バブリーディウス!!
ファンタジーFXの二番煎じ!!
今日は十五夜。僕はススキを花瓶にぶっ挿し、母親が作っている月見団子を今か今かと待ち遠しく思っていた。
―――ドシン! ドシン!!
地響きに似た振動と破壊音が遠くから聞こえてくる……。
―――ガラッ!
部屋の窓ガラス大きく開き外を見ると、
「……え?」
そこにはボディコン姿に身を包んだ巨大な女型ロボットが住宅街を踏み潰しながら歩いていた。
「わぁ~お♡」
がに股で歩く巨大ロボ。潰される家々。ロボの顔部分から投げられる札束と嫌らしい奇声。一瞬で行われる破壊と弁済に僕はこの世の物とは思えない何かを感じた。
「せんぱーい!」
巨大ロボの口から発射されたミサイルに跨がり、一人の女性が僕の家目掛けて突っ込んでくる。
金ピカの衣装に腕にはヒラヒラを付け、僕の部屋目掛けて突っ込んだ。
―――ズガァァン!!
「先輩生きてますか!?」
「あたたた……!!」
そして砕け散った壁片から這い出た僕の頭の上に、ラジカセを乗せ平然とした顔でスイッチを入れる。
―――♪
突如流れるインザムード。その見知った顔はストラップが山ほど付いたカバンの中から、分厚い紙の束を取り出した。
「…………これは何のつもりだ栄子?」
「まぁまぁ先輩、私に任せて任せて♪」
同じ高校の後輩、栄子はウキウキと僕の手に紙の束を握らせた。チラリと覗くと、その紙には『栄子商品券1000円』と書かれており、枚数からすると500枚以上はあるだろう。
「先輩あのね。えいこの家から原油が出て来てね。あっと言う間にお金持ちになっちゃったの!!」
「そうか。それじゃあ帰ってくれ……」
僕は栄子の背中を玄関まで押した。
「待ってて、玄関の灯りを点けるから―――」
―――ボボッ!
「先輩明るくなったよ♪」
栄子はマッチで何やら燃やして灯りを点けた。
「……って、それ僕の家の玄関マットじゃん!!」
慌てて火の付いた玄関マットを奪い取り台所で水に浸ける!
―――じゅぅぅ……
「あらあら、家の中で焚き火しちゃダメよ?」
母親が『仕方ない子ねぇ』みたいな顔でこちらを見ている。母よ、問題はそこじゃない……。
「それじゃ、私帰りますねぇ~♪ あ、お母さんコレお土産です」
「あらあら、栄子ちゃんありがとね♪」
テーブルに『栄子亜饅頭』と書かれた大きな箱を一つ置き、僕の頭のラジカセを止めると、栄子はラジカセを抱えて玄関から出て行った。そして巨大ロボに乗り込み街を破壊しながら帰って行った……。
―――パカッ
置き土産の饅頭の箱は見事な上げ底でどう見ても三段以上は誤魔化しており、中はとても小さな饅頭が四つしか入っていなかった。
「……………………」
「……栄子ちゃんらしいわね」
僕は饅頭を一つ取り上げ、包みを開けた。包みも異様なまでに過包装されており、中身はアメ玉みたいなサイズの餡子が入っているだけだった。
「……あほくさ。もう寝よ」
僕は饅頭を母親に全てあげると、部屋に戻り寝ることにした。最早月見どころではなくなった……。
次の日、僕は商品券をふんだんに使うために、商品券の裏に書かれた地図を頼りに栄子の店に出掛けた。何だかんだ金券は嬉しいからね。
「あれぇ? この辺な筈なんだけどな……?」
地図に書かれた場所へと来てみると、そこには何も無く唯の更地になっていた。
「……先輩こっちこっち」
「ん? あ、栄子―――っておい!!」
振り向くとそこにはボロを身に纏う栄子が居た。手には手頃な段ボールを持っており、靴は履いておらずパンツやブラがボロの隙間から見え隠れしている。
「てへへ♪ 先物取引、FX、株、仮想通貨とか色々手を出しすぎてこんなんなっちった(笑)」
僕は開いた口が塞がらないのと同時に、今手にしている金券が紙クズ以下になった事に軽くショックを覚えた……。
「だ、大丈夫なのか……?」
「へーきへーき。プラマイちょいマイナス程度ですから(当社比)」
「それより……先輩、私を買ってくれませんか? 行く当ても無いですしご飯も有り付けなくて困ってるんですよ……ね? 可愛い後輩を助ける為だと思ってさ」
「…………」
一夜にして天国から地獄へ落ちた人間は言う事が違うな……と関心せざるを得ない。それ程に栄子はあっけらかんとしており、笑顔だった。
「これで足りる?」
僕は商品券を丸ごと手渡すと、栄子はニカッと笑い僕の腕に抱き付いてきた。
「これで今日からえーこは先輩の肉便器です♡」
「……何処で覚えたんだそんな言葉」
「えー違うんですかぁ?」
「…………違わない」
僕は栄子の肩に自分の上着を着せ、ゆっくりと彼女の手を引いた―――
読んで頂きましてありがとうございました!!
やっぱりね……FFXを超えることは出来なかったよ
(´・ω・`)