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強さは手の中に  作者: nageyari
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力の頂点

どこか聞いたことのある曲を鼻歌で優雅に過ごしている。

「これ、なんて歌だっけ?」

男は自問自答した。

「あっ、きらきら星か。危ねぇ、忘れる所だった。認知症怖いなぁ…。」

目の前にはフレンチトーストとコーヒーという豪華な食事があり、フォークとナイフを器用に使いながら朝食を堪能していた。

これだけ見るととても優雅な朝のようだ。

しかし、そこは普通ではなかった。

その男の周りには大勢の人が見張っている。

「ねぇ、ラジオとかないの?」

その男はフレンチトーストを食べ終え、コーヒーで一服しようとしていた。

その時、大勢いた中の1人が笑うように答えた。

「おいおい、聞いたか?ラジオを聞かせろだってよ。お前、目ん玉腐ってるのか?おい、この状況見えてるのかよ?」

そう、男たちは皆、銃をその男に向けて構えていた。

「うーんとね」

その男は座ったまま顔だけでぐるっと一周見渡しこう言った。

「余裕だね。」

その答えに銃を構えていた大勢の男が笑い出した。

「おいおい、頭いかれてるぞ、こいつ。こんな面白いやつだとはな。生かせてやりたいところだが、これはボスの命令なんでな。悪いがやるしかねぇんだわ。」

「あのさ。」

その男は止めるように言った。

「あのさ、いつ殺すの?」

「あ?ボスがここに到着次第だ。お前と話したいことがあるそうだからな。それまでは傷一つつけるな、だとよ。本当ならボコボコにしてから殺してやりたい所だが、ボスの命令だから仕方ない。」

「わかった。あとそれとさ…」

続けて言おうとした瞬間、男は銃をその男のこめかみに当てた。

「あまり、話すのが苦手なもんでな。聞きたいことは1つにしてくれないか?ボスの命令関係なく打っちまいそうだからな。」

「おー、わかった。じゃあ…」

少し考えるように間を空けてこう言った。

「ボスがくるまで寝させて?」

「わはははっ。やっぱりこいつ頭いかれてるぞ。死ぬ直前だってのに。」

そこにいる全員が笑っている。その男を除いて。

「好きにしろ。冥土への道のりへの夢でも見てろ。」

「お、そうするわ。じゃおやすみ。」

その男は座ったまま机にもたれかかり寝た。

その手や足には枷が自由には動けても逃げれないようにはめられていた。

それから数時間が経った。

「おい、起きろ。ボスが到着したぞ。」

男が銃で軽く叩くように起こした。

「ううん、ふわぁ。おはよー。ここはさっきのところのまま?そうみたいだねぇ、ふぁー。」

目を覚ますと目の前に車椅子に座った老人、そのお付きの人と思われる黒服の男が大勢いた。

「お目覚めかね。渡くん。」

「あなたがボス…?」

「そうだよ。私が財前だ。」

その男、渡の目に見えている財前という男はただの老人ではなく何人もを束ねてきただけの威圧のようなものがあった。

「さすが、これだけの人数を束ねてるお方だから、思った以上に怖いなぁ。」

「渡くん。つまらん話は抜きにして本題へといこう。アレはどこにある?」

「アレ?あぁ、アレの場所ね。そんなことが聞きたいんだ。」

「抵抗はするなよ。すぐに答えてくれたら解放してやろう。」

財前は不敵な笑みを浮かべている。

「わかったよ。俺の負け。アレの場所を言うよ。アレがあるのは…」

長く溜めてこう言い放った。

「おしえてあーげない!」

数秒の間、沈黙が生まれた。

「はははっ。君って子は面白いね。じゃあ、無理矢理でも言わせてあげようか。おい、やれ、殺すんじゃないぞ。」

そこに立っていた黒服の男が近づいてきて、机をどかした。

男が渡の胸を掴み、殴ろうとした瞬間、渡は大声で叫んだ。

「この場所は以前機械の工場があった跡地!至る所に部品が落ちている!前に約75メートル!後ろに約60メートル!左右はちょうど均等でそれぞれ65メートル!ほぼ中心にいる!上の屋根はトタンで、ここから約15メートル!そして、少し磯の匂いがすること、周りの音が全く聞こえないことから、無人の埠頭だということがわかる!」

財前は驚きながらも笑った。

「そんなことがわかってどうする。あ、そういえば、思い出した。おい、それを貸せ。」

財前は横にいた黒服の男が持っていた端末を手に取り、言い放った。

「君の情報や経歴の全てを知り尽くしている。どうやってアレを手にいれたかはわからんが、君のようなただの会社員が私たちの世界に首を突っ込んではいけない、いけなかったんだよ。だがもう遅い。娘ももうこの世にはいない。だから、とっとと話せ。」

「俺の後ろには物騒なものを持っている下っ端が12人!前には財前と黒服の男が10人!」

「なぜ大声で叫んでいる?まさか、助けを求めたのか?君には友達と言える人なんていないだろう?警察はここへは来ないし。」

すると遮るように渡りが言った。

「じゃあ、そろそろ終わりにしよっか。この演技も疲れたし。」

すでに手と足についていた枷は取れていた。

「じゃ、ショータイムといきますか。」

「おい、こいつを捕らえろ。殺すんじゃないぞ!」

後ろで銃を構えていた12人の男たちが銃を構えるのをやめて渡に向かって飛びかかった。

「あのさ、その端末?壊れてるんじゃない?」

先に飛びかかってきた2人を難なく避けると2人のお腹を素早く殴り、倒れさせた。

「全くのデタラメだよ。」

次に襲ってきた3人をさっき座っていた椅子を使って殴った。

「さすがに会社員はないでしょ。」

すると突然、渡が消えた。

「ここだよー。」

渡は何かワイヤーみたいなものを使い高く飛び上がっていた。

「えっと、さっき倒したやつから奪ったこれで、っと。」

渡の手には銃があった。

「そっちが撃たないならこっちから撃ちますね。」

ぶら下がったまま、辺り一面に乱射した。

財前は数人の黒服の男が庇い、それ以外の男たちは皆銃で応戦している。

しかし男たちには当たっているのに、渡には当たらず気がつけば財前を含め、5人しか残っていなかった。

「ちくしょー、弾切れかよ。あと5人だったのに。」

ぶら下がったままの渡は上手にワイヤーを下ろして降りた。

「貴様、何者だ!ただものではないな!」

財前は怒ったように言った。

「だから、言ったでしょ。端末壊れてるって。」

渡は降りた場所から歩きながら残りの4人を落ちていた銃で始末した。

「な、なぜ貴様には弾が当たらない…?」

「それが、アレの力だよ…」

渡は手に持った銃の引き金を引き、財前のおでこに当てた。

「財前、お前に2つ話がある。1つはお前がアレを狙いに来ると言うことはわかっていた、わざと捕まったんだよ。お前は多くの罪を犯してきた。しかし、一度も罪を償っていない。お前が犯した罪は今この時をもって償われる。つまり、貴様が死のうが誰も損はしないということだ。2つ目はあの情報のことだ。端末?あれで情報収集してたってことは要はネットの情報だろ?あれを鵜呑みにしちゃいけないよ。あれは全て俺が書いたウソだ。よって、会社員でもなければ、渡でもない。まぁ、友達がいないことだけはあってるがな。じゃ、終わりだ。」

銃口を財前のおでこにつけた。

「ま、待ってくれ。何が欲しい、何が望みだ?す、全てやろう、お前が望むもの全てだ。だから、だから、助けてくれ。」

「…」

その沈黙の後、大きな爆音が鳴り響いた。





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