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第4話:殺戮人形―キリングドール―

日が沈み始め、夜との境界線に世界が移り変わろうとしている。

道行く人々は帰宅を急ぎ、そうでない者は後暫くと今日を名残惜しんでいる。

星陵王華学園と神那岐天宮総合研究所の調度中間地点にある繁華街。近年の都市開発によりアーケードや植林には、きらびやかなイルミネーションが彩られ、若者達に人気のある様々な店が軒を連ねているここは、学生達にとっては流行りのスポットとして有名な場所となっている。

繁華街―JJ―の中央部に位置する噴水で腰をおろし語らうカップルの一組もそんな今日を惜しんでいる者達。

「なんかあっと言う間に日が暮れたな」

「うん。時間経つの早いね」

直人の言葉に相槌を打ちながら智佳は一日を振り返り

「直ちゃん楽しかった?」

顔を覗き込みながら言う。

「楽しかったに決まってるだろ?」

手がポンと頭に乗せられる。その感触を目を細めながら味わう。

「久々だったもんね?デートするの」

「そうだな。…最近は訓練の方が忙しかったから」

ごめんなと申し訳なさそうな表情に、優しい笑顔を智佳は向けた。

「ううん。直ちゃんのお陰で平和なんだから。…私は誇りに思っているんだよ?」

「はは。大袈裟だな。たいした事はしてないし実際」


甘い恋人達の語らい。


至福の時。


会話が途切れ、互いの視線が絡み合い顔を近付けた瞬間。



世界が赤に染められた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


響き渡る悲鳴と怒号。

破裂したかの様な爆音。

燃え上がる空。

いきなりの変異に頭がついていかない。

「な…んだ?」

「直ちゃん!?」

呆然とする直人に智佳が縋り付く。その体は微かに震えており悲鳴が響き渡る度に体を竦めている。

智佳のその反応に我を取り戻し早口にまくしたてる。

「智佳!お前は直ぐに非難しろ!近くに緊急非難シェルターがあるはずだっ!」

「えっ!?」

「俺は何があったか確かめてくる!」

「そんなっ…!?」

「大丈夫だ。付近にはガーディアンもいるはずだし危険なようなら逃げるから」

最後は優しく諭し、腕を掴む智佳を残し駆け出していった。


ソレの瞳に写るのは燃え上がり崩れ落ちる木々や建物。

簡単に壊れていく人達。

面白いように様に壊れていく玩具達にソレは笑いが止まらない。

「ヒャハハーッ!」

腕を一降り。するとアスファルトで固めらた路上がバターの様に滑らかに切られ、進行上にいた玩具―ガーディアンの一人を二つにする。

「くくひゃひゃ。脆いなぁ?駄目じゃないかちゃんと塞がなきゃ」

ソレ―《殺戮人形》は笑顔を浮かべ物言わぬ死体に語りかける。

「こんなに脆いんじゃ、この街なんかアッと言う間に潰しちゃうぞ?」

誰にもとなく話し掛ける彼は破壊を続けていく。

「ホラホラッ。早く出てこないと皆死んじゃうよ?千堂天音っ!!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


たどり着いた場所は地獄絵図だった。

直人の人生の中で一番最悪な風景。

切り刻まれ破壊された痕跡が延々と続き、何百と言う人達が血を流し倒れ。

死んでいた。

「うぷっ」

こみ上がる嘔吐感を無理矢理に飲み込み、歩いていく。

「…酷ぇ」

これまでにも何度か事件を目の当たりにしてきたが、破壊の度合いが違い過ぎるその惨状に体が震えるのがわかる。

「ガーディアンは…全滅…か」

幾重にも重なり倒れている人達の中に、ガーディアンが着用しているブルーのジャケットが目に見いた。

「JJに常勤する人数は確か10人だったな」

調度10人が死んでいるのが確認出来る。

ガーディアンの能力は言う程高くはない。せいぜい高くてC+が良い所でBクラスは殆どいない。しかしだからと言って馬鹿には出来ない。Cクラスは十分に上位ランクに入り、しかもここには10人ものガーディアンがいたのだ。並の犯罪者達など手ではでないのだ。しかも一般人も能力は扱える。なのにこれほどの被害がでているのは異常な事だった。

「何が…あったんだよ」

テロリスト集団でも襲って来たのか?と疑問符を浮かべる直人にかけられる声。

「僕が全部壊したんだよ」

突如後ろからかけられた声に戦慄する。

(気配がまったく感じられなかった!?)

口から漏れだしそうな悲鳴を押さえ振り返った先には一人の青年の姿。

(…一人だけ?)

仲間がいないかと視線を周囲にやる直人に

「探しても仲間なんていないよ?僕一人だけ」

軽い口調で話し掛けてくる青年に改めて視線を向けた。

身長は自分と同じくらいだろうか。割りと整った顔立ちをしている。

しかし――

緑色の短髪に同色の瞳。一目でそれが天然色だとわかる。肌は日焼けなどしたことがないかの様な白。冗談みたいな緑色のスーツが青年の異様さを更に引き揚げている。

(な…んだコイツ?)

普通の人間では、決して有り得ないその風貌に声を枯らしながら呟きが漏れる。

「魔…物?」

「魔神と言って欲しいね?もっとも半分だけだけど」

「何を言って?」

「初めまして少年。僕の名は《殺戮人形》」

「…なっ!?」

あまりに有名な二つ名に驚きを隠せずにいる直人に《殺戮人形》は恭しく挨拶をすると、ニコリと微笑み

「そしてサヨウナラ」

「!?」

瞬間、《殺戮人形》の右腕から不可視の刃が襲いかってきた。

「…へぇ」

ガーディアンが、なす術もなく切り捨てられた刃に間一髪で逃れる事に成功した直人。

(アブネェ…。事前に破壊後や死体を見てなかったら今のでやられてたっ)

流れ落ちる冷汗を拭い、幸運に感謝する。

(死んだ人達には悪いけどな)

「今のを避けるんだ?さっきのガーディアン達は避ける間もなく死んだのに」

「………」

「スピード遅すぎたかな?それとも君結構強い?」

押し黙る直人にかわまずに楽しそうに話し掛ける。まるで良い玩具を見付けた子供の様に。

「少しは楽しめそうだね?」

にこやかに微笑みかけながら《殺戮人形》は声を張り上げた。

「時間潰しさせてもらうよっ?彼女が来るまでっ!」

疲れました。まだ序盤だと言うのに…。後少し訂正をば。第3話であげられた《ジャッチメント》は《ジャッジメント》の間違いです。修正するの手間なのでご報告を。また誤字脱字が出てくると思われますがテキトーに流して下さい(笑)

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