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カナデルセカイ  作者: ディライト
第1章
2/7

第1章―(1)

 俺と泉水奏は、まるで敵から身を隠すように別棟一階音楽室へと滑り込んだ。現在はホームルーム中のため生徒はいないが、一限目が始まれば音楽室を使用する生徒がやってくるかもしれない。

 ところが俺の心配も余所に、彼女は躊躇うことなく音楽室の鍵を掛けてしまった。

「ちょ……鍵なんて勝手に掛けていいのか?」

 あまりのスムーズな動作に思わず突っ込んでしまう。

 ていうか俺と二人きりになるために鍵まで掛けるなんて、どう考えても昨日の一件についてに決まってる。なんか知らんが、強烈なビンタとあの真っ赤な表情から明らかに怒ってるっぽいもんなぁ。

 ともすれば、まずは先手を取って頭を下げるのが先決――、

「ごめんなさい!」

 と思ったら、あろうことか泉水奏の方が頭を下げた。

 俺が意表突かれて固まっていると、彼女は顔を上げて揺れる瞳でこちらを窺っている。

「あの……昨日、いきなり叩いちゃって」

「へ? ああ、いや、俺の方こそ勝手に覗いちゃって悪かったし」

 一応悪いと思ってくれていたのか。てっきりバイオレンスなお人なのかと思っていた。

 俺が彼女の謝罪に応えると、何故だか彼女は俺の言葉にびくついている。

「えと……あの……それで…………」

 口許に波を作って、胸の前で指をいじいじ絡めて何か言いにくそうにしている。

「な、なに?」

 助け舟を出してあげると、その言葉にも肩が大きく動いた。

「んと……昨日の……ことなんだけど「ああそうだよ! あれ『もう一度』だよな!? アルバム六曲目の!」

 俺は思わず彼女の肩を掴んでまくし立ててしまった。

「あ……え……? 知ってるの、私のこと?」

「モチロン! 昨日帰ってCD聴いて確かめたんだ。メディア露出はほとんどなかったけど、ジャケットの写真で泉水奏だってわかったし」

「う〜……」

 俺の言葉に、何故か泉水奏は俯いて口を尖らせている。というか思わず肩掴んじゃったけど、それについては怒らないんだな。

「じゃあ……、」

「ん?」

「やっぱりあのタイミングだと……聴いちゃったんだよ……ね?」

「な、何を?」

「昨日の放課後の………………私の歌」

 そう上目遣いで聞いてくる泉水奏は、反則的なくらいに可愛かった。尖った口から発せられる美しい地声は、怖ず怖ずとした口調も相俟って色気も感じさせる。

「あ、あはは、少しだけ……」

 すごく深刻な感じもしたので、和ませる感じで愛想笑いを含ませ肯定した。が、

「きゅぅ〜……――」

「っておい!?」

 なんと泉水奏は操り人形の糸が切れたようにその場にへたりこんでしまった。すんでの所で支えて直ぐさま彼女の顔を窺う。

「おい! しっかり……しろ?」

 なんか心なしか表情が夢見心地なような……、

「って寝てんのかいっ!?」

 次第に寝息も聞こえてきて、表情はすっかり落ち着いている。

 さっきまであんなに真っ赤だったのに……それにしても綺麗な肌だな。

 って見惚れてる場合じゃない。どうしよう。

 時計に眼をやれば、もうすぐ授業が始まってしまう。

 かといってこんな所に寝かせたまま放っておくのは流石に人としてどうだろう。

 仕方ないから保健室まで運んでいくか?

 様々な問題の結論に逡巡していた、その時だった。

「あれ? 音楽室の鍵閉まってるよ?」

 がたがたと鍵の掛けられたドアを開けようとする音。

「え、ホント? しょうがない、じゃあ職員室まで取りにいこ?」

 最後に頷き合う声が聞こえて、扉の向こうで聞こえる女子二人組の声は遠ざかっていった。

 ってちょっと待て! もしかしてもしかしなくてもこれってかなりまずい状況じゃないのか!?

 もうホームルームは終わっている頃合いだ。そして恐らく今の女子は次の授業の一番乗り生徒。

 とすればもうすぐ……、

「あれ? なんだ鍵しまってんじゃん」

「マジ? まぁそのうち先生が開けにくるんじゃね?」

 やはり第二陣が来てしまった。

 冷静に考えてみよう。

 このあと先程の女子生徒たちが戻ってきて音楽室の鍵を開けると、中には横たわる女子生徒を介抱する男子生徒の姿が。

 いや違う。

 中には横たわる女子生徒を押し倒そうとしている男子生徒の姿が!

 マジヤベーって! 冷静にシミュレーションしている場合じゃない!

 下手すれば俺の高校生活にピリオドが打たれてしまうじゃねえか!

 一刻も早くこの場を離れないと……、

(おい、泉水さーん! 起きてくださーい!)

 俺は気持ちだけ大声で泉水奏の弾力あるほっぺを軽目に叩いてみる。

「ん……むにゃ…………もう歌えない〜……」

 そこはもう食べられないだろう。

 ってそんな下らんことに突っ込んでいる場合じゃない!

(頼むって! 起きてくれよ!)

 頬をお餅のように引っ張ってみるが、全く起きる気配がない。

 いよいよもってまずい。もたもたしてたらもうすぐ……、

「鍵持ってきたよ〜!」

「お、サンキュー」

 みゃああああああああああああああああ!

 こ、こうなったらしょうがない、何処か隠れられる場所に……!



「失礼しまーす!」

「鍵閉まってたんだから、誰もいるわけないっしょ」

「そりゃそうだー」

 賑やかな笑いが音楽室内にこだまする。

 次第にぞろぞろと生徒が増えていって、綺麗に並べられていた机はあっという間に人で埋まった。

「これは出れねぇ……」

 ガラス越しに覗く向こうでは既に授業が始まったらしく、先生がピアノで何かを弾きはじめたようだ。

 ついさっき追い込まれた俺は、咄嗟に泉水奏を抱き上げて、音楽準備室へとなだれ込んでしまった。

 部屋内には木琴とか鉄琴、チェロとかバイオリンに、名前のよくわからない大きな太鼓のようなものまで、あまり授業でも使わないような楽器が敷き詰めてあった。楽器の紹介とかにでも使うのだろうか。今この授業だけはこの部屋にある楽器を使わないで欲しいと祈るのみだ。

 そのほかには、棚にメトロノームとか何等かの楽器のケースだとかが置いてある。

 それにしても音楽室の防音性はすごいな。

 準備室にいても今向こうで弾かれている曲がなにかわからないほどだ。

 何かが鳴ってるなってくらいは辛うじてわかるんだが。

「それにしても……、」

 よく寝てるなぁ。

 相変わらず何の危機感もなく静かな寝息を立てながら眠りにつく泉水奏。

 壁にもたれ掛かって少し首を傾げている。

 流石に無防備すぎるだろう。

 目の前でシンバルでも鳴らしてみようか。

「……こんなとこで寝ると風邪ひいちまうよなぁ」

 仕方ないので、俺はブレザーを脱いで泉水奏に掛けようと、

「――……ん、――ってきゃあぁ――むー!むー!」

 したところで起きやがった! 

 俺は危うく叫ばれるすんでの所で口を塞いだ。

 叩いても引っ張っても起きなかったのに何故このタイミングで眼を覚ますかな!?

 っていうかいよいよ俺、マジで退学レベルの所業だ!

「静かにしろって! 大丈夫変なことはしないから!」

「むー!? むむむーむーむー!」

 しまった、もっと暴れだしてしまった。

 言葉の選択を誤ったか。

 しかもいつの間にか覆いかぶさる格好になってるし!

「そうじゃなくて! えーとえーと……と、とにかく話がしたいんだよ! シンガーソングライター泉水奏と!」

 俺がそう言うと、彼女は涙目ながらもうめき声をやめ、こくこくと二度頷いた。それを了承の合図と見て、俺は彼女の口からそっと手を離した。

「――っぷは。も、もう、一体何事かと思ったじゃない!」

「し、しょうがないだろ、おまえが急に寝ちまったと思ったら、一限の授業が始まっちまったんだよ! 出るに出れなくなって、慌ててここに逃げ込んだんだぞ!」

「それは……ごめん。昨日一睡もできなくて……」

 泉水奏は口を尖らせながらちょこんと頭を下げた。

「まぁそれは別にいいけどさ、見つからないようにお前をここまで運んでくるの大変だったんだぞ」

「お、重かった……?」

「すげー重かった」

「……サイテー」

 彼女は眼を細めて睨み付けてくる。サイテーは口癖なのだろうか。

 まぁしかし今のは確かにサイテーだな。それはわかる。じゃあ、

「あの時のサイテーはなんだったんだ?」

「あ、あれは……」

 泉水奏は口を閉ざした。

 何かを躊躇っているように眼を泳がせている。

 しかし諦めたように溜息を一つ。そして息を吸った。

「あれは、人前で歌を歌ってしまったこと対する自分へのサイテー」

「え? どういうことだ?」

「……私ね、あることがキッカケで、人前で歌が歌えなくなっちゃったんだ。誰かの前だと声が出なくなるの。まるで喉にコルクで栓をしちゃったようにさ。大勢の前でなんて以っての外」

 彼女は瞳を落として、そして苦しそうに笑った。

「可笑しいよね。シンガーソングライターが人前で歌が歌えないなんて」

 その吐き捨てるような彼女の言葉に俺は何も答えることができなかった。

「そう……だったのか」

 こんな事しか言えない自分に無性に腹が立つ。

 きっとCDが発売していない理由もそれなのだろう。

「じゃあ、俺に聴かれたからついビンタしてしまったと?」

「ん……そういうこと……です。寝不足なのもそれが理由です」

 彼女は申し訳なさそうに頷いて、それから頭を下げた。

「もう謝らないでもいいよ。でもじゃあ一人でいるときは歌えるってことか」

「うん……」

 敷き詰められた絨毯に体育座りをして、膝に顎を乗っけて口を尖らせている彼女は、アルバムのジャケットから比べると、酷く小さく見えた。

 出来ることならもう一度泉水奏の歌を聴きたい。

 それは俺の心からの願いだ。

 放課後のあの一瞬ではあるが、生の歌声を聴いて、俺の中でその想いは募るばかりだ。

 一度は頭の隅々まで魅了させられた相手が、こんなにも近くにいるのだ。

 彼女が歌えるようになるなら何だってしたい。

「泉水……は、もう一度、歌いたいのか?」

 だから俺は問い掛けた。彼女がそう望むなら、微力でも力になりたい。そう思ったから。

 泉水奏は俺の言葉を聞いて膝に顔を埋めた。

 しばしの沈黙の中に、ピアノの音と大勢の歌声が微かに部屋に流れてくる。

 ちょうど三小節分くらい経った後だった。

 彼女は小さく、でも力強く頷いた。

 ……そうだよな。歌いたくないわけないよな。

 だってあの時、あんなに楽しそうに、幸せそうに歌ってたんだから。

「俺、1―Aの清水光太郎。俺になんかできること、ないかな?」

「1―B、泉水奏……です。できることって?」

「力になりたいんだよ。泉水がまた表立って歌えるようにさ」

「どうして? 私いきなり会うなりビンタしたんだよ? なんでそんな人を助けてくれようとしてくれるの?」

 本当にわからないといった表情で詰め寄ってくる泉水。

「昨日のお前の歌に惚れたから――じゃ理由になんねーかな?」

「私の……歌に?」

「……二年前にCDを聴いた時もすごい衝撃だった。でも、昨日あの夕暮れの中で聴いた、たった一小節の泉水の歌声が頭から離れないんだよ。……もう一度、泉水奏の歌が聴きたいんだ」

 一瞬驚きに眼を開いた後、泉水は体育座りを解いて、足を伸ばしてぷらぷらさせる。

「な、なんか照れるね」

 頭を掻きながらはにかむ泉水。

 うお、この笑顔ずりーよ。

 思わず抱きしめたい衝動に駆られたが、頭を振って邪念を飛ばす。

 結局変態になるところだった。

「でも、あなたにできることはないと思う。……ううん、自分にも克服できないこと、人にしてもらうなんてできっこないもん」

 泉水の言うことは確かだった。言ってしまえばこういう精神的な問題は、結局自分で解決するしかない。他人があーだこーだ口を出すのは、その人を余計追い詰めるだけだ。

 やっぱり何もできないのか?

 ただ指をくわえて彼女が苦悩している姿を眺めているしかないのか?


 その時、昨日の木葉の言葉が頭を過ぎった。

 ――じゃああんたがきく(・・)しかないじゃない。


 俺は大きく息を吸って、吐き出す息を音色に変える。

 耳に届く自分でも聞き慣れない声を、六畳ほどの小部屋に響かせる。

 歌うのは泉水奏の『もう一度』だ。

 夢を絶たれた少年が、一人の少女と出会い、励まし合い、夢に向かって再度走り出すという歌詞。

 終止少女は少年に問い掛けるのだ。大丈夫、大丈夫、大丈夫だと。

 そして私がついていると。だから心配することはなにもないと。

 その想いは今、俺の心とリンクして、声音となって舞う。

 ピアノの音がないので、リズムもピッチめちゃくちゃだ。

 それでも伝えたかったのだ。大丈夫だからと。


 暫く座ったまま声を張り上げて歌った。

 普段音楽を聴いていても、鼻歌さえ口ずさむことをしないのに。

 三分ほど経って、ようやく最後まで歌い切った。

「――――な、大丈夫だろ?」

「……え?」

「すぐ傍に泉水がいて、隣の部屋には大勢の生徒がいて、ばれたら大目玉だ。それでも、歌うことができる。普段歌うことをしない俺でもさ」

 内心バレていないかドキドキものだった。多分声も震えてたと思う。

「――――あなた……、」

「ん?」

「歌ヘタね」

 ドストレートな言葉に思わずもたれ掛かっている壁に頭をぶつけてしまった。

「なかなかひどいな!」

「音程もリズムもバラバラで聴くに堪えないわ」

「俺も歌えなくなりそう!」

「でも……、」

 ふっと口許が緩んで、泉水は透き通るような瞳で俺を覗き込んできた。

「あなたの素朴であったかい声、私は好きだな」

 彼女のその言葉を受け取った瞬間、俺の胸に何かが突き刺さったような気がした。

「ほ、褒めてもなにもでんぞ……」

「ん? どこかで褒めてたっけ?」

「そういえば悪評の方が多かったな!」

 悪戯に笑う泉水。

 その表情に俺はほっとした。

 歌は歌えなくなってはいるけど、決してどん底に暗くなっているわけじゃないんだな。

「私も、また歌いたい」

「おう」

「歌えたら、聴いてくれる?」

「おう」

「じゃあ放課後、特訓するから」

「おう。……おう?」

 は? 特訓?

 聞き慣れない言葉に思わずオットセイのような声が出てしまった。

「さっき歌ってくれたじゃん。大丈夫、俺がついてるぜ……キリッって」

「そんな歌い方はしてない!」

「声は裏返ってたけど」

「そこは触れないで!」

 だー! なんだよなんか主導権握られてんなぁ!

 何も言い返せないのが悔しい!

 しかもよく考えると歌で何かを伝えるってなんかすごく恥ずかしいな!

「冗談だよ。なんかね、あなたになら歌える気がするんだ。なんとなくだけど……。だから、お願いします」

 先程までおちゃらけていたと思ったら、正座をして真面目な顔で頭を下げた。土下座じゃなくて、茶道のような礼で。

 そんなことを言われてしまったら、答える言葉は一つじゃないか。

「付き合うよ。お前が歌えるようになるまで」

 頭を上げた彼女の表情を見て、ああ、あの時ビンタされて良かったなぁと思ってしまった俺は重症なのだろうか?

「ありがとう、光太郎」

 重症でもいいさ。こんな笑顔を見ちまったならな。



 ♪♪♪



 一限が終わり、俺と泉水は生徒の掃けた音楽室から抜け出して、一年教室群が集まる二階で別れた。

 それにしてもすごいことになってしまった。あのシンガーソングライターの泉水奏と放課後に特訓するなんて……。

 特訓といっても、俺が歌の特訓をしてもらうんじゃなくて、泉水が俺に歌えるようになるという特訓だ。

 何を言っているかよくわからないと思うが、俺も何を言っているのかよくわからない。しかしまぁそういうことなのだ。

「こ、交換してしまった……」

 俺の決して多くはない携帯のアドレス帳に、にわかに信じられない名前が記されている。よくよく考えてみると、これってすごいことだよなぁ。先程の俺が連れ去られるときのクラスの反応を見ると、世間一般の知名度は低いが、音楽フリークならば誰もが知っている有名人だ。

 人生ってのはたったの一日でこうも変わってしまうのか。

 俺はそんなことを考えながら、自分の席に戻った。

「はい、確保! 和己警部、犯人を取り押さえました!」

 と思ったら背中から学校で聞くことはほとんどないだろう台詞を叫んで、何者かが覆いかぶさってきた。

「よくやったぞ! 凪巡査! そこで胸を押し付けるのだ!」

「えいっ!」

 ふくよかな膨らみが俺の背中に押し付けられる。

「浮気現場の写真を入手! 直ちに捜査を開始するぞ!」

 その様子を両手で長方形を作ってシャッター音を鳴らす男が目の前に。

「なにやってんだおまえら……」

「それはこっちのセリフだろ〜!? なんであの泉水奏がこの学校にいて、しかも光太郎と一限サボって逢引しちゃってるのさ〜!」

「だー! 体重をかけるなぁぁぁ!」

 俺は背中に纏わり付く女子を引っぺがした。

 ぷりぷり頬を膨らませている、無駄にスタイルの良いこいつの名は天羽あもうなぎ。少し赤みがかった茶色い髪の毛はボブカット。何故かいつも右サイドに寝癖を付けている。顔はくりっとした眼がひたすら輝いていて、なににでも興味津々だ。こいつも和己と同様中学からの持ち上がりで、いつも三人でくっついていた。泉水奏をご存知の通り、凪も音楽をこよなく愛している。俺と違うのは、凪は歌うことも大好きなのだ。

「逢引とか人聞きの悪いことを大声でのたまうな!」

「じゃなきゃあの真っ赤な顔は修羅場への序章だろ! どっちにしろ関係があったなんて! うらやまけしからん!」

「どっちなんだよ」

 まぁ修羅場の方が正しいかもしれんが。

「光太郎、わかるよな? 俺達もう長い付き合いだもんなぁ。音楽大好き仲間としては、ここで泉水奏を一人占めするってーのはさ、俺達に対する裏切りだよなぁ」

 和己がちょっと何言ってるかわからないような事を、腕を組みながら演説している。

「そうだよねぇ〜。光太郎はそんなことせず、分け隔てなく貧しい人々にも幸せを分け与えてくれる心優しい少年だと思うけどなぁ〜」

 凪もそれに乗ってきて、二人で眼を閉じながらうんうんと頷き合っている。

「お、おまえら結局何が言いたいんだよ……」

 大体察しは付いているが、念のためというかもう確信に変えるため、恐る恐る問い掛けた。

「「泉水奏を紹介して!」」


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