ー立食パーティー・お見合い5-
放り出されたファントムは考えていた。
周りのパーティー参加者が忽然と姿を消したのであった。一瞬、ファントムは何が起こったかわからなかったが、すぐに納得する。
(ああ、あいつはまたムチャをしたんだ)
熊のぬいぐるみの姿を模っているが、ちゃんとした姿がある。いつもは忌と一緒にいるため、ぬいぐるみの姿をしている。
忌は別にぬいぐるみじゃなくともいいのだが、ファントムと会った時の忌は荒れに荒れていた。
母親が自分のために買ってきてくれた熊のぬいぐるみ、それは彼女の記憶の欠片の中でも印象的に残り、そして一番悲しい出来事の前夜という記憶。
悲しみの波に流されつつも残る嬉しさ、その感情がぬいぐるみにはこもっていた。
だからこそ、ファントムはこの姿をしているのだ。忌もこの姿を望んでいた。忌が自分の姿を見て、嬉しく思ってくれるのならばファントムはそれ以上にうれしいことはないと思っている。
(だが、この姿だと動けん。)
ファントムは心の中でため息をつく、ぬいぐるみがため息をつくことはないのでおそらくぬいぐるみ自体はため息をついていないだろう。
ぬいぐるみがその場からなくなった、いや、正確には姿を変えた、というのが正しいだろう。
ぬいぐるみがあった場所には一人の少年が立っていた。その少年はどこかで見たことあると思う。それはそうだ。
彼は紛れもなく、呪紋忌と瓜二つだった。それはもう、顔立ちはコピーしたように。
違うところといえば、彼の髪や、目の色、髪型だけだった。
藍色の髪が少し首につくかつかないくらいのセミロング。目の色は両方とも吸い込まれそうなほどの輝きを放つ、金色。
彼はファントム。忌のそばにいつもいるぬいぐるみ、を催した謎の少年である。
(やはり、久しぶりに使う体は固いな)
少し背伸びをして、体をほぐす。
「忌が使ったのは…、空間を隔離する高度な魔法に近い、呪い。あの空間にいる人のほとんどが精神的ダメージを与えられる、か。あいつの父親が得意な呪いの一つだ。」
忌の父親であり、先代の呪いの執行人であった男の顔を浮かべながら、思う。
(流石、と言うべきか、やはりというべきか。狂、忌はお前の血をちゃんと継いでるさ)
ふふっ、とファントムは怪しく微笑む。
「仕方がない、この呪いの欠点をつくとしよう」
呪いには、小さく見つけにくいところに欠点がある、本当に小さな小さな欠点だがそれをつくことによって聡明な人間は呪いから逃げることが出来た、という例がいくつかある。
それを流れていく歴史や時間の中、ただ一人で見ていたファントムにとって、呪いを壊すことはとても簡単である。
「我の名前はファントム。罰を受けれし血に仕える者。汝、我の願いを聞き届けたまえ」
ファントムは誰もいない空間で呪文のように唱えた。その声音は吸い込まれるように消える。
普通の人間には分からないけれど、そこには何かの力が溜まっていた。
森のほうから強風がファントムの髪を乱すように吹いた。その風はファントムを中心に渦を巻くようにグルグルと回転をしていた。
彼の金色の目はある空間を触るように手をかざす、ビリビリと電流が走るようにその場が光る。
(ここに空間がある…)
そう感じた。感触があったのだ。結界のような、そんなものが張られているのだ。
正確に位置を確認したファントムは手をかざし、自分の周りを渦巻いていた強風を何回も何回もその空間に当てる。
ドンドン、と恐竜がこちらを歩いてきているのではないかというくらいの揺れと音が共鳴し、次第にガラスが割れる前のような音が聞こえた、ギシギシと耳に入った時には目の前には狂った自分の愛しき人形が立っていた。
肩こりが怖い。そして眠気も怖い。
二代恐怖に包まれながら、ためていた小説を進める私。
そういえば、少し見やすいように表現技法を変えました。
キャラクターの心情がわかりやすいようにカッコをつけるようにします。




