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第5話:Run & Run

研究所内に突如響き渡る不穏な音。

普段鳴るはずがない第一級警戒体制を示すサイレンに辺りを騒がしく走り回るいくつもの足音が聞こえてくる。

「何だっ!?何が起きたんだよっ!?」

「わからないわよっ!」

サイレンと共に部屋を飛び出した神子斗達は、事情を知るであろう人物の元へ駆けていく。

「第一級警戒体制のサイレンなんて今まで鳴る事なかっただろっ!?」

「ええ。…災害レベルがレッドにならない限りは鳴らないものっ!」

「まさかと思うけど…」

「そのまさかよ」

「!?」

間を挟む言葉は目当ての人物。

京子は顔を青くし、二人を見つめる。

「最悪の事態だわ…。《殺戮人形》が現れたみたいなのよ」

「…マジかよ」

「場所は?」

少し言い澱みながら告げられる場所。

「…JJよ」

「JJッ!?」

「情報によれば死傷者は百人以上。…ガーディアンは全滅らしいわ」

「なっ…!?」

告げられる現実に神子斗は言葉を失う。

「神子斗っ!JJって今日三沢くんと智佳がデートしてるはずよっ!」

「…っ!?」

「…危ないわね。無事だと良いけど」

京子はそう言いながらも最悪の事態が脳裏に過ぎるのを止められない。

「私ちょっと見てくるっ!」

「なに言って!?」

「大丈夫!無事を確認するだけだからっ!」

神子斗の返事を待たずそう言うと、咲耶は足早に走り去って行く。

「ちょっ!?待てよっ!俺も」

「待ちなさい」

「母さん…?」

「あなたが行ってどうなるの?」

「でもっ!」

「勝手に向かった咲耶ちゃんも咲耶ちゃんだけど、あの娘は自分の身は自分で守れるわ」

「だけどっ!」

「…心配なのはわかるけど。あなたにはどうする事も出来ないのよ?」

「…………、」

母から改めて突き付けられる現実に神子斗は己の無能ぶりを呪う。

「何でいつも…」

呟かれる慟哭に京子は、ただ見つめる事しか出来なかった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「はぁはぁっ」

息も絶え絶えに見つめる先には破壊の元凶《殺戮人形》

直人の体には複数の裂傷が刻まれており流れ落ちる血液に体温が奪われていく。

「期待はずれだなぁ…。もっと楽しめるかと思ったのに」

「くっ」

最初の一撃こそかわせたものの後は完全には避け切れない不可視の刃。「最初のあれは地面の切り口を見て避けたんだもんね?わからない様に、しかも複数の刃でスピード上げたら避けれないでしょ?」

「……………」

軽やかに語りかける《殺戮人形》に無言で睨み付ける。

(マジで暇潰しかよ。わざと致命傷外してやがるっ)

「ほらほら。攻撃してきなよ?じゃないと死んじゃうよ?」

「調子に乗るなぁーっ!!」

叫びと共に浴びせられる青い衝撃波。声を向ける方向に広範囲でたたき付けられる直人の能力。その威力は人一人簡単に消し去る事ができるのだが―

巻き上がる噴煙の向こうには傷一つない姿が現れる。

「またかよ…何の能力だ?」

「能力なんかじゃないよ?れっきとした力の差。ただ効かないだけだよ」

「そんなっ…!?」

(何もしてないで無傷だと言うのかよっ!)

力の差を見せ付けられ、逃げる事もできない。

「何でだよっ!?いくらA級だからと言って全く効かないなんておかしいだろっ!融合した魔神の力じゃないのかっ!?」

「くくく」

直人の叫びに《殺戮人形》から笑いが漏れる。

「何がおかしいっ!?」

「君ランク付けなんて本当に信じてるの?」

「…どう言う事だ?」

「付けられてるランクがいい加減なのは有名なはずだよ?」

「でもそれは、少しなだけなはずだっ!」

「くくく…。ヒャハハハッ!」

「笑うなっ!」

《殺戮人形》の嬌声に腹をたてるが、お構い無しに身をよじり笑い続け

「ホントに馬鹿だなぁ。能力の効果平均値なんかで何がわかると言うんだい?」

「……………、」

「そんなの無意味だよ?ちょっと考えればわかる事なのに。まぁまったく的外れなわけではないんだけどね」

(どう言う事だ?)

「確かにレベルの低い能力者ならそれでもかまわないよ?でも考えてごらん?あきらかにただ一点でも優れた力を持つ者が平均値だからと言って低いランクに納まるのはおかしいだろ?」

得意げに語る彼の話しは続く。

「街を都市を滅ぼす威力のある攻撃が出来る相手に、どうして適当なランクが当て嵌まる?他に何の取り柄がなくても、逃げ切れない絶対的な力がありながら?」

「それは…」

確かにそうだ。それが当たり前と教えられてきた人間には疑問に思う者は少ないが、元から一般とは違う生物には当て嵌まらないのは事実なのだから。

「本当に力を測りたければ、存在のポテンシャルを見なければね?」

「存在?」

「そう存在。世界に存在する為に個人が与える影響力。個人が抱えるあらゆる存在エネルギーと言った方がわかりやすいかな?近いうちに発表されると思うから、クラスが入れ代わるんじゃないかな?」

突き付けられる言葉に声がでない。ではコイツは一体どれほどの力があると言うだ?

「…お喋りはここまで。もう飽きた。そろそろ死んでくれない?」

《殺戮人形》を中心に幾重にも重なる魔法陣の様な物が浮かび上がる。

「……っ!?」

「なんか逆にストレスたまったから派手に行くよ?大丈夫死んだ事にきずかないから。この繁華街事吹き飛ばしてあげる」

魔法陣から溢れ出す光りが一際大きく輝き

「サヨウナラ」

「…………っ!?」

死を覚悟した瞬間。

「なっ!?」

飛び出してきた少女の放つ白い光りに魔法陣が打ち消された。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


夜の街を走り抜けて行く一つの影。

縺れそうになる足を必死に押さえながら神子斗は駆けていた。

『どうしても行くのなら、これを持って行きなさい』『これは…拳銃?』

『こんな物あまり役に立たないだろうけど…。気持ち程度にね』

あれからどうしてもと咲耶を追おうした神子斗に諦めた京子との会話を思い出す。

『後…これも。きっと役に立つから』

『何これ?』

『それはね…』

そこに至った時、繁華街から立ち上る魔法陣の様な物が見えた神子斗は考えるのを止め速度をさらに上げ駆けていった

「無事でいろよっ!」


サアァァッ――


風に揺れる長い黒髪の下から覗く瞳に写る《殺戮人形》を睨み付け、咲耶は直人の前に立つ。

「神…那岐?」

「大丈夫…じゃなさそうね」

チラッと横目。痛々しいその姿に眉をひそめる。

「今のはキャンセル?…いやドレインされたのかな?」

自分の身に起きた現象を興味深く、また楽しそうに言う姿を睨み

(完全に発動してたら無理だった…。なんてエネルギー量なのよ)

奪い取った力が体中を暴れているのがわかる。

「面白いなぁ。本当面白い。君《虚無》だね?」

「だったら何よ…?」

チラッと遠くを見、直ぐさま咲耶に視線を戻す。

「まだ彼女は来ないみたいだね」

訝る咲耶をにこやかに見つめ

「君なら僕の暇潰しに最適だ。楽しませてね?」

咲耶を中心にいきなり爆発音が鳴り響く。

「神那岐っ!?」

叫びと共に土煙りから飛び出して来た咲耶。

「おお。速い速い」

遥かに人を凌駕した、そのスピード。

ダンッと踏み込みを入れ《殺戮人形》に向けて左からの鋭い蹴りを入れる。

「切り刻まれよ」

難無く避けた《殺戮人形》は右腕を翳し

「駄目だっ神那岐ーっ!」零距離からの高スピードの不可視の刃。避けようのないその攻撃に直人は叫びをあげるが。

「ぐっ…!?」

勢い良く後方に吹き飛ぶのは《殺戮人形》

見れば咲耶の全身は、白く輝く薄い膜の様な物で覆われている。

「…そんな使い方も出来るんだ?」

殴られた頬を撫で付け呟く。

「私の鎧…絶対防御《白鳳》攻撃はキャンセル吸収され、私自身の力に還元される」

「無敵モードってやつかな?通りで殴られて痛いはずだよ」

(無敵じゃないし、何時まで持つかわからないんだけどね)

咲耶の胸中を知る事なく、《殺戮人形》は嬉しそうにしている。

スッと一歩を踏み出し、彼はこの幸運に感謝をする。自身の快楽が全てなのだ。楽しめる相手が現れた事は最高の食卓と同じ。

「理論上じゃ、相手が強いほど強くなる。相手の攻撃は君には決して届かず、君の攻撃のみが効果を得る」

ゆっくりと歩みを始める。切り刻まれたアスファルトを危なげなく渡り、転がる破片に足を取られる事もない。

「……………」

近寄る《殺戮人形》を無言で睨む。あくまで理論上の話しなのはわかりきっているが、親切に答えてやる義理はない。

「三沢くん…動ける?」

「……?」

小声で話しかけ

「何とか時間稼ぎするから、逃げて」

「しかしっ」

「早くっ!」

クッと唇を噛み締め俯く。悔しいが役には立たない。しかも怪我をし、今にも意識を失いそうな状態だ。つまらないプライドなど持つ必要はない。

「……わかった」

悲鳴を上げる体を鞭打ち、姿勢を整える直人を見、咲耶は《殺戮人形》に向かい駆け出していった。

小説って難しい―改めて思う今日この頃です。書いてることが途中で意味わからなくなる事多々なのですよ。小説家って凄いなぁ。

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