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第十三話 「くらやみのけつい」

そろそろちゃんとした話が書きたいと思っていますが、暫くお待ちを。

前よりはシリアスです。


8/9 修正しました。

「クソッ!あの女!」


オードリー・エヴァンスというB級冒険者は憤っていた。

年の頃は20歳前、赤い髪と黒い瞳、中肉中背の男だった。


憤っていた理由は、Eランクふぜいの雑魚冒険者がグレーターゴブリンを狩って来て噂になっているからだ。それも一人で。

オードリーにとって名声は全てでありマルク・ハーマンが冒険者でない現状、自分がこの街一番の冒険者だという自負がある。

それが今や、リリーシャを街一番の冒険者に推す声があるのだ。たかがEランクふぜいの雑魚冒険者がだ。

プライドの高いオードリーにとって憤らないほうが無理と言うものであろう。


「あの女、絶対に殺してやる」


密かに憧れていたマルク・ハーマンの厚遇を受けているということも気に食わない。

自分には鼻であしらわれることがほとんどなのに、リリーシャと言う冒険者はことさら大切にされているようだった。


しかし普通に考えればそう易々とリリーシャをしとめられるだろうか。

幸運に恵まれたとはいえグレーターゴブリンをしとめる能力を持っているのだ。

生半可なことでは死なないだろう。

それに絶対に、事故に見せかけなれば全てを失う。それだけはダメだ。

自分が作り上げたB級冒険者の肩書きを失うことは、恐怖でしかない。


オードリーは連絡を取った。


昔からの仲間だ、絶対に自分を裏切らない。そんな相手にーー



夜に寝ているところをギルドの伝令に叩き起こされた。

明朝、緊急指名依頼があるらしい。

懲罰依頼か、と思いベットに倒れこんでわずかな時間眠った。


顔を洗い、早めにフィルちゃんと食事をする。

食べかすがついてあるのでとってあげると「ありがとうございましゅ!」と返してくれた。

ああ、フィルちゃんはかわいい、お持ち帰りして一日中なでまわしたいぐらいだ。

いや家はないけど。

おっとフィルちゃんにいつまでも癒されているわけには行かない。

食べ終えると武装を整えて宿を出た。


ギルドに到着すると皆の視線が集中する。

慣れたとはいえキツイ。という遅れたのだろうか?

ちなみにアーゼは不参加だ。朝起きてこなかった。もう奴のことは知らん。


「リリーシャ。待っていたぞ」


マルク・ハーマン、もとい教官が立っていた。


「ついて直ぐに悪いがお前に依頼がある。少し来い」


ついていくとマールが笑顔でたっていた。

教官が口を開く。


「グレーターゴブリンのことを覚えているな。どうも一匹じゃなかったらしく、昨日商人が襲われて命からがら逃げ出してきた。そこで山狩りを行うことになった。お前にも参加してもらいたい」


ついに私の出番が!と意気揚々としていると。


「お前は荷物もちだ。グレーターゴブリンの数がわからん現状、Eランクのお前に戦闘は許可できない。まぁ個人的に参加させてやりたいがな」


「私も戦えます」


「戦いを許可するのはギルドだ。すまんな、前例がないで押し切られた」


グレーターゴブリンはCランクのモンスターらしくEランクの俺がどうがんばっても倒せないと上は判断したらしい。

というか前回はただ幸運だったと言われている。

あのギルド長、お菓子(クッキー)の分量減らして困らせてやる。

認めたのは料理の腕だけだったのか。


「悲観するなよ。これが終わればDランクだ。これは試験もかねているからな。

さ、物資をアイテムボックスに入れてくれ」


詰まれた物資を見るとかなりの大きさになっていた。

ぽいぽいっと俺は適当にアイテムボックスに物資を入れて行く、しばらくすると全ての物資が納まった。職員が驚いていた。


「すごいですね。アイテムボックスの便利さは知ってましたが、ここまでのものとは。

道理で王族や貴族が挙って囲うわけだ」


もしかして俺も雇われるのだろうか、永久就職はしないと決めているんだが。


「引き抜かれるのはギルドにとって重大な損失ですからね。ギルドも全力でお守りしますよ、安心してください」


安心します、守ってくださいね。職員さん。

というと真っ赤になって「僕が絶対守ります!」と騎士の様な誓いを立てられた。何故だ。

周りの視線がかなり厳しい。ちょっと嬉しかったので笑ってお願いしただけなのに。


「マルク教官は参加するのですか?」


俺が聞くと。


「別件で仕事だ。冒険者じゃないのに駆り出される、いや冒険者じゃないからか」


ため息をついて暗い顔をする教官。何かありそうだが突っ込めない。

裏の仕事だとしたら俺も巻き込まれかねないからだ。イベントは発生させないぞ。


その後、冒険者たちが30人ほど集まると。


「皆も集まったようだな、では班を決める!」


一番ランクの高いハンターのそばにいるように言われる。物資担当は死なれては困るからということだ。

参加した人間のほとんどがCランクとDランクなので心配だが。


「班は決まったな!よし、出発!」


オードリー君(18歳)、若いBランクハンターがリーダー役を買って出ていた。

パーティメンバーは僧侶、魔法使い、盗賊、のオードリー君以外のメンバーは女というハーレム状態。

爆発しろ、とはいわない。なんかギスギスしてるのだ、メンバーたちが。

オードリー君はそれに気がついていない。鈍感キャラは異世界ではやばいよ、死亡フラグだよ。

ちなみに俺もオードリーの班に配属された。オードリー君のランクが一番高いかららしい。


隊列を組んで森のそばまで行く、ここまでモンスター遭遇率ゼロ。

そりゃこんな金属の塊の集団が動いていたモンスターだって相手をしたくない。


森からゴブリンが出てくる気配がないので、作戦通り森に入っていく。


獣道に入るらしく動きにくい、こんなところモンスターに奇襲されたら全滅だな。

と、のほほんと考えていると後方で叫び声が上がった。


直ぐに助けに行きたいがリーダーの命令待ちである。試験中はリーダーの判断に従わないといけないらしい。

リーダーがやってきて偵察隊を組み見に行くと、ひとりの冒険者が遺体となって発見された。

やはり遅い、せめて悲鳴が聞こえた瞬間飛び出していれば助けられたかもしれないのに。

それとも罠を警戒しての行動なのか、俺にはわからなかった。

ただ冒険者カードを抜き取り、遺体を地面に埋めるのを眺めて。ああ、俺も死んだらああなるんだなと切なくなった。

NPCにとって現実である。俺も現実なら死んだあとにこうやって埋まっていることになる。

死にたくないな。ゲームでも。そう思った。


「進むぞ。ここから先に開けた広場がある、今日はそこで野営をしよう」


リーダーがそういうと皆が頷いた。俺はあんまり頷けなかった、もはやここはゴブリンのテリトリーである、そんな所で寝るとは正気の沙汰じゃない。

一応反対はしたが、多数決で野営することに決まった。

しかし殺されたのはDランクの冒険者、ゴブリン如きに瞬殺される手合いではないはずだ。

態々敵地で防衛線でもやるつもりなのかこのリーダーは。


いやな予感とオードリーへの不信だけが募っていた。


森を抜け広場に出た。いやな予感はあったがアイテムボックスからテントや食料を取り出して皆に渡す。


「いやあ、君のお陰で物資の心配が要らなくて助かっているよ」


オードリー君が言うと、オードリーパーティーの目がこちらに集中した。怖い。


「リリーシャ・エル・アルマータです。リリーシャとおよび下さい」


「リリーシャさん、か、いい名だ。僕は前にも説明したとおりオードリー・エヴァンスだ。Bランク冒険者をやっている。よろしく頼むよ」


握手をする。後ろの子達とはよろしくしたくありませんけどね。

去って行ったオードリーを見送ると女たちが来た。オードリーパーティの魔法使いと盗賊だ。


「リリーシャといったかしら貴方、オードリーに優しくされて良かったわね」


誰ですか貴方は、魔法使いの方ですか、というか男に興味ないですし。


「黙ってないで答えろよ」


盗賊が言う。いや盗賊っぽいからそう思っているだけだが。


「女の嫉妬ですか見苦しい。貴方も女なら真正面から告白でもなさったらどうですか?」


無駄は嫌いなんだよ。告白していちゃいちゃしろよ。

僧侶なんかこっち無視してオードリーに付き添っているぞ。


「なっ!そんなこと出来るわけないだろう!」

「そうよ!告白して断られたら今の関係も壊れちゃうじゃない!」


典型的な一緒にいるだけで満足、って奴かな。

婚期が遅れるだけだけどね。


「僧侶さんは中々のポジションに収まっていますよ。このままではゴールインするのは僧侶さんかと思いますけど」


とたんに暗くなる二人。


「あの二人。幼馴染なのよ、しかも巨乳だし、オードリー、胸の大きい子好きだし」


魔法使いさん、貧乳ですもんね。

幼馴染で巨乳で僧侶、三種の神器ですね。


「まあ、頑張ってくださいとしか私には言えません。私はオードリー君には興味がないので」


そう言うと二人はしょんぼりしていって去っていった。

さて興味がないといったがそれは恋愛沙汰に関してだ。

何せ今、素早く山猫の探知魔法を走らせると、森の中に百匹以上のゴブリンの反応があったのだ。


偵察隊が見つけられないぎりぎりの位置でとまっていることから、かなり高位のゴブリンだと推測される。


オードリー君はどうやってこの状況を切り抜けることが出来るか楽しみで仕方がない。

俺は設置したテントの中で完全武装のままわくわくしながら夜襲を待っていた。



あの女が気に食わない。リリーシャ・エル・アルマータ。目の覚めるような美人。

あのマルク教官が目をかけている冒険者。

俺はギルド長の身内だからBランクに上がれたと陰口をたたかれているのを知っている。

それに引き換え、Eランクの身でCランクは必要なグレーターゴブリンの討伐を成し遂げた。

俺だって倒せるのに周りはあの女を褒め称えやがる。


森に入るとアディが死んだ。臆病者だけどそれだけに簡単に死ぬとは思えない。

必ずグレーターゴブリンが近くにいるはずだ。


広場について、野営地を張った。逃げる準備もしておく、こんなところで野営をしたらゴブリンがよってくるからな。

冒険者仲間からの情報じゃ、100体は越えるんじゃないかという話だ。グレーターゴブリンも一匹じゃないだろう。


ここに野営地を張ることにあの女は反対したが、ほかの奴は俺の息のかかった奴ばかりなので多数決でここに野営することに決まった。

あの女には緊急事態の足止めと称して残ってもらうか。

それで俺らはすぐに退路を確保するとか言い訳して後方に下がろう。

ギルドの命令ではリリーシャに戦闘はさせるなと言うことだったが、知ったことじゃない、現場では不測の事態が発生することがあるのだ。


よし、今日はいい日になりそうだぞ。



山猫は確かに最強の存在ではありますが死なないわけでは在りません。

不老ではあるが不死ではないというわけです。

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