ランサムウェアの作成者が交通事故にあって病院に運び込まれたら、病院のシステムが自分の作ったランサムウェアに感染して治療不能になる
「少し外の空気を吸ってくる」そう声をかけて事務所から出た。
事務所にはひっきりなしに電話がかかってきていたが、仕事が順調な証拠であった。
散歩がてら昼飯でも買おうと思い、駅に向かうと駅には人が溢れていた。
ターミナルでもないし通勤時間でもない。何事かと思い観察しているとどうやら改札機の不調らしい。全て人力で改札を通していて時間がかかっているようだった。
あまり関係もなさそうなのでコンビニで昼飯を買ったが、駅にはまだ人集りがあり、あまり人目に付くところで昼を食べるのも居心地が良くない。どうせ散歩のつもりであったので少し足を伸ばして公園まで歩くことにした。
大通りを抜け、公園にたどり着くと少し汗ばんでいた。
昼飯を食べニュースを読んでいると先ほどの駅の混雑は全国的に起こっているようであり、ウイルスが原因のようだという記事を見つけた。
「どうやら無関係ではなかったらしい」
そんな独り言をこぼし少し情報を集めるとやはり自分が作ったランサムウェアが原因であった。
「あれはファイルを開かなければ感染しないんだが、どうやら馬鹿な駅員もいたようだ」
そもそも駅なんかのシステムはスタンドアロンで稼働していると思っていたが違ったようだ。
しかし、あまりことが大きくなっても面倒だ。こっそり広がるぶんには有難いが公共交通機関ともなると国も黙っていないだろう。
そう考え何か言い案は無いものかと考えつつ事務所に戻ることにした。
大通りに出ると何やら渋滞していた。これも鉄道の影響かもしれないと思いつつも、頭の中ではそれをどうするかを考えていた。
そのせいかもしれない。道を渡りながらも考え事をしていた私はすり抜けてくるバイクに全く気づかなかった。
大きな衝撃を感じ飛んでいると思った次の瞬間には意識を失っていた。
ふと気がつくと私はベッドに横たわっていた。朦朧とする頭で周りの声を聞いていたがどうやらここは救急車の中のようだ。
いくら救急車と言えどあの混雑した道を通り抜けるのは苦労するようで、最寄りの病院にはなかなかつかないらしい。
因果応報なんてことを考えているうちにまた意識を失ってしまった。
急患が病院に着いた時にはもうすぐにでも処置をしないと危険な状態だった。応急処置はしてあるものの大渋滞に巻き込まれ現場到着も病院到着も遅れてしまったためだ。
幸いオペ室は空いていて緊急手術となった。打ちどころが悪かったようで開頭手術となった。
「バイタルは」
「安定していますが流血量が多いようです」
「少し危険な状態だな、輸血量を増やしつつ切開するぞそれと電気メスの用意」
「はい」
「先生!」
「どうした」
「それが病院のコンピューターがウイルスにかかり電気的な器具が使えないとのことです」