第十二話
魔法の修行。
北暦一九〇〇年。
十一月十一日 午後十時三十分頃。
この日、"勇者反対同盟"の同志二二二名が何者かによって殺害された。
犯人は二二二人という大勢の人間を殺害していることから、単独犯ではなく複数犯であると考えられる。
殺害現場は"魔法地区ニルヴァーナ"から"中心地区ヴァルバンス"へ向かうラピィオ列車車内、犯行に使用された凶器は傷跡から"魔法刀"であると断定した。
犯人の行方は今現在も分かっていないが、"勇者反対同盟"の同志を狙ったという点から見て、聖痕騎士団である可能性は低いという視点で捜査していたのだが、聖痕騎士団である可能性を裏付ける証言が、殺害現場で生存していた金精種の、ルーシン・シャーロッテという女性から得られた。
"ヴァルバンス"から"ニルヴァーナ"へ向かう際に経由する砂漠地区"イスニール"域で、爆音と共に"ウロボロスに鎖の巻かれた"聖痕騎士団の"シンボルマーク"である"不不滅鎖"を見たと発言している。
ルーシンという女性の証言を元に、殺害現場近くを調査した結果、爆音は火薬の類ではなく、魔法によるものだと判明。
魔法の系統は祈詛系、自然僧/雷光によるものである。
なお、殺害現場であるラピィオ列車の生存者は、ルーシンの他に娘であるパインも生存していた事が確認されている。
二人の生存理由は聖痕騎士団に時間的な余裕がなかったためか。もしくは乗り合わせていたことを偶然にも聖痕騎士団に気づかれなかったかであるのだが、計画的犯行であったことからその可能性は極めて低いと判断する。
我々は犯人グループとルーシン母子の間で何らかの取引が成されたとみて、捜査を継続する。
――【勇者連合 十六勇師団第三支部"獣人隊"の報告書より】
* * * * * * *
ルーシンとパインがロットン村に戻ってきてから、十ヶ月の月日が流れた。
この十ヶ月、自分の身に危機が迫っていると混乱していたパインも、少しずつ落ち着きを取り戻してはいる。しかし、その不安を取り除けてはいない様子。
ルーシンとパインの心配を除けばロットンの村は平穏そのもの。退屈な日々が続いていた。
一九〇一年十二月二十四日――クリスマス・イヴ
この世界にもクリスマスというのが存在している。だが、イエス・キリストの誕生を祝したものかどうかは、判らない。ただやる事は前世のクリスマス・イヴと同じだった。
ロットンという田舎の村でも芋臭いカップル達がちらほらと、手を繋ぎ田畑を眺めながら砂利道を歩いている。そんな幸せそうなカップルを横目に"とある場所へ"と向かうため、ハジメは修行も兼ねてランニングの真っ最中。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……く、苦し」
息を切らしたハジメの足が止まってしまう。三歳児の体ではそれ相応の体力しかなく、バテ気味だった。
そこへロットン村では珍しい土精種のカップルが手を繋ぎながら現れた。
土精種とは小麦色の肌が特徴で、植物に果物や野菜と心を通じ合わせる事が出来るという特殊能力を持つ種族である。
そのため"農業のエキスパート"と呼ばれている――『だから"ファーマ"なんだろう』と、その昔カレジがハジメに言っていた事があったのを思い出していた。
ハジメの前に現れた土精種のカップルは、この村で農業を営む人たちの手助けに来た助っ人――いわば先生だ。
まだ二人とも二十代という若さのせいか、若者からモノを教わる事を嫌うお年寄り達からは――『この若造が』と、あまり良く思われていない。
ハジメもその事を少し気にはしていたのだが、こうして手を繋ぎ歩いているところをみると、大して気にはしてないようだった。
土精種女性の名前はライム。
その彼氏がリキッドという男性。
ライムがハジメに挨拶をする。
「ハジメちゃん……こんにちは!」
「ど……どうも……」
ハジメは素っ気無い挨拶をライムに返す。何度か出くわした事ならあったが、こうしてきちんと話をするのは初めてだった。
ハジメが緊張している。
ライムは長い黒髪の清純派女性――ハジメの好きなタイプ。
一方、リキッドは絵に描いたようなヤンキー野郎――ハジメの嫌いなタイプ。
「ハジメ……どこ行くんだ?」
ハジメに話しかけながら、リキッドがライムの肩に手を回し、華奢で柔らかそうな体を、グッと自分の体に寄せてた。
その腸が煮えくり返りそうな光景を見たハジメが、苛立ちを腹の底に沈める。
「さ、散歩かな……二人は?」
「……誰も居ない村のハズレで宇宙を感じてくる」
わけが分からんが、"何をしようとしているのか"はハジメでも良く分かる。そのリキッドの言葉を聞くと、ライムが小麦色の顔を赤らめた。
ライムもこれからリキッドに何をされるのか、理解し、承知し、受け入れようとしている。
だからこそハジメは、リキッドではなくライムに憤りを感じると共に呆れ果てているのだ。
なんでこんなヤツと……と。
マヌケ面でマヌケなセリフを口走たにも関わらず、平然とにやけているリキッドをハジメは憎らしいと思う反面、とても羨ましいとも思っている。
どんなに立派な人間であっても、性欲というものはある、ハジメの気持ちが判らないという男がいるとするなら、その男は立派ではない、意地っ張りなだけだ。
「じゃあな! ハジメ……俺ら行くからよ!!」
リキッドはライムの腕を掴み、強引に引くと去って行った。その背中には、村の子供にイタズラでもされたのだろう≪ばか≫とラクガキされていた。
ハジメは二人を遠目で見送った後――
「余計な時間を食せやがって……」
つい、三歳児らしからぬ愚痴を零らす。
「……急ごう」
自分の気持ちを切り替えて、また"ある場所"へ向かって走り出した。
こんな所でこんな事をしている場合ではない。
それは十ヶ月も前のこと。
"この絵本の世界"でハジメの初恋女性パインとの間で起きた出来事だ。
惚れた女性に"助け"を求められた。それはハジメの"長い人生の中"で発生した"生まれて初めて"の経験である。
『何としてでも助なくては!!』とハジメはそう思っていた。
『パインちゃんを守りたい』――その一心でハジメは破邪洞窟近くの林へ、息を切らしてとにかく走る。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
急いだ気持ちが先走ったためか、目的地への途中でハジメの足がおぼつかなくなりると、足が絡み合い一度その場で転んだ。
大人の体と違い子供の体は筋肉が発達しておらず、イメージする動きと体の動きが一致しない。
ハジメは自分の体すら使いこなせていない事を実感する。
その後も、何度も転んでは立ち上がりを繰り返す七転び八起き状態、ハジメがズキンズキンと痛む両膝の擦り傷を見る。
「い、痛っ!?」
ハジメは両膝から血を流し、目的地である破邪洞窟の上に広がる林に到着した。
「……はぁ……着いた……やっと修行が出来る」
この林へ向かってハジメが転びながら、走ったのは強くなる為、または勇者になる為。あるいはパインを救う為。
とある場所に行けばこれらの"為"の修行が出来る。
これらの為には"魔法の修行"が不可欠だった。
そして強くなる為、この林を選らんだのには理由が三つある。
一つ目の理由は"林の中"だからだ。
林の中に入れば四方八方を見渡しても木々と草花が生えているのに加え、小川がせせらぎが聴こえる辺ぴな空間。
ここなら誰にも気づかれないし、とても落ち着いて修行に励めるとハジメが考えたからだ。
二つ目の理由は、ここ数ヶ月、同じ道を毎日歩いているのだが、この林の草花は生命力が強く、掻き分け押し倒しても次の日になれば、ピンと立ち元に戻る。元気な草花がハジメにこの林を選ばせた。
この二つ目理由には母である、ハレルヤの存在が大きく関っている。
ハレルヤは息子であるハジメでさえ、ゾッとするほど用心深く執拗な性格。
毎日歩いたことで草花が倒れて歩道が出来てしまえば、息子を溺愛し勇者になろうとするのを極端に嫌うハレルヤは必ずハジメが修行している事実を突き止めてしまう。
歩いてきた道が消える、聞こえは悪いが都合はいい。
ハジメがそんな事を考えながら歩いていると、目的地である"その場所"へ向かってガサガサと草花を掻き分けながら、お気に入りの場所にある"ちょっと変わった木"の下へと辿り着く。
「相変わらず綺麗だなぁ~」
ハジメが思わず見惚れて声を漏らした――"名も無き宝石の木"。
この"名も無き宝石の木"を見つけたのは、初めてこの林に入った時のこと。
――≪十ヶ月前≫
草木の生命力の強さを知らなかったおかげで、帰り道が分からなり迷子になった時、あちこち彷徨い歩き見つけた神秘的な"宝石の木"。
きっと世界中でハジメ以外、誰一人知らないであろう、その"宝石の木"は絵にも描けないほど美しいものであった。
それがハジメにこの林を選ばせた三つ目の理由である。
宝石の木が誕生する原因とは宝石化現象と呼ばれる魔法現象のこと。
そして宝石化という現象は、草木や花々が宝石化すること。
人間が魔力を持つのと同じように自然界の草や木や花、それを育てる大地も魔力を持っている。
自然界の魔力は人間の魔力とは、比較にならないほど膨大であるため、常に放出され尽きる事がない。
≪自然魔力≫は未だに完全な解明には至っておらず、魔学研究者達がこぞって自然魔力の研究に明け暮れている。
今のところ解明されている自然魔力の種類は七つ。
力・精神・命を司る――≪ダイア≫
癒しと再生を司る――≪ルビー≫
時間・空間を司る――≪サファイア≫
情報を司る――≪パール≫
存在を司る――≪クリスタル≫
記憶を司る――≪エメラルド≫
破壊を司る――≪プラチナ≫
植物の宝石化は、破壊を司る"プラチナ魔力"が文字通り植物の遺伝情報を破壊するところから始まる。破壊が始まった後、情報を司る"パール魔力"が破壊された遺伝情報に"宝石の情報"を持って入り込み、その後に癒しと再生を司る"ルビー魔力"によって"新たに"再生されることによって植物が宝石化する。
以上が宝石化の原理とされているが、プラチナ魔力が強すぎて、パール情報が入る前に木そのものが破壊されてしまうのがほとんど。うまくいったとしても、パールが"宝石の情報"でなく"ただの石の情報"であった場合、石で出来た木になるだけ。
今ハジメの前に悠然と立っている"名も無き宝石の木"になるのは大変珍しいことなのである。
ハジメの前に立つ"名も無き宝石の木"は、幹と枝がダイアで出来ており、奥まで透けて見えるほどの透明度を誇る。
葉は研磨されたサファイアの如く緑色に輝いていた。
ダイヤの枝先にある蕾はルビー。
ルビーの蕾は熱を帯びており、原因不明だが触れると、とても温かい。蕾は時間が経つとクリスタルの花となって咲き誇り、宝石の花は寿命が尽きると砕け散る。
その様を偶然にもハジメは目にすることが出来たのは九ヶ月前。
三月の出来事だった。
この日は名も無き宝石の木の周辺に粉雪までも降っていたのだから、堪らないほど綺麗だった。鳥肌が立ち、涙が出るほど感動し、ファンタジーの域さえ超えていると、その時ハジメは感じていた。
強くなりたいと願いやって来きたハジメは、その光景が自分を激励してくれるように思えた。強くなれるのか……パインを守り切れるのかと、不安で仕方が無かった心にやる気を漲らせてくれた。
それから九ヶ月が経つ今日、はち切れんばかりのやる気は今も尚継続し衰えていない。
むしろ増していると言っていい。
前世で一切の努力を怠り、やる気など出した事がないハジメにとって"生まれて初めて"湧いて出るやる気は、快楽であり、喜びであり、生きている実感だった。
ハジメが気を引き締める。
そして、自分の両頬をパチンと叩く。
「よっし!! 頑張るぞ!!」
最初にする修行は素振りだが、もちろん剣は持っていない。
ハジメの家に剣が有ることは有るのだが、持ち出すのは絶対NGだ。ハレルヤに気付かれてしまうだろう。
素振りは十ヶ月前この林の中で拾い、"宝石の木"に立て掛けておいた棒切れを使用する。
剣の上達は有能な剣士と対峙し実践を積むのが一番手っ取り早い。だがこの素振りはあくまで"魔法の修行"の一環。
今はとにかく夢中になって素振りをし、魔法の系統を知る事が最優先事項。系統が判らなければ魔法の修行が始められない。
カレジが書いた手製魔法書には載っていなかったが、ロットン村の図書館で見つけた勇者に関する情報誌"ヒーロー"に魔法の系統の調べ方がきちんと記載されていた。
一、血液検査。
血液を調べる事で簡単に魔法系統が判るのだが、この方法は使えないロットンの村にその技術は無く、あったとしても母親に反対される。
二、補助系による選定。
補助系の能力の一つに感覚向上魔法というものがある、視覚感覚を向上させる事で、どの系統に属しているかを選定することが出来る。
これも不可、選定師がいない。
三、内観法。
まず精神を統一する為、大きく深呼吸を三回ほど行い目を瞑る。
真っ直ぐ続く廊下をイメージしひたすら進んで行き、行き止まりで出会った人で判別できる。
子供――属性系。
老人――補助系。
女性――治療系。
男性――召喚系。
他人――祈詛系。
自分――未知系。
これも不可、行き止まりに辿り着かない、早い話がハジメに向いていない、時間が掛かりすぎる。
四、死別法。
瀕死の状態になるまで肉体と精神を追い込むことで、命の危機に晒さす。
すると、自分の系統能力が自動的に発動される。
ただし、肉体と精神が極限状態にあるため、系統能力が発動された時点で死亡する確率は七十%を越える。
今この方法を使っているものは誰もいないし、法律でも禁止されているため――不可。
五、集中剣舞。
同じ武器を振り続けることで、振り続けた武器に魔力が宿り、色の付いた光を放つようになる。
素振りに使用するのは剣や刀、槍などが一般的。
ハジメの場合は棒切れではあるが、それでも問題は無い。
今、ハジメが行おうとしている素振りが集中剣舞である。
赤――属性系。
青――補助系。
白――治療系。
黄――召喚系。
緑――祈詛系。
それ以外の色は全て未知系に分類される。
この五つの中からハジメが選んだのは、もちろん"集中剣舞"である。
それ以外は実現不可か、法律を犯して七十%の確率で死ぬかもしれない方法だけ。
集中剣舞にどれほどの時間を費やせばいいか分からない。何度棒切れを振れば系統が判るかも分からない。
それでもやるしかない――ハジメは一日五千回の素振りを自分に課し、十ヶ月で"およそ百五十万近く"まで棒切れを振り、この日も五千回の素振りをこなす為、ひたすら汗を流している。
素振りを始めた一ヶ月の間に血豆が出来た。
出来た血豆はズキズキと響く激痛を生み、更に一ヵ月が経った頃にはグシャっと潰れて、ジリジリと焼けるような激痛をハジメの体に覚えさせた。
それを乗り越え更に三ヶ月、掌にあった血豆は硬い肉刺になり、徐々に痛みが消えていった。
いつしかハジメの手は硬くなり掌から痛みが存在しなくなった。
そして今、零度を切る寒さの中で、ハジメの素振りは三千を超える。
拾ってきた棒切れがブンブンと鳴る音が、自分を激励しているよう――。
「……あと少し……あと少しだ!! 頑張れ!!」
この素振りは剣技の修行であり、魔法の修行であり、幾度と無くハジメの心を折ろうとしてきた精神修行でもある。
「止めるな!! 続けろ!! 休むな!!!!」
こうして自分で自分に檄を飛ばすのは、止めてしまいそうだったから――。
「ま、負けないぞ!! ハァ……ハァ……ハァ……」
折れそうになる心を圧し留め、切れる息さえ整えず無我夢中で素振りする。
ハジメの決意と共に、吐き出される白い息が少しずつ色濃くなっっていく。
最初は三千も棒を振れば、ぐったりとその場に倒れこんでしまっていたが、五ヶ月ほど前から疲れを感じなくなりだした。
当初に比べ、今では半分ほどの消耗で済む。
それはハジメに体力が付いただけではなく、自身の魔力が飛躍的な向上をみせたため、自身の魔力を体力に変換させている事を、頭ではなく感覚で理解出来ていた。
魔力が向上すれば、"魔力の質は洗練"されていき"魔力の絶対量"が増えていく。
魔力の絶対量が増えれば溢れ出る魔力が"たかが棒切れ"へ、無意識に込められていく。
"洗練された魔力"は十ヶ月の間。
棒切れに込められ続けた"膨大な魔力"が放たれ出す。
ハジメが棒切れを一つ振るたび、周りの草木をザワザワと揺らした。
揺れた草木は、鳥や小動物に不自然さを与え、警戒を促していた。
それは――ハジメの素振りがトータル百五十万を数えた時。棒切れが、今までにないドッォン!! という衝撃音を鳴らした。
すると林の中から鳥が大空へと飛び立ち、小動物が慌てて逃げ出していく。
「な、なんだろ? はぁ……はぁ……」
軽く息を切らしながら飛び立つ鳥を見上げたが、ハジメはすぐに目線を前に戻し、また一心不乱に棒を振る。
十ヶ月間、素振りを休まず続けてきたが、こんな事は初めてだった。
ハジメは不思議と動じる事は無く、ゆっくりと目を瞑り今までに無いほど集中する。
ここからは今まで以上に一振り一振り丁寧に、棒切れをゆっくり上段へ持ち上げると、そこから勢い良く振り降ろした。
素振りが四千を超える――。
鳴いていた小鳥たち、草木をざわめかせていた小動物たちの気配が完全に消え、いつの間にかハジメの周りに動物が居なくなる。
素振りの数が増えるたび、振り下ろされた棒が大きな風を生じさせ、辺りに撒き散らしていた。
「四九九五!! 四九九六!! 四九九七!! 四九九八!! 四九九九!!」
五千回に近づくたび、重低音を伴った振動から、魔力を伴った衝撃波に変わり、木々を揺らし空間さえも震わせる。
「五〇〇〇!!」
目標に到達し数を唱えたその瞬間、張り詰めていた精神の糸が切れ、足元から力が抜け落ち、ハジメはドサッとその場で仰向けに倒れ込む。
すると右手に握っていた棒切れが『ブゥーン』と低い音を鳴らし、淡い光を帯びた。
ハジメは仰向けになりながら、右手に握った十ヶ月前に拾った棒切れを見つめて、静かに歓喜の声を上げる。
「や、やった……」
地面から澄み切った空を見上げ"初めて味わう充実感"と"初めてやり遂げた達成感"がハジメの心にえも言われぬ充実感を与えた。
思わず目から溢れ出た、ハジメの熱い涙が地面に落ちる。
すると、逃げ出したはずの鳥達が祝福するかのように一斉に羽ばたきながら、ハジメの偉業を讃えるように戻ってきた。
小動物たちもハジメの周りに集まり流れる涙を舐めた。
"小川のせせらぎの音"も"パクチーク花の甘い香り"も"身を切るような冷たい風"さえも、全てがハジメの味方になる。
そしてハジメは淡い光を放つ"棒切れ"を誇らしく天高くかざした。
ハジメの色は――"緑"。
系統は――祈詛系。
魔法習得第一段階完了。
ご愛読ありがとうございました。




