白い翼と五色の魔族
「もうすぐです。」
珀空が行った直後、村の方から何人もの人の悲鳴が聞こえてきた。4人は一瞬だけ目を合わせると一斉に走り出した。翼咲は3人について行くことができず、3人の姿は遠くなっていく。翼咲が村につく頃には村は残酷にも戦場と化していた。崩れたり燃えている建物、逃げ惑う人々。ついに赤と青の兵士たちが村の中でも戦い始めていたのだ。
「どうしよう…。私には何が出来る…!?」
見ると、3人は村への被害を食い止めるため走り回っていた。虹飛は建物から落ちてくるものから人々を守るため、半透明の結界を張っている。珀空は崩れた建物から人々を見つけては助け出していて、亜藍は怪我した人の治療をしている。
(私は3人みたいに魔法を使える訳じゃない…。)
「私に出来ること…」
そう呟いた後、虹飛に呼び掛ける。
「お兄ちゃん、建物を1つ避難所にしたいの!なるべく大きい建物に結界を張ってもらえないかな?!」
(私に出来るのは3人が助けた人々を守ること…!)
虹飛はうなずいた後、近くの比較的被害の少ない教会に結界を張った。翼咲はそれを確認した後、人々を避難させていく。
「こっちです!ご老人、子供、病人、怪我人を優先させてください。健康な方は階段を使って2階へお願いします!」
その時近くで10才ほどの男の子が兵士にしがみついた。
「やめて…!ぼくたちの家を壊さないで!」
「うるせえ…!」
すぐに振り払われ、剣を向けられる。男の子は腰が抜けたのか、立てないでいる。
とっさに体が動いた。翼咲は男の子と兵士の間に割って入った。
「やめてください!相手は子供です…!」
「だまれぇ!」
そう言って兵士は剣を振り上げた。興奮した兵士を止めることはできず、背に男の子をかばったまま目をつぶった。
ーガキンッ
頭上で音が聞こえ、目を開けると珀空と亜藍が兵士の剣を受け止めていた。
「ここで翼咲が怪我したら王様に怒られる」
珀空の苦笑いな横顔が見える。
「翼咲、その子連れて教会に。」
「うん…!」
男の子と共に教会に戻り、外を見ると珀空と亜藍は何十人の兵士と戦っているのが見えた。二人の強さは凄まじく、次々と倒していく。しかし、次から次へと兵士が村に向かってくるせいでなかなか数は減らない。二人にはそのうち疲労の色が見えてきた。
そのとき、「金の魔族の王子、王女があの教会の中にいるらしい」という声がした。
大勢の兵士が教会に向かってくる。赤と青の魔族は魔法界の統率権を狙っている。現在五つの魔族をまとめているのは翼咲と虹飛がいる、金の魔族。その後継者がいなくなれば、自分達が統率権を持てる可能性が高まるのだ。
結界の中では村人たちがパニックを起こしていた。たとえ結界の中にいても、攻撃を受ければ虹飛の魔力を消費する。攻撃を受け続ければ、いずれ虹飛の魔力が底をつき、結界も解けてしまう。
「やばいな…」
「私が囮になる」
「は…?」
「私があの人たちの目をそらせたら皆助かるでしょ。私は魔法はダメダメだけど、剣は扱える。」
そう言って教会の近くで拾っていた木刀ほどの太さと長さの木の棒を虹飛に見せる。
「確かに、翼咲は小さいときから武術をひととおり習ってたけど…。」
金の魔族の王族は色々な者から狙われることが多く、何かあったとき自分の身を守れるようにと武術を教わる。翼咲も数人の兵士なら戦えるだろう。しかし、人数が多すぎる。
「だめだ。危険すぎる。」
「でもこのままじゃ皆殺されちゃう!」
翼咲は結界の外に走り出した。後ろで虹飛の声が聞こえた。




