第37話 緊急家族会議
ルシエルの記憶は戻らなかったけど………(´・ω・`)
ルシエルのお墓参りの翌日。朱音に取ってこの日は……運命の日となる。
「朱音。ちょっと良いかしら?」
突然、お母さんから呼ばれた朱音は居間へと移動した。居間にはお母さんとお兄ちゃんが座っており、朱音が座るとお母さんが深刻な顔をして話始めた。
「今日は貴方達に大切な話があるの……お父さんの事よ」
(お父さんの事?いったいなんの話だろう?そう思いながら話を聞いている朱音)
「お父さんが事故で目覚めなくなってから16年……未だに回復の兆しも無く。最近は心拍にも乱れが出てるみたいなの」
(えっ?お父さんが……)
「主治医の先生が言うにはここまで来ると、目覚める可能性は限り無くゼロに近くて……グスッ……急変して突然亡くなる事も考えられるって……グスッ……言われてる……ううぅぅ……」
(おっお母さんが泣いてる??)
朱音が驚くのも無理はない。朱音の母の心は強くどんな辛い事があっても今まで決して子供達の前では涙など見せる事はなかった。
そんな母が今、まさに目の前で涙を流しているのだ。
「このまま無理に延命を続ければ……グスッ……お父さんをもっと苦しませる事になるって……グスッ……費用も莫大だし、もう延命治療は止めないかって勧められたわ……でも……」
「私の一存では……グスッ……決められ無いから……貴方達の意見を聞かせて欲しいの……グスッ」
母の言葉に今までに無い空虚感と悲しみに襲われる朱音。先に兄の優大が口を開く。
「ううぅぅ……グスッ……おっ俺は……俺、嫌だよ母さん……お父さんと……お父さんと別れるなんて……ううぅぅ……俺、もっとバイト頑張るからさ。頼むよ母さん……」
(お兄ちゃん……)
「朱音はどう?あんたはお父さんの事を嫌いだったでしょ?」
お母さんの問い掛けに反応が鈍る私。私は……気が付くと泣いていた。
「ううぅぅ……私は……グスッ……私、まだお父さんと一度も話した事無いの。……グスッ……最近お父さんの昔の友人と会って……色んな話を聞いて……グスッ……私、お父さんの子供で良かったって……初めて思ったの」
「……グスッ……目が覚めたらね。いっぱい話したい事があるから……だから私もお父さんに生きていて欲しい……ううぅぅ……」
朱音の意外な言葉に驚いている様子の母と兄。二人の意見を聞き延命を心に決める朱音の母であった。
空翔に【LINK】でメッセージを送る朱音。
朱音【空翔君。今から会えないかな?(´・ω・`)】
空翔【良いよ。どこで待ち合わせ?(* ̄∇ ̄)ノ】
朱音【じゃあ……ハゲ鷹山の一本杉で(´・ω・`)】
ハゲ鷹山で空翔を待つ朱音。暫くすると空翔がルシエルと共にやってきた。
「お待たせ朱音。少し待ったかな?」
首を横に振る朱音。
「ううん。来てくれてありがとう」
二人は一本杉に腰掛けると朱音が空翔に質問をする。
「あのさぁ。空翔君は空翔君のお母さんから何か私の事を聞いてる?」
空翔は真面目な顔で答えた。
「詳しくは何も……。だけど凄く苦労している子だから付き合うからには必ず幸せにしてあげないと、かなりキツく言われた。あんなに恐い母さんを見たのは生まれて初めてだったけどな」
朱音が少し強ばった顔をして空翔に聞く。
「これからかなり重い話をするけど……空翔君聞いてくれる?」
朱音の言葉に息を飲み込み真剣な表情で応える空翔。
「勿論だよ。何でも話してくれ」
一旦、深呼吸をしてから朱音が意を決した様に話を始める。
「私のお父さんはね。私が生まれる前に交通事故にあって今でも目を覚まさずにずっと寝たきりなんだ」
「えっ?」
驚きを隠せない空翔。ルシエルも横で真剣に聞いていた。
「お父さんがこんなだから、お母さんも朝から夜遅くまでずっと働いていて、お兄ちゃんも学校に行きながらバイト掛け持ちして家にお金を入れてる。私はまだバイトとか出来ないから家の事を手伝ったりとかして何とか回ってる状態なんだけど……」
朱音の言っている事に更に驚く空翔。朱音の毎日のお弁当作りもきっと家族を助ける為にやっていたのだと、この時初めて理解した。
「そっそんな事があったなんて……ごめん。俺、何もわかって無くて……母さんが言ってた事も少しだけ理解出来た気がする」
「ううん良いの。……でね……今日、お母さんから言われたんだけど、お父さん……未だに目覚める気配も無くて最近は心拍が乱れてるらしいんだ……グスッ……」
泣いている朱音の言葉を黙って真剣な面持ちで聞いている空翔。
「私はね。お父さんの事がずっと嫌いだったの。お母さんやお兄ちゃんにずっと辛い想いをさせてるのに自分はただ寝てるなんて……本当に許せなかった」
「……」
「だけど、空翔君のご両親やルシエルのお母さんに色んな話を聞いて……私、お父さんの子供で良かったって少しずつ思えるようになって……」
「…………」
「だから……お父さんが死んじゃうかも知れないって知った時に……グスッ……悲しくて……辛くて……気が付いたら……泣いていた……グスッ……」
「朱音……」
「私ね……グスッ……お父さんとはまだ一度も……グスッ……一度も話した事が無いんだ……だから……目が覚めたらいっぱい色んな話をするの……だから……」
「話してくれてありがとう。朱音の想いはきっとお父さんにも届いているよ俺も朱音の事、支えるから……だから元気だしてくれよな」
「ごめんね。こんなに重い話を聞いてくれて……私一人じゃもう堪えきれなくて……」
朱音を抱き締める空翔。気付けば夕方になっており、告白と同じ様に夕焼け色に包まれていた。
ルシエルもそんな二人を見守る様に微笑んでいた。すると……。
ピロピロピロ……ピロピロピロ……。
突如、朱音のスマホの着信音が鳴り響く。電話に出る朱音。
「あっもしもし。お母さん?どうしたの?」
電話の相手はお母さんだった。何やら焦っている様子のお母さん。
「あっ朱音……大変よ。お父さんの容態が急変して今、心肺停止の危篤状態なの。今すぐに病院に来て……」
青ざめて行く朱音に空翔は徒ならぬ気配を感じるのであった。
朱音の父は……朱音は……いったいどうなってしまうのか?
……次回、ついにクライマックス(ノ_<。)
絶対絶対読んで下さい( TДT)




