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ー立食パーティー・お見合い4-

二人の考えはすぐに伝わる。さすが、兄弟ということもあって以心伝心の速さは非常に早いものであった。

 桔梗と桜は昴に走って近付く。二人の行動を見ていたパーティーの参加者ももちろん、なぜそんな行動を取ったのかがとても不思議に思い、二人を目で追いかける。


 そして、二人が同じタイミングで立ち止まるのを見た。

 二人の視線の先を参加者は見る。

 二人は忌の手を見ていたのだ。あのグロデスクな一面を…


 ただ、あの二人ほど参加者は視力はよくない。

 だから、何を見たのか知ろうとした、人間の好奇心というものだ。

 立ち止まった二人を見ていた一人が全員を誘導するように二人に近付く。

 そして、二人と同じくらいの距離でみんな立ち止まる。


 蛇を見てしまったのである。黒くて気持ち悪いほどなめらかに昴に向かっている蛇を。

 そして忌の左の腕にあざがない、ということに気付く。


 みんなの脳裏には浮かぶ。

『これはあのあざの蛇ではないか』と。


 みんなが運悪く認識をしてしまったのだ。そのことを。

 認識さえしなければ良かったのだが、人間の好奇心は恐ろしいものだ。自分が知らないことを知ろうとする。

 それが人生で吉と出るか凶と出るか、それは時と場合によるが。

 今回は間違いなく凶である。


 認識をした直後、周りが黒く塗りつぶされる。

 これが真相である。なぜ、見てなかったはずの参加者がこの世界にはいれたのかは、運が悪く好奇心に負けてしまったのである。


 忌はあせりはしたものの関係ないと判断してまた昴に集中する。この世界はいわゆる、忌の仕事場である。

 忌の仕事は『呪いを執行すること』だ。ここは『呪いを執行する場所』。死刑場となんら変わりはない。


「ふふ、狂気の声を聞いたらきっとみんな壊れちゃうんだろうね」


 忌は冷静さは持っているものの怒りがまだ収まらないようだった。


 静かな黒い空間から、いくつかの声が聞こえるようになった。それは時間が経つにつれて、何十、何百、何千の声に変わっていく。

 そして、その声の全てに『怒り』『恨み』『悲しみ』などの負の感情が備わっていた。


『ナゼウラギッタ』

『ドウシテ、ドウシテ、ドウシテ』

『アイツダケニゲタ』

『タスケテ、タスケテ』

『コワイヨコワイヨ』

『クライ…クライクライクライ』


 これこそ狂気だと、誰もが考える。

 ほとんどの人は耳を抑えており、顔色の悪い者が多いのに対し、忌は至って普通だった。

 いや、違う。普通などではなかった。

 目は虚ろで感情をなくした人形のようにただ立っていた。

 人形は昴に近付く。一歩、また一歩とジリジリと距離を狭める。

 昴は逃げようと力を入れても逃げれないことに気が付く、腰が抜けたわけではない。昴はすぐにそのことがわかった。


 自分にあざであった蛇が巻き付いているのだ。まるで縄のように自分の体を締め上げる。

 そしてもう一つ、自分が手にしていた熊のぬいぐるみ(ファントム)がいないことに気が付く。

 この空間に入る前はいたことは昴はしっかりと覚えていた。

 となると必然的にこの空間に入る条件をファントムが満たしていなかったことになる。それはなにかは昴には分からない。しかも、そんなことを考えている暇などないに等しい。

 もう目の前に忌はいた。

 忌は昴の髪の毛を掴み、引っ張る。引きずろうとしているようだ。

 彼女の体からは、そのサイズにふさわしくないほどの力を出した。

 昴の顔を地面に力強く押さえつけ、そして顔を地面で引きずるように進む。

 ほんの少し進んだところで自分の頭を押さえつけていた忌の華奢な手がなくなっていることに気が付く。

 それと同時くらいに誰かが床に『ドスン』と尻餅をついたような音が聞こえた。

 何があったかと、昴は押さえつけられていたが自由になった顔をあげると、なんとも言えない景色が広がっていた。


 夕陽が忌を押し倒すような形でいたのだ。おそらくあの形からして、忌を弾き飛ばそうとして自分もバランスを崩し、押し倒すような体勢になったのだろう。


 夕陽はすぐにその場からあたふたと離れる。そうすると忌も起き上がれる状態になるので、すぐに上半身を起こす。


「邪魔、いらない」


 上半身を起こした忌はそう呟くと、漆黒の長い髪に息を吹きかける。

 息を吹きかけた髪は不快な音をたてて、みるみる黒い蛇に変わっていった。そして、忌は口では命令はしてはいないが、心の中で操作し、周りにいた昴以外の人物を昴同様に地面に固定する形で縛り上げる。

 縛り上げが強いようで何人かは、呻き声に似た声を出す。


 逃げればいいと思うが、この空間は床も壁も何もかもが黒く、黒くないのはこの場にいる人物だけである。蛇ももちろん、その一種類に入るのだが元々黒いため闇に紛れ込んでしまいどこにいるのかを見失ってしまうのだった。


 邪魔者が消えた忌はまた昴を床に押さえつけた。

「いらない。ファントムを取った。だからいらない」

 うわ言のように同じ言葉を繰り返す忌。

 昴は正直、血の気が引いた。これからされることは大体検討がついている。


「いらない…、だから、終われ」


 忌が何かの呪文を唱える。その呪文は決して人間が聞き取れるものではない。人間では何を言っているのかすらわからない。


 これから、何かを召喚しようとしていたりするのではないか。などと何が起きるか考えている昴。

 そして、それはあながち間違いではなかった。

 



お見合い要素がない…


お見合いじゃない!!!!!!

そして、女に負ける昴もどうよ…

*本作にはかっこいい系男子が絶滅危惧種に指定されております。

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