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第四話 「かねめのものはある」

8/6 加筆、修正しました。

「ふふん。この体でしたら気が付かれる可能性は低いですわね」


熊との激闘を終えると、もはやモンスターには会わず、簡単に森から抜けることに成功した。

きょろきょろと当たりを見回しながら、遠くに城壁が見えた。

今の状況は、街道を通らず門に接近する女として、この上なく怪しい人物である。辺りを見回しながら歩いていくと。

左手には街道なのか地肌が見えた道らしきものがあった、それにそって歩くとしだいに門らしき傍に兵士がたっているのが見えた。

手を振ると、口をあけて眼を見開いている。

何か変なところがあったのだろうかと心配したが、どうせNPCだしすぐ忘れるかと切り捨てた。


「お――お待ちください。身分証を拝見したいのですが――」


身分証?そんなもんゲームにあったか?というかこの大陸の独自ルールかも知れんな。

ともかく持っていない、どうすればいいか。

とりあえず頭を悩ましながら言い訳を一つ。


「申し訳ありません。私は身分証を持っておりません。旅の途中でモンスターに襲われて荷物を奪われてしまったのです。

身分証がなければ街に入れないのでしょうか?」

「あ、いえ。こちらで仮の身分証を発行しますので、城つき役場か各ギルドで登録なさっていただければ、正規の身分証は発行されます」


打ては響くような返答だな。兵士に案内されて詰め所まで行くと質問が投げかけられる。

それをゆっくりと答える。すぐに仮の身分証が出来上がると「身分証の発行手数料と通行税はどうしますか?」と聞かれた。

発行に金はかかるのは分かるけど街に入るのに通行税って、恐ろしく中世だな。

まあストレージに金はあるけど、ここで使えるかどうかわからんからな。


SSOのとんでもない設定として金の種類が上げられるのだ。

大陸特有の通貨や地方の通貨、それが白金貨、金貨、銀貨、銅貨、石貨の順に存在し価値は百対一で上の通貨となる。

正しこれは基本で、この通貨にプルート貨幣や宝石貨幣と呼ばれる特殊貨幣が存在する。

特定の国家と大陸のみ通用するこの特殊貨幣は人気が高く芸術品としても取引されている。

また通貨は変動性で貨幣相場は新たな大陸に来たときに調べるのは最早常識である。

この様なこともあって新大陸では自分の持っている貨幣が金属の含有率で価値が決まる金本位制になることは明白、この大陸で散財することなくこちらの貨幣を手に入れることが必要だ。


とりあえず金のないことを伝えると商人らしき人物がやってきて説明をはじめる。

どうやら商会ギルドから借金して払うことも出来るらしい、だが利子がべらぼうに高い。南のアンちゃんも吃驚の週一割。

まあ利子が高いのは担保がないかららしい。担保があれば月一割まで落としてくれるそうだ。それでも高いがな。

説明で払えなければ奴隷に落とされると聞いたときは驚いた。

この大陸は奴隷制度があんのかよ!本当にビックリだよ新要素満載だな流石は大規模アップデート、新魔法に新スキルもこれならワクワクする様な数に上るはずだ。

心が躍りニヤニヤしていると兵士から「大丈夫ですか?」と聞かれた。やばいなNPCには記憶の蓄積がある。今の姿は噂に上らせたくない。

ならばもっと大きい印象でその姿を打ち消すのだ。


「お金はありませんが、宝石などを所持しております。ここで換金して頂けないでしょうか?」


手から中級宝石を三個取り出す。宝石自体の価値はそれほど高くない、普通だ、問題はその大きさだ。

握り拳程度の加工された宝石が机に置かれると兵士は絶句したように宝石を見つめていた。

商会ギルドの商人も眼の色を変えて宝石を凝視している。

ふふふ、やはりNPCにはとんでもない高価なものだろう。俺にとっては川原に落ちている石ころとかわらんけどな。

なんせ一時期岩石系の敵を眷属たちが殺しまくったせいでストレージには百万個以上の宝石が目白押しだ、それも一年前に見てからそっと別フォルダに区切ったから未だ増え続けていると思うと本当に市場が混乱するほどの量を所持していることになる。

というかやばい、俺が宝石を全部放出すると全大陸の宝石の価値が半分以下になる恐れがあると、同僚に言われたことがある。

そんなに出現率が低いのか、【ゴット・オブ・ゴット】の幸運値のパラメーターはすげえなと思ったよ。兵士より早く復帰したのはやはり商人だった。


「拝見します」とこちらに向けて頭を下げ、懐から取り出した手袋をはめ小さな板のようなものを挙げながら鑑定を開始した。

というかあの板はなんだ?【鑑定】のスキルが使える魔法道具(マジックアイテム)か?意外に細かい設定を組み込んでるな。


「素晴らしい……全てサファイアの一級品ですね。曇りもありませんし傷ひとつついてません。とても大きくそれでいて美しく加工済みの上【保存】の魔法がかけられていますね。

加工された方は嘸高名な方なのでしょう。このような美しい加工した宝石は私も初めて見ました。お値段ですが一つにつき金貨100枚でいかかでしょう?

全て買い取らせていただけるなら合計で金貨305枚をお支払いします。もちろん純正フォルク金貨です、リオネス白金貨の方がよければご都合しますがどうでしょう?」


ええっ!?と兵士が驚きの声を上げるが、イマイチ価値が分からない。

フォルク金貨も知らんな、純正とかついてるが同じ貨幣でも価値が変わるのか、まさか製作年数による価値変動なのか?まあいいか、対して惜しくもない。


「はい、全て買取で。白金貨とフォルク金貨でお願いします、あと銀貨と銅貨も欲しいのですが……」

「ありがとうございます。確かに細かい買い物だと金貨だと困りますからね、かさばらない程度に両替しておきます。レートはこちらに任せていただいても?」


俺がうなずくと商人は壁に立っていた兵士に伝言を頼んだ。というか商人が兵士をパシリにしていいのかよ。兵士よお前も何故すぐにおおじるのだ。

あれかこのオッサンは意外と大物なのか?まあそれなら少しよしみを通じてもいいか。


「では、すぐに商会に使いを走らせますゆえ少々お待ちください。ああ、自己紹介がまだでしたな私は商会ギルドのユーリ・アンドリューと申します、以後お見知りおきをください」

「リリーシャ・エル・アルマータです。ユーリ様、買い取っていただきありがとうございます」

「いえいえ、私としてもあれほど見事な宝石に出会えてこの幸運を神に感謝したいぐらいです。もちろんアルマータお嬢様にも、それとどうか私のことはユーリとだけおよび下さい」


おう、ぐいぐい来るなこのオッサン。それほどいい取引だったのか?それとも他にも欲しいのか?


「ではユーリさんとお呼びしてもよろしいですか?私のことはリリーシャとおよび下さい」

「はい、このユーリ・アンドリュー。リリーシャ様に名前を呼んでいただき光栄の至りにございます」


そう言って胸に手を当てて頭を下げた。騎士じゃねー、商人が何してんだよ。

全く調子のいいことに宝石を出してから凄く親密になったな。

金のにおいがするところには食いつくタイプか?危険だな。そう思いながら会話を交わしていく。


しかし、めっちゃしゃべるなこの商人、と凝視していると特技の欄に【宝石鑑定LvⅥ】があるのに気がついた。

宝石商か?後は【算術LvⅢ】と【交渉LvⅣ】か並みの商人よりも少し劣る程度か?その割にはどっしり構えて隙がねーな。


調べてみると、【危機察知LvⅥ】や【剣術LvⅦ】などのスキルが見えた。明らかに商人のスキル構成じゃねぇだろこのオッサン。

というか商人じゃなく冒険者でもやりゃいーのにって感じのスキル構成で、商人として通用するのは【宝石鑑定】のみだった。


ちなみにスキルの横についているLvは最大でEXまで到達する。Lvは下から、Ⅰ~Ⅱが素人、Ⅲ~Ⅳが普通、Ⅴ~Ⅵが玄人、Ⅶ~Ⅷ達人、LvⅨ~Ⅹになればもはや神の領域だ。種族によっては絶対に到達できないだろう。

このオッサン商人、剣術にいたっては達人レベルである。元騎士団長かなんかか?そうだったら兵士達がいうことを素直に聞くのもうなずける。

とりあえず当たり障りの無い会話をしてそそくさと去った。次はギルドか、追いかけられた記憶しかないから一度しか行ったこと無いんだよな。

今回からは違うぜ、ギルドを利用して最高の冒険者になってやる。


あと、この街はウルグスって言うらしい。兵士が「ウルグスにようこそっ!」って手を振っていたから間違いない。



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