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第十四話 「くらやみのしんい」

8/10 加筆修正を行いました。

怒号と悲鳴が聞こえる。野営地はゴブリンの襲撃によって蜂の巣を突く騒ぎとなっていた。

炎が野営地全体で上がり、何人かがテントごと焼死していた。

頭の切れるゴブリンが火を放ったのだろうか、それともグレーターゴブリンだろうか。


オードリー君はパーティーメンバーと退路を確保するため行ってしまった。

後方で剣戟が聞こえてきた。俺は一人ぼっち。「足止めを頼む!」とイケメン顔で言われてしまった。

ギルドから戦闘を禁止された俺に向かってこの所業、許すまじ。


とりあえず、野営地に残されたメンバーを見捨てるわけには行かないので防衛に参加する。


「すぐに増援のゴブリンが来ます!逃げたい者はオードリーとともに後方に回りなさい!私は敵を討ちます!」


周りの人間もオレの強さを知っているお陰か誰も逃げ出さなかった。

ただ足止めを任されたメンバーたちはへっぴり腰でまともに使えるか疑問だ。

どうやらDランクの集まりで、ゴブリンは倒したことがあるけど、こんなに数が多いのは初めてで戸惑っているらしい。

まぁざっと百体はいるしな。こちらの味方は10名ほどだから――


「固まりなさい、密集陣形!」


直にゴブリンに対して剣を構える冒険者達。生き残らせられるか?

いや、前方から鳴き声をあげてゴブリンが突進してきた。

接近したゴブリンを一刀で切り捨てる。

回りの冒険者たちもやけくそ気味に戦闘を開始する。

前から左右から後ろからゴブリンが飛び出しては屍に変わっていく。

凄まじい数だ。また増援か!ダメだ、食い破られる!


「踊る(ダンシングエッジ)!」


踊る(ダンシングエッジ)がゴブリンの集団に突っ込み、ゴブリンの死体が大量生産された。

しかしそれ以外の場所にいるゴブリンが突進を開始する。


「くっ――踊る(ダンシングエッジ)!」


(足りない、戦力が!手数が!)


誰かが置いていった盾を拾い装備する。

武器は現地調達だ。切れ味の鈍くなった鉄の剣をゴブリンに放り投げながら足元に落ちていた剣を手にする。


(逃げてくれれば生き残れるものを……)


未だ側で戦う冒険者を悲しい目で見る。逃げても良いのに彼らは逃げない。


「逃げなさい!私一人なら生き残れます!」


冒険者達は誰も逃げなかった。口々に文句を言う。


「逃げる前に戦わしてください」

「お嬢の戦いはすんげーからな、死なないかもしれないだろ」

「なに、逃げ時ぐらいは分かっているさ」


その言葉に薄く笑う。冒険者達も再度気合が入ったのか皆笑顔だった。


左右同時に来たゴブリンを片方を盾で受け止め、もう一方を剣で刺し殺す。

盾で受け止めたほうも処理し、その動作を繰り返す。ゴブリンは学習していないのか旨く引っかかってくれた。


死屍累々と言えるほど屍が積み重なったゴブリンの総数は五十を超えるだろう。

しかし俺のほかに残っていた足止めメンバーが何処にもなく、死亡したか逃亡したと思われた。


そんな時一匹のゴブリンが出てきて。「ギグァ」「グギ」「グガガ」とゴブリン語で話しかける。

ゴブリン語がわからないので標準語でお願いします。といったが聞く耳なし。

イラついたので、誰かが落した剣を投擲する。投擲された剣は見事、使者らしきゴブリンの眉間を串刺しにした。


一瞬ぽかんとしたゴブリン達は一斉に俺めがけて突進してきた。


「踊れ!踊る(ダンシングエッジ)!」


舞うように長剣がゴブリンを切り殺していく。

そして久しぶりに【マクロ】が起動する。普通なら切り刻まれる攻撃を避け、剣で切り裂く、盾で攻撃をはじき、剣で切り返す。

数の暴力に負けじと何度も、何度も、同じ動作を【マクロ】は延々と繰り返した。

体ががたがたになろうが知ったことじゃない。


≪スキル【身体能力強化Ⅳ】を獲得しました≫


一瞬で体が軽くなる、それにあわせて目の前のゴブリンをまとめて三体なぎ払った。


≪スキル【剣術Ⅳ】を獲得しました≫


殺戮の速さは俄然と勢いを増し、ゴブリン達は恐慌状態に陥った。

しかし俺は手を休めない、【マクロ】に従ってゴブリン達を追撃する。


どれぐらい時間がたっただろう、炎に包まれていた野営地が鎮火し、夜が明けるころ。すでに自分の周りにはゴブリンの死体しかなかった。

あれから増援とばかりにゴブリンの数が増えたのだが、全て殺してしまったらしい。

臓物と汚物の匂いで吐き気がする。体中に血と臓物で化粧をした有様になってしまったので、【ウォーター】で洗い流し【ウィンド】で乾かす。


【ヒール】を掛ける必要はなく、俺は傷一つなく100を超えるゴブリンを討伐していたようだ。



生存者がいないことを確認して後方に行くと、

グレーターゴブリンが一匹、何か物体めがけて石斧を振り下ろしている最中だった。


顔の原型は最早なく、彼の服装だけが記憶から蘇った。オードリー君、そう、彼だったモノだ。

退路を確保するため後方に下がったが、そこグレーターゴブリンが作り出した死地。

数体のグレーターゴブリンを討伐せしめたが、グレーターゴブリンリーダーによって敗北、皆死んでしまっていたのだろう。


【鑑定】を掛ける。


名前なし

種族グレーターゴブリンリーダー

性別雄

年齢5

LV18


リーダータイプか。一回り強いなと思う。


「仲間も失いましたか」


ちなみにオードリー君に同情はしないし悲しみもない、なぜなら自分たちはゴブリンを殺していたからだ。

殺しておいて、殺されたくない、は虫が良すぎる。弱肉強食のルールにのっとりグレーターゴブリンリーダーは正しい。


「次は貴方の番ですよ」


俺の声が聞こえたのかグレーターゴブリンリーダーの体が此方を向く、奴の口から血が滴り落ちていることから彼を食ったと考えて間違いないようだ。

人の味を覚えたモンスターは凶暴化する。それがどんなものであろうとも。


「ニンゲン……クウ!」


人語を話せるまで進化したか!危険だ、人間の味を覚え人語を操るゴブリンは王の位に上り詰めることがある。

ゴブリンキングにまで進化するとただのゴブリンでもBランクの怪物となる、それがグレーターゴブリンの王が誕生するとどうなるか。

Aランク以上の怪物が生まれることになるだろう。早急に討伐しなければ。


「踊る(ダンシングエッジ)!」


ヒュンと飛ぶ四本の長剣をギリギリで交わすグレーターゴブリンリーダー。

見切ってやがる。これは多用できないなと思い接近戦に切り替える。


石斧を振りかぶって突進してきたのでかわして頭に【シールドバニッシュ】を叩き込む、むちゃくちゃに石斧を振り回してきたのでいったん離れる。

意外と盾の【マクロ】が使える。しかし経験値が入らない。特殊戦闘扱いか?


「フゥー……ニンゲン、ツヨイ」


頭が冷えたらしく窺うようにこちらを見つめている。

俺は盾を前に剣を後ろに隠す、さとられてはいけない、俺の剣は一撃必殺の意味合いを持つ。


「ウゴア!」


斧を振り回し突進してきた、中々の突進力だ。しかし俺は脚を地面につけ思いっきりあいてめがけて盾をぶつけた。

バシィ!という音が鳴り相手の体勢が崩れる、そこにすかさず鉄の剣で体を切り裂いた。


鮮血が飛び散る。だが奴はまだ死んでいない、斧を振り回しこちらの盾ごと吹き飛ばした。


「ぐぁ!」


地面にはいつくばって盾を持っていた腕の骨が折れていたので【ヒール】を掛ける。


「踊る(ダンシングエッジ)!」


またしてもかわされる魔法道具(マジックアイテム)


一瞬、かわされたほうに目をやると、奴が目の前に立っていた。斧を振り上げた状態で。

俺は剣を奴の腹に突き刺す。奴は俺の方に斧を振り下ろしていた。


腕がちぎれ、くるくると回転しながら地面を転がる。

痛みがフィードバックされ、一瞬頭が真っ白くなったと思ったら目の前が赤く染まった。

千切れた腕に飛びつき「ヒール、ヒール」と何度も唱えると赤く染まった景色は明るいものへと変化した。


腕をつなぎ、危なく死ぬところだったと苦笑した。


奴を見てみると剣を腹にさしたまま絶命していた。その背中には踊る(ダンシングエッジ)が刺さっていた。

どうやら最後にあたったらしい。

俺の体も【マクロ】が切れた。すさまじい疲労感が襲う。


しかし討伐体の全滅とグレーターコブリンリーダーの死亡。頭の痛い問題だけが残った。

本来ならもっと生き残りがいてもいいはずだが、予想以上にメンバーが弱かったらしい。

せめて誰か討伐隊のメンバーが逃げてくれるといいんだが。


そんなことを考えながら、立ち上がり、冒険者の死体とゴブリンの死体をアイテムボックスにいれる作業を開始する。

あと何時間で終わるやらと、オードリー君のパーティーの死体を片付けながら憂鬱な気分になっていた。


名前リリーシャ・エル・アルマータ

種族エンシェントヒューマン(眷属)

性別女

年齢17

LV16

職業なし

※固有能力

【創造神の加護】

【鑑定】

※スキル

【剣術Ⅳ】

【身体能力強化Ⅳ】

【危機察知Ⅱ】

【隠密Ⅰ】

【投擲Ⅱ】

※魔法

【ヒール】

【ウィンド】

【ウォーター】


残りポイント70


こちら台風が凄いことになっています。

皆さんはどうでしょうか?

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