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第十九話

フォーレン・モールの生みの親

 話し始めて一時間。フレアによる"最終戦争(ラグナロク)"の説明が終わった。

  ティアマトは世界中の嫌われ者。そして世界を混沌に陥れた悪魔の一族。

 リキッドがパインに向かって言った暴言の意味を、ハジメは少しだけ分かった気がした。

 ハジメがパインが死んでしまった日の事を思い出す。


 『さぞかし怨み辛みがあるだろう』


 リキッドがパインに吐き捨てた暴言にハジメの腸が煮え返り拳に力が入る。


(リキッドはフレアさんのいった最終戦争(らぐなろく)の真実を知った上でパインちゃんに暴言をいったのか? それともティアマトに逆恨みという意味での言葉なのか)


 そう考えているとルナがハジメの心を見透かし言葉を発した。

 ルナが体育座りをしながらハジメに話しかけた。


「あいつらは知らないよ……」

「っは?」

「っは? って言われても"そう"なんだから仕方が無いだよ」


 ハジメの訊きたいことはそんな事ではない。なので訝しげな表情でルナに訊いた。


「そうじゃなくてさ……何で僕の思ってたことが分かったの?」

「ハジメちゃんに言ったんじゃないよ……」

「じゃあ……誰に言ったの?」


 ルナの視線の先にはハジメしかいない。だがルナの視線が自分の後ろに向けられていた事に気付き、後ろを振り返り"誰がいる"のか恐る恐る確認したが。


(誰もいないじゃん)


 ハジメは自分の顔をルナに戻すと、


(じゃ、じゃあ誰に言ったの?)


 と、ハジメは不安な表情でルナに視線を送る。


「――ハジメちゃんの後ろに憑いて来てる……ロットン村の人達だよ」


 ルナのからあまりに意外な答えを口にされ、ハジメの全身から血の気が引いてしまう。

 ルナの答えは想像だにする事の出来ない答えだった。全身に鳥肌が立ち、毛を逆立たせてハジメが不安を隠しきれず、動揺が口から洩れた。


「な、な、な、何言ってんの?」


 ホラー系が苦手なハジメは背中に冷たい汗を流した。異常な話を聞き青くなる。

 ハジメを見つめながら、ルナは体育座りをしたまま話を続けた。

 ルナの口から続けられる話によって、半信半疑だったオカルト話が真実なのだと信じざるを得なくなる。


「……ハジメちゃんの後ろにいる子が言ってるよ、リキッドって人が遊んでくれてふざけてその人の背中に"ばか"って書いたんだって、そしたら振り向きざまに殺されたって……」


 ハジメは口を開く事ができずキョロキョロ視線を辺り、自分のに湧いて出る恐怖心を周りに撒き散らした。もはや、落ち着いていられない、確かにリキッドの背中には"ばか"と落書きされていた。

 そしてその事は誰にも話していない。


「それだけじゃないよ……ハジメちゃん……それ見たんだよね……」


 これも当たる。


「何故あの時、リキッドとライムって女が一緒に歩いていたのはデートだって言ってたでしょ……」


 また当たる。


「でも、あの時二人はデートしてたんじゃないよ……村の人たちを殺して歩いていたみたい……」

「ぇ!?」


 小さく声を漏らすと同時。ハジメは信じ難いに心の底からビビッていた。それはクリスマス・イヴの日。リキッドとライムの二人は睦まじく歩き、そして笑顔で幸せそうだった。

 ハジメはその時、リッキドとライムの二人とごく自然に間抜けた会話をした。そんな会話をしていたのに、そんな素振りを微塵も見せる事無く――

 

(人を殺したのか……?)


 ルナの話が本当なら、あの時会話した時の二人は"人間である為の定義を犯した"悪魔である。ハジメを振るい上がらせたのは、そう考えてしまったから。そして実感するに至ってしまったからだ。

 紫色に変色し小刻みに震えるハジメの唇がルナに向かって開いた。

 

「ルナさん……その話って本当なの?」

「――嘘だと思うの?」

「嘘だと思うと言うか……何だかピンと来なくて……」


 ルナが嘘を言っている様には見えない、それに全て当たっているからなおの事恐ろしい。

 ハジメがルナから目線を外し右横を見る。

 と、フレアが足で地面を軽く蹴り砂埃を僅かに上げていた。この行動に何ら意味はないだろう。強いて上げるなら動揺することさえ有り得ないほどこんな話は、日常的なんだということ。

 フレアの冷静な様子を見たハジメが心の中で呟いた。

 

(騙されてるのかな?)


 否定できない事実とは裏腹に不信感を二人に抱いている事実がハジメの足を後ずさらせた。その明らかに不審を抱く様子を見たルナが、砂の地面に指を鉛筆代わりにして"何やら"書き出した。


「……何してるの?」


 ルナは地面に何かを書きながら口を開く。


「ハジメちゃん……私達の事信用して無いでしょ……」


 全くその通り。いきなりこんな所に連れて来られて、こんな話を信用する方がどうかしている。だが全て見透かしたようなルナの静かな言葉にハジメの心音が大きくなる。


「い、いや……そんな事ないよ……」


 ハジメの心音が大きくなったのは、この世に存在しない者達にまた訊いたと思ったからでも、仕草や言葉の情報から推測したと思ったからでもなく、本当に心の中を覗かれた気がしたからだった。

 簡単に言うと"怖くなった"とも言える。

 心の中を覗かれた証拠がルナによって地面に書き出されハジメは驚愕することになる。


 ――≪佐藤一≫


 書き出された"文字"は、間違いなくハジメの前世で両親に付けられた名前。

 カレジに背中を切られた時。ハジメは前世という言葉は口にしたが、前世の名前までは名乗らなかった。

 それに今のハジメの苗字はサトウではない。

 ハジメ自身にしか知りえない情報をルナは知っている。超が付くほど驚いた。ここまで来ると動揺はピークを迎え吃驚仰天の声を上げるしかなく、


 「な、な、な、何でぇえ??」


 ハジメの驚いた姿がフレアにとってよほど可笑しかったのだろう。お腹を押さえ笑っている。


「あっはっはっはっは」


 フレアに釣られてルナも右手先を口に宛がい変な笑い方。


「ニッチッチッチッチッチ」


 下水の音が耳障りでドブ臭くて陰気な空間に長時間いてこの場所に慣れてしまったせいか。それとも、二人が笑ってくれたおかげか。ハジメはずっと気持ちの悪さを感じていた無法地下街(マンホールシティ)に、初めて居心地の良さを感じて気が緩む。

 ハジメが心を開きだしていた。

 一度深呼吸をするとハジメはフレアに尋ねた。


「僕の前世って何処まで知ってるんですか?」

「ハジメ君が"あの世界"にいた時の事ならほとんど知ってる……ルナに訊いたよ」


 ハジメに余裕が出てきていた。そうなると笑い声の響いていた隠れ家にザーっという下水の流れる音が急に耳の中に入ってくる。それでも状況を飲み込むにはまだ遠い。

 ハジメが困惑した表情でルナに尋ねる。


「覗かれていたって事ですか? 僕の前世……」

「ハジメちゃんの前世を覗いたっていうより、感じたって言ったほうが良いかな……自分の眼で見るわけじゃないから……」


 ルナの表現は抽象的で"解り"難かった。ハジメは"解らない"ということが"分かった"と言う程度。

 体育座りをしていたルナが立ち上がる。

 すると、フレアが近づきお尻に付いた砂をパンパンと音を鳴らし砂を払ってあげている。

 立ち上がったルナが険しい表情をしながらハジメに目を合わせる。

 それを見たフレアが二人の話の間合いから三歩後ろに下がる。

 ハジメもフレアの動きを見て、途轍もなく重大な話をされるのだと簡単に理解に至った。

 フレアが間合いから離れ、定位置に付くと両手を後ろに組んだ。それを合図にルナがハジメへ静かに質問する。


「……ハジメちゃん……何で"フォーレン・モール"を書いたの?」


 ハジメの頭が真っ白くなる。それは想定すら出来ない質問をされたからという理由だけではない。

 大海が深海を決して覗かせてくれないのと同じように、ルナのとても綺麗に澄んだ蒼い二つ瞳が、その双眸の底に眠る何かを悟らせて貰えなかったから。

 そして何より、ハジメはこの澄んだ深い瞳を知っていた。

 それは前世の話。腐っていた自分の孫をそれでも優しく見守っていてくれたおばあちゃんの瞳とルナの瞳は良く似ていた。

 前世の(はじめ)はおばあちゃんが大好きだった。だからいつもおばあちゃんに甘えてずっと傍にいた。ハジメは誰よりも理解している。

 おばあちゃんは、自分自身よりも周りの人を気遣い汗水垂らしていた人生の達人。厳しささえも優しさに感じさせてくれう存在だった。酸いも甘いも知り尽くし苦労に苦労を重ねて出来たその手は芸術だった。

 人生を極めたおばあちゃんだからこそ、暖かい笑顔を引き立たせる純美な瞳を持ち得たのだとハジメは思っていた。

 同じ瞳を十歳の少女がそんなおばあちゃんと同じ瞳を見せたことで、ハジメの概念が覆ろうした時。


(やっぱり違う)


 と、直感し覆ろうとした概念が圧し止まった。おばあちゃんの瞳とルナの瞳では決定的な違いが有る。

 それは癒し。

 大きく包み込むようなおばあちゃんの瞳とは違い、ルナの瞳にそれが無い。

 ルナの瞳はそれとは真逆、まるで尋問でもしているような圧迫感をハジメに与えていた。

 ルナがそんな目を持つのは、

 

 ――覚悟の表れか?

 ――それとも、そう見えただけか?

 ――どちらでもないならもっと別の力なのか?


 混迷するハジメの心が、徐々に行き場を失っていく。

 すると圧迫されたハジメの精神が限界に達し、ルナの言葉は真意へと誘っていく。


「――ぼ、僕……"絵本作家"になりたくて……」

「そんな事はいいよ、ハジメちゃん! "なん"で、"フォーレン・モール"を書いたの?」


 ハジメの答えをバッサリ切り捨てたルナの説明は分かり難く、フレアが二人の間から三歩離れた場所から一歩近づき訊ねた。


「ハジメ君……私達は"なん"で書いたのかを知りたいの?」


 ルナとフレアの真剣な眼差し。噛み合わない二人との会話にハジメはたじろぎ動きが止まる。

 ハジメは言葉に詰まりながら、ルナとフレアを交互に見つめ説明を続けた。


「何でって……その……ちょうど……新品のノートがあって……」

「……いや……そんなんじゃなくてさ……ハジメ君」

「ハッキリと質問に答えてよ……ハジメちゃん」

「そ、そんなこと言われても……なんて答えればいいのか……」


(とんちんかんな答えだったのかな?)


 ハジメが思う。

 ルナとフレアが鬼気迫る表情でハジメに詰め寄ってくる。その光景はさながら浮気が発覚した男と女の修羅場だった。

 当然、ハジメにそんな経験など無い。浮気発覚の擬似修羅場に対応出来ずパニック状態になる。二人は顔を見合わせ、フレアがルナの前へ。

 そして二人が訊きたい真実への質問をルナに代わってフレアがする。


「……ごめんね! 聞き方が悪かったのかも……"なん"でじゃない……"なに"で書いたの?」


 "なに"で? ハジメの動きが固まって、思考がまた一時停止する。

 止まっていたのは一瞬。頭はすぐに回りだしフレアの言いたい事が徐々にハジメの中で言葉になる。


("ナニ"で書いたのか)


 つまり、ルナとフレアがハジメに訊きたがっている事は、どんな"道具"を使って"フォーレン・モール"を書いたのか……である。

 (はじめ)が"ありふれ勇者の大冒険"を描いたのは五歳の時。絵本の世界の時間と前世の時間を足して三十年も前のこと。

 残念ながら、ハジメは全く覚えていない。

 とりあえず、五歳だった(はじめ)が使っていそうな"道具"をハジメは頭に浮かべ並べてみた。


 ――鉛筆。

 ――クレヨン。

 ――マジックペン。

 ――絵の具。

 ――シャーペン。


 五歳が使う筆記用具と言えばこんなものだろう。並べてみて何度も繰り返し頭の中でイメージしたが"全部違う"と、それだけは思い出せた。一つ一つ整理し思い出す為、ハジメはその場にしゃがみ込むと目を瞑ぶり、両手で耳を塞いで視覚と聴覚を遮断する。

 そして頭の中で映像化した。


 ――"フォーレン・モール"の"フォーレン"は英語辞典で調べて"堕天使を意味"する≪フォーレン・エンジェル≫から取った。

 ――"フォーレン・モール"の"モール"は……忘れてる……映像化出来ない。

 ――"フォーレン・モール"を書こうとした時……何処にいた?

 ――五歳だった……引きこもる前……外に出ている……でも……どうして?

 ――教育熱心だった両親にクレヨンと色鉛筆を取られて怒られたから……だから外に逃げ出した。

 ――逃げ出した先は文具店? ……違う……お金なんて持ってない……タダで手に入る何かを探した……。

 ――それは何だ?

 ――公園が見える……ノートを開いてる……何度も書き直して真っ黒になったページ……そこに"何"かで書いた……違う。

 ――真っ黒のページ張ったんだ! 公園で見つけた≪白い花≫を千切って。

 ――覚えてる……千切って乗せただけのはずの≪白い花≫が"何故か剥がれなくなって"不思議で不思議で仕方がなかった。


「ハジメ君!!」

「ハジメちゃん!!」


 両手で塞いだ耳に届くルナとフレアの大きな声で我に返ってハジメが立ち上がる。


「あの……少しだけ思い出せたよ……」

「何を思い出したのハジメ君!!」

「ハジメちゃん! 教えて!!」


 断片的だがハジメは確信できる"フォーレン・モール"をノートに"記した"事実を二人に話す。


「ノートに書いたんじゃないです……張りました」


 意外な答えを口にしたハジメにルナとフレアが顔を見合わせ困った顔をした。

 ハジメが語った答えについてフレアが尋ねる。


「張ったって何を?」

「多分――≪節分草≫っていう花だと思います」

「節分草? ……聞いたことの無い」


 フレアが口元に手を当て、左手を右肘の下に添える。そして考え込みながらルナの顔を見て訊いた。


「……ルナ知ってる?」


 ルナは腕を組み洞窟の天井を見上げて目を閉じた。


「……う~ん」


 考え込んだ後、ルナは元の位置に顔を戻した。それから目を開いてフレアに伝える。


「"あの世界"にある花だね……"この世界"には無いなぁ~」

「ねぇ? ルナ……その≪白い花≫がフォーレン・モールと関係あるのかな?」

「う~ん……調べてみないと判んない!」


 僅かであったが罪悪感に駆られていたハジメは少し拍子抜けた。ルナ・ティアマトにとって諸悪の根源でもある"フォーレン・モール"。

 その"フォーレン・モール"を生み出し創り出してしまった元凶であるハジメに対して一時(いっとき)、怒りの感情を露わにしていたにも関わらず、今この場では全くと言っていいほど"怒りも憎しみ"も無くなっていた。

 拍子と一緒に抜けた罪悪感はこのだだっ広い空間からもすり抜け、隠れ家が穏やかな静寂に包まれる。


「ハジメ君……嫌な思いをさせてごめんね……」

「私も謝るよ……きちんと話してくれたハジメちゃんはいい子だねぇ~」


 フレアとルナの優しさは、例えるなら湯を湧き出させる誘い水。ハジメの心の底から黒い感情が一気に噴出した。


(……全ての元凶は僕だ)


 ハジメの心に湧き出した黒い感情の名前は後悔である。


(ルナさんを地獄へ叩き落したのも……僕だ……)


 後悔は懺悔に変わると風船の様に大きく膨らむ。肥大化した懺悔が贖罪になるとハジメから涙が溢れて頬を伝う。


(ティアマト一族が……ルナさんがどれほど"恨みを募らせ"……"憎しみを(たぎ)らせ"僕を怨んでいることだろう)


 ――罪の重さに耐えられない。

 ――怖くて恐くて仕方がない。

 ――逃げてしまいたい。

 ――でもそれは叶わない。

 ――自業自得だから。

 ――受け入れなければいけない事。


「ル、ルナ……さん」


 ハジメの頬を伝っていた涙が、滝のように流れ落ちる。大声を張り上げ、頭を下げると、ルナへ。


「ごめんなさい!!!!」


 ハジメが頭を下げたのも、ルナに謝罪したのも、隠れ家の中で大声を張り上げたのも、全ては圧し掛かる責任から逃れるため。これは前世で当たり前のようにやっていた行為。心は完全に折れて、そして屈していた。

 産まれ落ちたその日から変わろうとハジメは逃げずに努力してきた。だがそれは"つもり"に過ぎず、結局、前世の自分と何も変わっていない事を痛感した瞬間でもあった。

 ハジメは頭を下げたまま、上げられない。ルナの顔を見られないから、何を言われるのか恐かったから前世と同じ事をしてしまう。

 それは――下を向いたままひたすら逃げる。

 そんなハジメの様子をジッとルナが見つめる。

 ルナからしてみれば、何故ハジメが泣きながら謝っているのか分かっていない。

 ハジメに近寄るルナ。それを見たフレアが"二人の間合い"からまた一歩後ろへと下がる。

 ルナが一度困った顔をしたが、すぐに笑顔を作るとハジメの肩にポンっと手を乗せ、元気よく一言伝えた。


「どんまい! どんまい! 気にすんなよ!!」


 明るく答えたルナの言葉を聞き、ハジメの心が迷い、逃げてもいい口実を頭の中で試行錯誤する。


(許してくれたのかな? いいや、こんな簡単に許してくれるはずが無い。ティアマトの滅びは僕のせい元凶だ。怒りを通り越し呆れられているだけ。もう一度謝れば突き放されて侮蔑されるに決まってる。――だからこのままでいい)


 頭で思考錯誤し出てきた答えは――現実逃避。ここでハジメの頭におばあちゃんの最後言葉が過ぎった。


 『(はじめ)ちゃん……恐がってるばかりじゃ何も起こらないよ……勇気を持って生きてごらん……』


 内向してしまっていたハジメの意識が、思い起こされたおばあちゃんの言葉で肉体の外へ向かう。

 勇気を出せなかったハジメが下を向きながら"なけなしの勇気"を絞りだし、顔を上げルナを見つめると謝罪の言葉を口した。


「ルナさん……ごめんなさい……」


 一瞬の間。ハジメに緊張が走り、心臓が破裂しそうだった。勇気を絞り尽くした。


(もう何も残っていない)


 ハジメの謝罪を聞いたルナは、また茹蛸(ゆでだこ)のように顔を真っ赤にする。

 

「謝んな!! 怒るよ!!!!」


 そう言ってルナがハジメに怒鳴り散らした。

 ここまで来てやっとハジメが頭を上げてルナを見る。

 ハジメの贖罪が懺悔に変わり、罪悪に変わると後悔になった。

 後悔しているとハジメは、そんなことを忘れ、怒り狂うルナにいつの間にか怯えている。

 そんな二人を見ていたフレアが一言。


「ルナ……キレちゃダメ」

ご愛読ありがとうございました。

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