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第49話 Fuck 荒々しく攻め立てる(18)


 俺はイースメラルダスではなく、レイラの方に走った。

 レイラにはテレパシーを送る必要すらなかった。


 白い巨体のレイラは深く腰を落とし、足元に交差させた手を置いていた。

 レイラの手のひらを強く踏む。

 それに合わせて、レイラが両手をはね上げる。


 天井スレスレまで飛び上がった。


 イースメラルダスの血やブレスで燃え上がった魔物たち、白虎の谷のメンバー、レイラの頭上を軽々と飛び越えていく。


 月面宙返り。


 誰も俺に追いつけない。


「どこだ! 逃げるな! 卑怯者!」


 イースメラルダスは言った。


 他者に向ける言葉は、自分の想像力が及ぶ範囲のものだけだ。

 俺たちが逃げると思っていたのならば、イースメラルダス、それはお前が逃げたいと思っているということなんだ。


 竜という生き物はあまりに強すぎるせいで、恐怖を知らない。

 蛮竜だと思われていたお前の愛しい方とやらは、どうだったのかな。


 俺にはわからない。

 心が読めても、わからないことなんていくらでも増えていくんだ。


 竜の多くは廃城や洞穴、ダンジョンの奥底に潜み、宝を蓄える。

 竜の本質は貪ること、貪るということは自分の責任以上のものを欲すること。

 その愛すら必要以上に貪欲だった。

 だから、死ぬ。


『わらわは剣。元始の剣。切る以外に能はなく、切ったあとには露もなし』


 アリザラが言った。

 俺の血を吸った刀身が艶めいて黒く光った。


 俺がしたことと言えば、自由落下速度に合わせてイースメラルダスの逆鱗にアリザラを触れさせてやったことだけ。

 手応えもなかった。


 振るい手の血を受け取ったアリザラは、元始の剣としての機能を発現させられる。

 剣の機能は切ること。ただそれのみ。


 ただそれだけで、触れられないものですら切断してみせる。

 もちろんそのためには普通なら死ぬほどの血を吸わせなきゃいけないし、誰もそこまでアリザラを信じなかったから、次元の壁に穴が開いたりしたことはない。


 俺だけがアリザラを信じて血を吸わせたから、できることだった。


 着地は何とか足から落ちることができたが、それだけだった。身体の内側で鈍い痛みがするから、多分かかと辺りが折れてるだろう。


 一拍遅れて、イースメラルダスの首から血が噴き出したが、それはもう着火しなかった。

 生きた魔力が含まれていなかったからである。


 鈍い音を立てて、ゆっくりとイースメラルダスはその巨体を横たえた。

 その表情からは、どんな感情も読み取れなかった。


 それでいいのだと思う。

 他人のことをわかるだなんて考えるのはきっと傲慢なのだから。


 酷くだるかった。頭の内側がしびれたようになっていて、やけに眠い。これはかなりよくない、よくないぞ。


 ぐったりと横たわった俺にレイラが駆け寄って、言った。


「やったか!?」


「だから、そーいう空気読めないこと言うなって……」


 それきり、俺は意識を失った。


   *


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