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第8話:興味。

それはいつの事だっただろうか。


まだ人を信じれていた時。


否、自分を信じれていた時か。


……どちらでもいい。俺にもそんな時は確かにあった。


身に降り懸かる不条理にもめげずにいた、愚かなあの頃が。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


これは恐怖か絶望か?身に沸き上がる感情に翻弄されながらも考える。あるいは両方。

10m程前方にいるそれは、不気味な影を出している。

全身至る所に裂傷と火傷をおい、ボロ布と化した緑色のスーツと彼自身には、夥しい程の赤い血。ペンキでも被ったかのようなそれは、月明かりと炎に照らされて、端正な顔立ちが今はただ怪談話にでも出てくる幽霊や妖怪のような雰囲気を醸し出している。正直直視に耐えられない程の傷を受けながら、しかし《殺戮人形》は平然と構え、こちらを見つめている。

「…化け物…」

咲耶が口に出した呟きを、耳に拾う。化け物と言う言葉はあまり好きではない。何故かはわからないが、ここ最近とくに拒否反応が体を責める。……だが、しかし。

(確かに化け物だ……あれは……)

肯定するように神子斗は、胸中で賛同した。

普通に考えれば有り得ない。悪夢のような光景。例え身体の半分が人ではなかったとしても……未だ平然と立ち塞がる様は同じ生命体としては掛け離れ過ぎている姿。しかし、目の前にいるのもまた事実。論じている場合ではない。命の危機に曝されているのだから。

(……ん?)

目の錯覚だろうか−−《殺戮人形》の姿に僅かな違和感を感じた神子斗は、目を凝らし、次の瞬間。

「なっ……馬鹿な……ッ!?」

冗談にしか見えない事が、今起きている。咲耶を見ると、目を見開き驚愕の表情を浮かべていた。

フィルムを逆回転で再生しているかのように、血が引いていく。無くなるのでは無く引いていっているのだ。裂傷や火傷も同じく。


「ナノマ…シン?…」

「違うよ」

震えながら僅かに、風に運ばれた咲耶の囁きに即座に答える。

服は治らいのか?と疑問を浮かべてしまうものの、それは些細なことであり口に出す事はしない。

「ちょっとした時間操作……因果率の操作をしているんだよ」

「…ッ!?」

「そんなこと出来るはずないわっ!」

そんな事は神の領域−−否、神すら出来ない事だ。あらゆる因果を操ると言う事は、全てが自分の都合通りに事が進む。早い話しが彼が望まなければ、全てがなかったことになるのだ。これから先の全てが。−−ふと、そこまで考え違和感を持つ。

「傷を既に受けているのに、因果率を操る?……過去に起きている事なのに?それならやはり時間操作……でもそれじゃ……」

「スーツも戻るはずだね」

言葉を続けいう《殺戮私服》

「あくまでまね事だよ。過去限定で……」

それは絶対無理なはず。神子斗は会話を聞きながら思う。それは大袈裟に言えば過去の全てを思い通りにできる。歴史すらも−−だが、それでは今自身の存在があやふやになる事になる。そこまで考え−−

「だからあくまでも、まね事だよ。僕自身を対象にして過去に不都合な事を消せるんだよ。もっともある一定のものだけ。例えば」

「受けた傷」

咲耶の言葉に嬉しそうに頷く。まるでできのいい生徒を持つ教師か、親のように。

「まあ……それだけじゃ説明つかないよね?」

「ああ。過去因果をあやつるなら傷をけした時点で、他の何かが変わらなきゃいけないはずだ」

「そう本来ならね?…だからまね事なんだよ。ここにいる事は変わらない。傷を受けたことも変わらない。ただ、体に不利益な事だけをなかった事にする。もっとも……出来るのは直前の過去だけで、簡単に言えば気絶なんかしたら、その間に死んじゃうけどね?」

「……なんてご都合主義な能力だよ」

「あははっ。僕は科学者だからね。世界最高の」

もう完全になかった事になったのだろう。《殺戮人形》の体は元に戻っている。なんて奴−−咲耶は風に吹かれて揺れる髪をかきあげながら焦りばかりを覚えて、対抗策が思い浮かべない。神子斗を見ると、彼も同じなのか暗がりでもはっきりとわかるほど、顔色が悪く、背負っている直人を思いやる余裕もないようだ。

「それに……この能力はね、ちょっとした事ができるんだ」

まだ話しは続くのか語りかけるのをやめない。

「相手の因果を見ることが出来るんだよ。過去未来関係なくね?予知じゃないよ?本人に関わる全ての鎖を見る事が出来るんだ。予知はこれからありえる枝わかれされた世界。僕のは……あらゆる全ての成り立ちの原因から、決して起こり得ない未来の事まで……もっともこれは他者限定。しかも生涯一度限りで、過去未来どちらかしか見れないけど」

辺りの火はようやく鎮火し始め、お互いを照らすものは月と星の微かな光りだけとなっている。

「……で?」

強がりなのは百も承知で神子斗は続きを促す。本当は口を動かす事すら、恐怖に固まった体には辛い。

「君に興味があるんだよ。世界唯一の完全無能力者。《虚無》の近くにいる男の子なんだからそうだろ?」

「どう言う事だ?」

「そのままの意味だよ。……感謝してよね?最初で最後の因果詠みを君に使うんだから」

「勝手な事を言わないでっ!」

ユラリと近付き話す《殺戮人形》に構えをとり、怒鳴り付ける咲耶だが、その体は微かに震えている。そして次の瞬間−−

「科学者としては興味があるよ。なにゆえ君が存在しているのかね?」

シュバッと目にも留まらぬ速さで神子斗の前に立ち

「……ッ!?」

呆然とする彼の頭に、手を乗せ囁いた。

「さあ見せておくれ?失格者の存在意義を」

読み返しながら書かなかったので、ひょっとしたらおかしな具合になってるかも……。ええいっノリと気合いでごまかしちゃえ。

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