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Ø-ゼロ-  作者: 真田衣月
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第一話 私達の役目

この世界には、毎年番のギフテッドが生まれる。そしてその二人のギフテッドは、14になる年に、忽然と姿を消すのだ。


「もうそろそろ、皆とお別れかぁ…」

大好きな皆と別れる、そんな事実に泣きそうになってしまう。引っ越して頻繁に会えなくなるという意味ではなく、もう二度と会う事が出来ないのだ。私の生きるこの世界には、毎年番のギフテッドが生まれる。そしてその番のギフテッドは14に成る年に、忽然と姿を消す。これは今までに一度も変わらない。だから今年もきっと、消えることになる。ここまで話せば、誰でも気づくかも知れないが、私が番のギフテッドの一人なのだ。そして、今の私の年齢は13で、季節は歳を越した1月末である。記録上では、ギフテッドが姿を消すのは2月から3月となっている。…だから、私もそろそろ消えるのだろう。ギフテッドの行方について、しばしば世界会議で論議される。ある人は「神隠しだ。」といい、またある人は「宇宙人に誘拐された。」という。とにかく答えは出ないのである。これ以上この事について考えても無駄か。そう思って私は自室のふかふかのベッドで横になった。


「あぁ、ねちゃってたか……」

気がついたら三時間もたっていた。夕飯時になってもいつまでも降りてこない私に母が心配したのだろう。母が起こしに来てくれた。

「菊、おはよう。もう夕飯の時間よ」

「おはようお母さん。今日の夕飯は何?」

「今日はね、オムライスよ。菊が政府の保護に入るまで、菊の好きなメニューにしようと思うの。」

「本当?ありがとうお母さん!」

嬉しい、と思ったこの気持ちを笑顔でお母さんに伝えて、心の底で考える。政府の保護、それは今回の世界会議で決まったことだ。ギフテッドの消える期間、政府で保護をする。それで被害を減らせないか、ということだ。でも、そんなの誰も期待していない。母だって、口ではそれならきっと大丈夫ねと言うが、目で諦めている事がわかる。父はこないだ、夜中にお酒を飲みながら「どうして最後の瞬間まで一緒にいさせてくれないんだ。」と泣いていた。私も、母と父と一緒にいたい。きっともう、二度と会えないのだから…。


とうとうこの日がやって来た。私は両親と涙を流して別れ、政府の作ったセキュリティハウスにやって来た。中に入ると、政府の役人であろう人達がいた。四六時中監視されるみたいだ。部屋でも一人になれない。まるで牢獄のようだ。そんな生活が二週間たった日、私が朝目を覚ますと指先に何かが当たった。二度寝を決め込む振りをして布団に潜り込み、何かを確認した。何かは手紙であった。極力音の出ないように封を開け、中身を確認する。中に入っていたのは真っ白な紙だった。一体なんだと思ったら、金色の文字が次々と浮かび上がってきた。

[風和 菊 様へ

この度はSotiras(ソティラス)への入学基準に達しました事、心よりお祝い申し上げます。また、入学基準に達されたため入学は決定となります。本日お迎えに参ります。


Sotiras学園長より]

Sotirasとは何?入学基準…?今までは達していなかったというの?迎え…ギフテッド達はここに入学をしたということ?頭が疑問で溢れたその時、急に身体を浮遊感が襲い、私の意識は落ちた。


誰かに揺さぶられている感じがする…誰に揺さぶられているのだろう?誰かを確認しようと、重い瞼に力を入れた。目を開くと、たくさんの光で眩しかった。直ぐ目を閉じて、今度はゆっくりと目を開く。光の正体は太陽だった。外にいるのか、室内にいたはずなのに。そう考えながら身体を起こすと、誰かに声を掛けられた。

「起きたか、お前確か日本にいるギフテッドだろ?俺はイギリスの方のギフテッドだ」

そういったのは男の子だった。もう一人のギフテッドか、初めて見るな。

「うん、そうだよ。私は風和菊(ふうわきく)、君は?あと、私のこと知ってたの?」

「俺はイラ・ホーランドだ。こっちは宇宙人説の方が主だったからな。同じ存在は知っておくべきだと言われた」

へぇ、じゃあ私のことは知っていたのか。

「そっか、日本は神隠し説だったから何も知らなかったの」

「なるほどな…しかしここは何処だろうな。地球ではありそうだが」

地球か、地球に似た別の星か。まだそれしか分からないからなぁ。

「とりあえず、どうする?私はこの辺りを少し調べる方がいいかなと思う」

「そうだな。あと、水も確保したいところだ」

「じゃあ、水を探しつつ周りの調査ってことでいいかな」

「そうだな」

今後の指針が決まったところで、私達は立ち上がった。

「えーと、ホーランド君。とりあえず、これからよろしくね」

「イラでいいよ、よろしく風和」

「了解、イラ君。私も菊でいいよ」

そうして、私達は握手をした。なんとなく、イラ君とは長い付き合いになりそうだと思った。


菊達がいた場所から20分ほど歩くと、川があった。見たところ、飲むのには問題無さそうだ。

「水は確保出来たね。このまま川に沿って歩いてく?」

「そうだな、それがいいと思う。でもどっちに進むかなぁ」

「困ったね、何か目印があればいいけど」

「お困りですか?」

どちらに進むか悩んでいると、後ろから声が掛かった。気配も足音もなかったが声の方には、角の生えた鬼のような人が立っていた。イラは菊を庇うようにして立つと、警戒した様子で言った。

「誰だ?」

「ああ失礼しました。私は彼岸(ひがん)、見ての通り鬼です。地獄のね。あなた達を迎えに来ました」

「迎えに…?」

菊がそういうと、彼岸は頷いて菊達にも名乗るように言った。

「あ、名乗るのが遅くなってすみません。風和菊、です」

「俺はイラ・ホーランドだ。それで、迎えに来たってのはどういうことだ?」

「そのままの意味ですが…ああそうでした。あなた達の世界じゃ知ることが出来ないんでしたね」

彼岸さんは面倒くさそうにそう言うと、私達に指を折るように一つ一つ教えてくれた。

「まず、私達には一つの共通点があります。それは、誰にも負けることは無い一つの才能です」

「誰にも負けることの無い、一つの才能…」

覚えがあった。写真を撮ること、それだけは今までに誰にも負けなかった。3歳のとき、初めてカメラを触った。父のものだった。あまりにも私がカメラに興味を示すから、もう使わなくなったものを私にくれたのだ。私はそのカメラを気に入って、どこに行く時にも持って行った。そして写真を撮った。小学校に入学してすぐ、遠くへ旅行に行った。もう壊されてしまう、古い洋館のある街だった。私はその洋館に惹かれて、写真を撮った。なんの偶然か、その場にその洋館で生まれ育った青年が居合わせた。青年に頼まれて、写真をコンテストに応募した。その写真は最優秀賞に選ばれた。それからも、私の撮る写真はコンテストに出せば必ず最優秀賞に輝いた。それが、私の才能なのだろうか。私が記憶の海に沈んでいると、返事の無いことに訝しんだ彼岸さんが声をかけてくれていた。

「ちょっと、ちゃんと聞いていますか?」

「!あ、ごめんなさい…」

「全く、しっかり聞いてなさい。今後のあなた達の生き方に関わってくる、大事な事なんですよ」

そう言うと、溜息をついて続きを話した。

「私達がここに来たのは、世界を救うためです」

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