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腐った卵を持って異世界へ~最弱のゾンビ練磨師の成り上がり~  作者: ClownCrown
本章~猛獣の樹海~
11/12

腐卵の真価

投稿が遅れてしまい、誠に申し訳ありませんでした。多忙につき、執筆活動から離れていた為に投稿が遅れてしまいました。今後もこのような不定期な更新になると思いますが、精一杯執筆してまいりますので、これからも『腐った卵』をご愛読いただければ幸いです。

「ぅ、……んっ」


軽く呻いて、鑑は目を覚ます。

炭化して黒く焦げ付いた地面をその視界に映し、大きな欠伸と共に身体を起こす。

硬い地面で寝ていた為か凝り固まった筋肉を伸びを一つしてほぐし、眠気でだるい身体に活を入れた。


瞬間、鋭い痛みが鑑を襲う。


「あたたた……、急に動かしすぎたな。そういえば、【痛覚遮断】切ってるんだった……。」


腕や足に貼り付けられた大きな葉をに視線を落として、鑑は失敗したと痛みで脂汗を垂らしながら苦笑する。


あの戦いの後、鑑は探索中に予め採取しておいた何種類かの薬草を磨り潰し、湧き水で洗った大きめの葉に塗布して裂傷などの目立つ傷口に覆い隠すようにして貼り付けていたのだった。傷口を湧き水で洗い流したとはいえ、化膿するリスクは否めないし、治癒の促進も望めない。よって、傷の手当は早々に済ませてしまいたかったのである。使用した薬草の中には多少の麻酔効果のある物もあったので、【痛覚遮断】を使用していなかったのだが、思いの外傷が深かったのか、それとも麻酔効果が弱いのか、急に動くと痛みが走るようだ。


因みに、葉の湿布は、それ本来の粘着力は弱いため細めの蔦で軽く縛って取れないようにしてある。その結び目が少々不格好なのは鑑自身が結ぶのが困難であったため不器用なミラに任せた結果であった。

腐人(ゾンビ)の鈍重な手で、悪戦苦闘しながら蔦を結ぶミラの姿は何処か愛嬌があって、その姿を思い出すだけで自然と頰が緩んでしまう。


『(おはようございます、ご主人様。)』


そうこうしていると、ぎこちなく礼をしながらミラが朝の挨拶をしてくる。

鑑は、そんなミラに心配そうに眉を顰めた。


「ああ、おはよう。ミラ、ずっと起きてたのか?」


『(はい。万一に備え、【生命感知】によって周辺の警戒をしていました。)』


「寝ずの番か。ごめんな、疲れただろ? 」


『(いえ、ご心配には及びません。私は、ご存知の通り腐人ですので、睡眠や休息を必要としません。一晩警戒を続けるくらい、どうという事はありません。)』


「そうか? なら良いんだが……。」


まったく、ミラは真面目が過ぎるな。少しくらい休んでも良いと思うんだが……。

まぁ、無理の無い範囲で頑張ってくれてるみたいだし、現状を考えれば有り難いのは間違いないが。


「……それで、外の様子は今どんなものだ?」


「(周辺に幾つかの反応がありますが、いずれもこの拓けた場所まで接近する個体は確認できません。)」


ふむ、そうか。


鑑は、ミラの予想通りの返答に僅かに口角を上げる。


やはり、この樹海でこんな拓けた場所に態々来るような魔物は居ないようだ。

なぜなら、この場所に留まることはこの樹海で生きていく上で不利益でしかない(・・・・・・・・)からだ。

昨日、一角狼が水を飲みに来たような水源も無く、外敵から姿を隠す障害物もない。こんな外敵に姿を晒すような場所を長く留まれば、他の魔物に襲われて永眠街道まっしぐらだろう。

よって、こんな場所に来るのは余程知能が低い魔物か、力に自信のある魔物くらいだ。前者は、恐らくこの樹海で生きていくことなんて出来ないであろうから、来るとしたら圧倒的な強者のみだ。そんな存在は早々居ないし、居たとしてももっと良い塒を持っているはずである。


故に、この場所に魔物が故意に寄り付くことはない。

寄り付かないからこそ、この場所は樹海に生息するどの魔物の縄張りでもない空白の中立地帯なのだ。

鑑はそのことに目を付け、此処――正確には、突撃牛チャージ・バッファを落とした大穴――を自分の仮の拠点としたのであった。


「よし、分かった。ありがとな、ミラ。んじゃ、とりあえずステータスの確認をしとくか。」


『(はい、仰せのままに。)』


「《能力開示(ステータス・オープン)》」


言い慣れた呪文を口にし、目の前に半透明のウィンドウを開く。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


名前:ミラ

種族:腐人

Lv:35〔+20〕

トレーナー:鑑

性別:女


MP:E+〔+30exp〕

STR:B+〔+200exp〕

VIT:E−〔+40exp〕

AGI:F−〔+15exp〕

INT:E(闇)〔+30exp〕

能力:【剛力】【暗視】【生命感知】【喰欲】【痛覚遮断】


《火にとても弱い》《腐臭》《鈍足》


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふむ……。」


成果は上々、といった所かな。

突撃牛チャージ・バッファをたった一体倒しただけで、二十もレベルが上がった。

ミラが低レベルだったこともレベルが上がり易い要因の一つだろうが、それにしたって異常な経験値だ。この異常なレベルアップが、如何に突撃牛チャージ・バッファが強大な敵だったかを物語っている。

もしも、真っ向から勝負を挑んでいたなら、万が一にも鑑達が生き残る事は出来なかっただろう。


(だが、それでいい。)


元々、真っ向から闘おうなどとは毛頭思っていない。

なぜなら、現状鑑達の力がこの樹海で通用しないからだ。

この樹海は、植生と気候から判断するに恐らくはエルフの森より派生する『猛獣の樹海』と呼ばれるAランク相当の天然の迷宮ダンジョンだ。当然、生息している魔物のレベルも高く……そして強い。筋力(STR)防御力(VIT)敏捷(AGI)はもとより、魔力(MP)魔法適性(INT)も今の鑑達を遥かに凌駕している。


まさに、レベルが違うのだ。


だが、一つ。たった一つだけ生き残る術がある。


(……ひたすら狩ってジャイアント・ハンティングで、レベル上げだッ!)


矛盾しているように見えるそれが唯一の方法。即ち、紋章(エンブレム)を持つ勇者にのみ許された【昇華能力】の行使だ。

勇者のパートナーは、経験を積み、それが一定を超えると種族の壁を乗り越えて上位の種族に転生をする。この現象を俗に【昇華(ランクアップ)】という。


つまり、鑑の考えの根本にあるのは昔ながらのRPGゲームよろしく『地道なレベル上げ作戦』だ。ただ、若干の相違点があるとすれば、それは――


(慎重に、安全に、的確に獲物を殺す。非力な俺達がするのは、戦闘じゃない、狩りだ)


――現実だからこそ可能な(・・・・・・・・・・)卑怯で狡猾な狩り(・・・・・・・・)であるということだろう。


力が足りない?

ならば知恵を絞り、策を弄して勝てば良い。


牙も優れた身体能力も持たない人類が、繁栄できているのは何故だ?

罠を張り、策を巡らし、効率的で狡猾で冷酷な狩り(・・)を行ってきたからだろう。


なればこそレベル差や能力的不利など関係なく、古来より人類が行ってきた生存策略こそ現在の鑑に打てる最善の手であった。


「よし、ミラ。昨日の肉を食ったら狩り(・・)に行くぞ。」


「(はい、ご主人様!)」



一度ミラを送還(リリース)した鑑は、大穴を這い出て森を探索していた。

探索、と言っても大穴を中心にして直ぐに戻れる範囲内でのことだが。


「【生命感知】」


木の根や隆起で不安定な地面を歩きながら、鑑はミラからスキルを借りて行使する。

薬草のおかげで【痛覚遮断】を使わずに済むため、【生命感知】を借り受けることが可能なのである。

スキルを行使すると、頭の中にソナーのようなイメージが浮かび、自分を中心にして“生きているもの”の存在を光点として認識する。


「ここら辺の生命反応は、なしか」


実際には、植物にも微弱ながら生命反応はあるのだが、魔物のような強力な反応は無い。

此処から少し離れたところに複数の反応が見られるが、流石に大穴から距離が空きすぎる上に魔物が複数とあっては文字通り手も足も出ない。


狙うのは、単体(ソロ)の個体のみである。


(ん? 妙に弱っている個体が居るな……)


鑑は、現在居る地点からそう離れていない場所に弱々しい反応を感知した。

北西に約五十メートルといったところか。


(反応は弱っている生物と同様に不規則に明滅するようなもの……。そう長く生きられるような感じじゃ無さそうだし、試しに見に行ってみるか? 反応が一つであることを加味すると、凡そ何処かの魔物と戦って傷を負い、命からがら逃げたは良いが傷が深くて死ぬ間際、とこんな感じだろう)


「ふむ」と一回頷くと、鑑は右手に【腐卵】を生成し、反応があるほうに足を向けた。


「万一の時はこれでも投げつけて逃げるか…。」


野生の獣は手負いが一番危険と言うし、怯ませて逃げられるようにはしておく。


「さて、と。行くか」


大樹が乱立する森の中に、鑑は進んでいった。



【生命感知】の反応を頼りに樹海を進んでいくと、直ぐに反応のあった場所に辿り着いた。


「反応は……消えたか。」


風前の灯のように揺れていた小さな反応は、鑑が到着すると同時に消えたようだった。


「さてさて、屍骸はどこにあるかなっと。」


是非持ち帰って、今日の昼食及び夕食にしたいものである。まぁ、弱っていた個体の肉なので量も味もそこまで期待できないが、腹の足しにはなるだろう。


そうして、辺りを慎重に探索すると一際幹の太い樹の根元、正確にはそこにポッカリとできた穴の中にソレはいた。

いや、既に事切れているのだから、あったの方が正しいだろうか。

鑑は、穴を覗き込んでソレを観察する。見たところ、紫電狼(ライトニング・ウルフ)の死骸のようだった。痩せ細って骨が浮き出した胴に、大量の血が流れ凝固して固まった傷口、名前の由来にもなった淡い紫色の毛皮はボサボサに荒れている。先程死んだばかりなので腐敗はしていないが、見るも無残なものだった。


「それに、子狼か……。」


成体であれば、人を背に乗せられるほど大きいもののはずだが、目の前の死骸は鑑が抱きかかえられそうなほど小柄であった。おそらく、この子狼は群れや親からはぐれた、もしくは群れが壊滅して逃げてきたのだろう。

単身の子供ゆえに狩りもまともに出来ず、傷を負い、飢え、そして死んでいったのだ。


「………」


可哀想だとか、残酷だとか、そういったことは思わなかった。

弱肉強食、それがこの樹海の現実であるし、子供だからと言って安穏に生きられる世界ではないのは分かりきっていることだ。単に運が悪く、弱く、生き残れなかった。ただ、それだけのこと。


だが、鑑はこの子狼に自分を重ねてしまうのだ。

さっき初めて目にし、僅かな時間も触れ合っていないこの子狼に。

群れ(仲間)から逸れてしまった孤独、暴威に対しての無力感、それでも最後まで生き残ろうと足掻いたその意志に。


(くだらない感傷、なんだろうな……。単なる俺の思い込み、目の前のコイツがそう思っていたかも分からないのに。)


自分もまだ甘いな、と薄く笑って鑑は子狼を抱き上げる。


(埋めてやるか。このままにして置くのも忍びないし……)


痩せ細った子狼とはいえ、死んだばかりの新鮮で貴重なタンパク源であることに変わりは無い。それを弔おうなんて思うのだから、勿体無いことこの上ないのだが、しかしまぁ――


「――今回だけは、悪くねぇよな」


その時である。


右手から、黒い光が溢れるように迸った。


「な、なんだぁッ?!」


光は抱きかかえた子狼の腹の上くらいに収束し、一つの形をかたどりり始める。

何度目かの既視感の果てに、それは姿を現す。


それは、丸みを帯び漆黒に染まった流線型の物体。

先程まで、鑑の右手の中にあったモノ――【腐卵】である。


【腐卵】は、揺らめく影に包まれたまま宙に浮いていた。

それは、ゆっくりと着実に下降していき、子狼に触れる。その瞬間、子狼の亡骸はパッと光の粒子になって四散し、【腐卵】に吸収されていった(・・・・・・・・)


そして、全ての光の欠片を吸収し終えた【腐卵】は、浮遊する力を失ったかのようにコロンっと鑑の足元に転がった。

大切な回の割りにグチャグチャで面白みの無い文……。

自身の文才とストーリー構成能力の無さが恨めしいですね(泣


矛盾点・誤字脱字などがありましたら、ご報告頂けると嬉しいです。

また、感想もお持ちしております。

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