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第八話 「ぶきやにいこう」

素手で戦うのはモンク。リリーシャの職業は?

8/6 加筆・修正しました。

訓練場から帰った俺は、綺麗になった体でマールと話をしていた。

楚々としていると、その髪色から「白銀の乙女」と呼ばれるようになった。

行き成り二つ名かよ、と思ったが気にしないことにする。


「本当にゴブリン討伐に行くんですか、臭い、汚い、しぶとい、の三拍子そろった強敵ですよ」


完全にゴブリンに恨みがあるマールの発言に、俺もたじたじである。

美人の顔が台無しになるほど嫌悪感を隠せないようだ。

ゴブリンは、人間の女をさらって子供を孕ませることがあるので無理はないとは思うが。

だがゴブリン退治は彼女の父親が言ったことだ。


「あれは父ではありません。父の形をした何かです」


どうやら父親との関係は、あまり良好とはいえないようだ。

なぜ同じ職場で働いているのか、教えてほしいぐらいだ。


「受けます。ゴブリン討伐証明は、右耳を手に入れるのでよいのでしたね」


オークも右耳だったはず。

まぁ、なんにせよゴブリン退治はやってみたかった依頼の一つだ。


「はい。本当は女性に任せる仕事ではないのですが、あの馬鹿のせいで指名依頼になってしまいまして」


ついに馬鹿になったか。と苦笑い。

ついでに指名依頼?と聞くと。


「指名依頼とは依頼者や、ギルドから名指しでの依頼となるものです。

指名依頼は冒険者として一人前の証とされますが、ギルドからの依頼は強制権が発生するため、懲罰依頼と呼ばれることも……」


懲罰依頼、怖い言葉だ。何かしら問題発生させた冒険者は懲罰依頼に着くらしいが。

俺自身は何もしていないはずだが。


「だから馬鹿が直接依頼をしたせいで、ギルドからの依頼と成ってしまったんですよ」


なるほど、あの馬鹿にはあとでお灸をすえてもらわないとな。


「それと行く前に武器屋を紹介してもらいたいのですが」


今の格好はスリットの入ったローブである。泥で汚れていたのは居合わせた魔法使いさんにきれいにしてもらった。

だが、さずがに素手でゴブリン退治はしたくない。


「はい、ギルド横のグレン工房がお勧めですよ。気難しい方ですけど……」

「気難しい?」

「一日中うーん、って唸っているんです。お客様が来てもほとんど無視です」


よくそんな場所紹介するな。一番最初は初心者にも分かりやすい大量販売店を押すだろう。


「あっ、でも腕は、ウルグス街一番ですから気にしてはいけません」


気にしたら駄目なのか。武器屋で気にしたら駄目ってどうなのだろう。

そう思いながらゴブリン退治の依頼を引き受けギルドを出た。


ぐるりと見渡すがそれらしき武器屋はない。


いや気がついていたんだ、ひっそりと広場の外観をぶち壊す存在に。


そうギルド横、それは一等地。そんな所にウルグス一の武器屋はあった。

煤けた外壁、外れたドア、窓は締め切られ、営業どころか、廃屋に近い有様だった。

いや訂正しよう、これは廃屋だ。紛れもなく。

よく潰れずに残っていたものだ、しかもギルドの建物の影になっているため日当たりも悪い。

辛うじて武器屋の看板、グレン工房という文字が分かる。


「こいつぁヘビィだぜ」


"生"の音声が口から漏れると、「掘り出し物とかあるんだよな?」と思いながらドアを開けた。外れてたけど。

ドアを立てかけながら店主を呼ぶ。


「ごめんください、誰かいらっしゃいませんか?」


とりあえず声を掛けるも返事はなし、マールさんの言うとおりでした。

店の奥を覗くと店主がインゴットを眺めて、うーんって唸っていた。

店番はいいのかな、いないと誰かが勝手にもっていっちゃうんじゃないだろうか。

もう勝手に見ていっていいのだろうか、ただ武器はいいものがそろっているらしく、武具が所狭しとおいてある。

というか多すぎて発掘作業になりそうだ。


「武器を見てもいいですか?」


のそりとこちらに向かってきた店主に言う。

一応、カウンターに座っていた店主が、ちらりとこちらを見て頷いた。

どうやら無視はされてないみたいだ。よかった。

ただ人と話すのが苦手なだけの人物かもしれないと気にしなかった。


俺は比較的よさそうな、鉄の剣を選び出す。RPGの王道、と言えば鉄の剣である。

勇者だって王様から銅の剣をもらって、行き成り売りに走り、鉄の剣を装備するものである。

いや、その俺のことはどうでもいいし、異議は認める。


選んだのはブロードソード、肉厚の長剣で耐久性はありそうだ。

まあ無茶な使い片しても、簡単に乗り換えることが出来るので金銭的に楽であるという理由もある。


金はあるがいきなり最強の武器を持っていても使いこなせるとは思えないのだ。

SSOには武器ごとに要求筋力値というものがある、ある程度パラメーターが高くないと使えない武器が多い。

しかも隠しパラメーターなせいか、買ってから要求筋力値にとどかないということが判明する悲しい事態になることも多いのだ。

その為、プレイヤーは数多の武器を試すことになる。

最強の武器を買って使いこなせたためしなどないといわれているのだ。


ちなみに防具は奮発して鋼鉄製のものを採用した、ハーフプレートと呼ばれるプレートメイルの胸甲部分だけ残し、強化した物だ。

これなら要求筋力値が低く収まる。

これにて金貨20枚、高い。どうやらハーフプレートがお高い買い物だったようだ。

ブロードソードは金貨3枚しかしなかった。


防具のサイズ調整とかもやってくれるので任せてみる、うん、意外にいい買い物したらしい。

無口な亭主がいろいろと語ってくれる。


「このハーフプレートは並大抵の攻撃じゃあ傷一つつかねぇ。【重量軽減】の魔法も掛けてあるから思ったより軽いはずだ」


どうりで軽いと思ったよ、いや本当にいい買い物した。

これで敵の攻撃も大分防げるな。


そう思っていると不思議な光を放つ長剣が束になっておいてあるのを見つけた。

もち手のついていない薄っぺらい四つの長剣、おかしいさっきまでこんなものはなかったのに何故見逃した。


「こいつに気がついたか」


店主は愛おしそうに長剣をなでた。思い入れがあるのだろうか。


「こいつは踊る(ダンシングエッジ)と呼ばれる魔法の長剣だ。その名の通り魔法が使えりゃこいつは自動で敵と戦う、見初めた相手にしか姿を現さないんだがな、どうやらお前さんはおめがねにかなったらしい」


すばらしい物だな。欲しい。ぜひ売ってくれと渋る店主に頼み込んだ。


「リオネス白金貨一枚。それだけの価値は有る」


白金貨一枚を渡す。うむを言わせぬ俺に対して、店主は「やれやれ売れちまったか」と寂しい顔をしていた。

大事なコレクションだったのだろうか。だがこんな貴重な品は使われてしかるべきだ、インテリアとしては上等すぎる。

腰に長剣の束をつけてもらい、調整もしてもらう。左右に二本ずつ、背中に鉄のブロードソードを背負う。


要求筋力がギリギリだ!移動速度に制限が……。

薄っぺらい外見に騙された。意外に重い。


「おいおい、大丈夫かよ。せめて半分置いていくか?」


「いえ、ありがとうございます。この魔法道具(マジックアイテム)があればちょっとの移動速度ぐらい気になりません」


最上級の笑顔を見せて店主に感謝を示すと。


「まあ、お前がいいって言うのなら何もいわねぇよ。だが死ぬんじゃねぇぞ、死んだらお前の装備を剥ぎ取りに行くからな」


山賊みたいな台詞を残しておくに引っ込んでしまった。

あれかな、ツンデレという奴なのかな。


もう一度店主の後姿に頭を下げて店を後にする。

ともかく装備は整った。あとはゴブリン退治に出発だ!



踊る(ダンシングエッジ)は薄っぺらい板のような長剣です。

生身の相手には有効ですが固い相手だと効果はありません。

チートのようでそうではないですね。

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