い赤のグラデーションが綺麗な梅の対照的な感じがとても好きだ。

香りは少しきつく感じてしまうので苦手なのだけれど。


ハンドルを握る手に冷たい感触が断続的にあり、

カバンの袋に当たってぱらぱらと音を立てている。

不思議なことに、雨の楽曲というのは多いのに曇りを題材にした曲というものは少ないように思える。

情景描写でもクライマックスの悲しい系シーンはいつも雨で飾られている。

「曇り空」なんて表現自体はよく使われているけれど。


交差点の信号が赤になっていたので停止。

袖におちる雨粒をじっと見つめる。

少し凹んだところに集まった水は側面を伝って地面へ落ちる。

ぽたぽたと結構な頻度で落ちる水滴の、一粒一粒を綺麗だなんて思いながら見ていられるほど趣深くはない。

軽く腕を振って溜まった水を落とした。

前髪を端に寄せ、少し前に出てきた髪をフードの中へ入れ込む。

空を見て止みそうにない雨に溜息をつきそうになった頃、信号が青になった。


美しくも憂鬱なこの季節。

しばらく雨は止んでくれそうにない。


6月〇日 あめのちくもり


パラパラとした雨音は次第に止んでいき、外に出た頃には今にも水をはきだしそうな雲が鬱々として浮かんでいた。


梅雨の季節に合わせ新調した雨がっぱを着込みフード被らないまま、ホワイトブルーのフィルターがかかったみたいな風景の中を自転車で漕いでいく。誰も人がいなければ平行世界にでも飛んでしまったのではないかと思うほどに周囲は薄暗くみえてなんだか不安になる。


先程まで雨が降っていたから涼しいかと思いきや、空気に存分に含まれた湿気と雨がっぱの所為で蒸れて暑い。

砂地の道も普段は気にならない石が目に留まり、じゃりじゃりという音が耳に障る。

この天気で唯一良い事と言えば虫が少ないことくらいだ。


一向に晴れる気配がない雲はどこまでも続いているようで終わりが見えない。

ふと、『曇』なんて文字を生み出した人は天才だなあ、なんて思う。

『日』の下に『雲』があるというシンプルかつ分かりやすい形。それでいて文字に起こしてみるとどう書いても縦長でずーんとした感じになる。

上の『日』が少し潰れた感じになっているのもなんとも言えない。


なんだか初めて飛行機に乗った時のことを思い出す。

厚い雲をどんどん斜め上に進んでいき、少し光が差し始め、次第に青と白が半分になって、明るい光が広がり、窓に映る全てが美しい青に包まれる。

空がこんなにも澄んでいて、綺麗だなんて思ってもいなかったから、本当に感動したのをよく覚えている。

下の方を見てみるとふわふわとした雲が絨毯のように広がっていて、絵本のように跳ねてみたくなったものだ。


...まあ、つまり、明るい『日』の光を『雲』が隠し、邪魔しているようにも見える『曇』の字はよく出来ているのだな、ということだ。

安直とは言うまい。




そんなことを考えていたら、

気づいたら雨が降り出していた。

フードを被り首元の紐を団子結びにした後リボン結びをする。これで家に着くまでは解けないだろう。

新しい雨がっぱはキャップのつばのような部分が透明になっており、前や横が見えなくなる心配もなく、顔も雨から守れるという優れものだった。

いつも前髪が乱れに乱れまくって困っているのでとても助かる。かっぱを着ている以上、後ろを振り向きにくくなるのはまあ仕方ない。


ニュースでは今年の梅雨入りは今日からだと言っていた。梅の実が熟す頃だから『梅』雨なのだそうだが、この雨では梅農家さんも大変だろうなあ、とぼんやり思う。

鮮やかな花は春の風物詩となり、収穫期には雨と掛けて用いられるとは昔の人の梅への親愛度が測り知れない。

個人的には、ぱきっとした白や朱色の花に対し、薄緑と淡い赤のグラデーションが綺麗な梅の対照的な感じがとても好きだ。

香りは少しきつく感じてしまうので苦手なのだけれど。


ハンドルを握る手に冷たい感触が断続的にあり、

カバンの袋に当たってぱらぱらと音を立てている。

不思議なことに、雨の楽曲というのは多いのに曇りを題材にした曲というものは少ないように思える。

情景描写でもクライマックスの悲しい系シーンはいつも雨で飾られている。

「曇り空」なんて表現自体はよく使われているけれど。


交差点の信号が赤になっていたので停止。

袖におちる雨粒をじっと見つめる。

少し凹んだところに集まった水は側面を伝って地面へ落ちる。

ぽたぽたと結構な頻度で落ちる水滴の、一粒一粒を綺麗だなんて思いながら見ていられるほど趣深くはない。

軽く腕を振って溜まった水を落とした。

前髪を端に寄せ、少し前に出てきた髪をフードの中へ入れ込む。

空を見て止みそうにない雨に溜息をつきそうになった頃、信号が青になった。


美しくも憂鬱なこの季節。

しばらく雨は止んでくれそうにない。


ただの日記ではない感じだけど文学と言える程でもない...というようなものを目指して書いていきたいと思っております。


季節や風物詩、ただの主人公の個人的心境など、話題や書き方は幅広く自由(にする予定)です。日記ですから。

主人公の名前は近いうちに公開致しますが物語の中ではそこまで重要なものではありません。


マイペースに投稿していこうと思っております!

どうかお付き合いください。

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