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「こいつ」改め・・・


道場へ戻る。


その間、俺はテンションあがって隣で歩く「こいつ」に話しかける。


「いやぁ、やっと入れたなぁ!これからどんな練習するのかな!試合とか出たいよなぁ!!」


「こいつ」はあまりにも予想外の返事をしてきやがったのだ


「えぇ、練習したくないよ~できれば試合にも出たくないしぃ~みんなで仲良く的中て出来ればそれでいいじゃんんー」




・・・んだ、こいつ





いままで俺が体験してきたスポーツは


剣道、陸上・・・それからテニス。


ことごとく個人競技だったのだ。


それらを教えてくれる先生方はいつもこんなことを言っていた。


「人と練習量で差をつけろ!同じ練習をしても強くなんかなれない!」


「人に勝ちたければ練習量を超えろ!経験を詰め!」


「自分の記録が一番の敵だ!それを超えることに専念しろ!」


「仲良しこよしの練習はレクリエーションの他の何物でもない!部活をなめるな!」




俺は武道もスポーツも部活というものもそうして学んできている。


だから「こいつ」の考えはなかなか理解ができない。


まあ「こいつ」の考えはそうなのだ。「こいつ」にはこいつの頑張り方があるのだろう。


そこは尊重しよう。そうすることしか俺にはできない。


俺は、俺。


自分の練習を怠らなければよい、それだけだ。



そんなことを考えていると道場に着いた。



「先輩、僕らは何をしたらいいですか?」


「う~ん、滝先生が今日もいらっしゃってないから何もできないなぁ、畳に座ってみててくれる?」


「はい。」



見取り稽古が始まった。俺たちの最初の練習となったのは見取り稽古となった。


となりで一緒に見てる「こいつ」は見取り稽古であることさえ認識してないようだったが。


正式に部員になったということで畳では正座。


剣道で慣れてた俺には苦ではなかったが、隣ではプルプル震えている。



・・・座ってることさえこいつには苦なのか。


そんなことを思いながらも人の射を見る。


何処がいい、何処が悪いというのが全く分からない俺は


先輩たちの射を比較してみることにした。



・・・背中反り気味なのかな? 他の人と比べて反ってるな。


ほとんどの人が同じような動きで撃ってるな。 形が決まっているにしろ、これほど徹底できているとは。


滝先生って一体何者だろう?




生意気にもそんなことを考えていた。


練習の途中で部長が話しかけてくる。



「一年生の学年全体が仮入部できる期間は正式に入部していても一年生は5時に帰らなきゃいけないんだ。


だから今日は二人とも帰っていいよ。あ、明日は滝先生いらっしゃるから色々できると思うよ!」


「あ、はい!分かりました!・・・残ってるのはダメなんですか?」


「ダメだね、はは」




・・・・たとえまともな練習が始まっても5月の初めまでは5時帰りか。


学校が3時半に終わったとしても学校を出て道場に行き着替えて・・・


1時間くらいしか練習できないのでは??


気にしてもしょうがないのか・・・


とりあえず明日はついに滝先生とご対面なわけだ! 気合入れなきゃな!


そう思いながら尋ねる。


「明日は何を持ってきたらいいですか?」


「普通のTシャツと、長ズボン。普段は見ての通り道着着て練習することはほとんどないから。」


「わかりました。」


「あ、あと早目に足袋を用意してくれる?今すぐとは言わないけど。5月の本練習までに用意できればいいかな?」



おk、今日買いに行く。


「わかりました。」


答えて、荷物を持って男子二人で道場を出る。


出ようとしたとき先輩が声をかける


「帰る時は”お先に失礼します、さようなら”で入る時は”失礼します”ってこれからは言って!」


「はい、お先に失礼します、さようなら」



・・・あの荒井先輩が道場を出るときさみしそうな感じがしたのは気のせいだと思っておこう。


もう一人の男子の先輩・・・幽霊部員なのだろうか?



帰りの道、駅まで男子二人で話しながら帰る


隣の「こいつ」に話を合わせながら。


それで分かったこと、


「オタク・もとPC部・1か月バドミントン部だったがすぐ退部、練習がつらかった」



ダメ野郎だな


俺は陸部だったんだ~いっつも走りこんでたって言ったら


「バカじゃないの?好きで走るやつの気がしれないしぃ、くたばれぇ~」



・・・・んだコイツ?ぶっ殺されたいのか?


ってかいきなりなれなれしい、マジ何者コイツ。


とずっと思いながらも


”これからはこいつも部活のチームの一人だ。決して敵になっちゃダメなんだ。”


だから俺は何も言わないし、怒ってる風にも見せない。


これこそ「建前」というやつだろう。


んでこいつは話を変えてこういう


「ああ、明日道場いけないから~」


「あ、そう」


俺は受け流すように言った。


駅に着き電車に乗って携帯のメアド交換したりして


俺は先に電車を降りた。


メアド交換で分かったのだが「こいつ」の名前は宮崎というらしい。


これからは「こいつ」改め「宮崎」だ。



俺の家は学校から遠い


電車は3本


学校から家への最後の電車は


始発駅から終点の駅の2つ前までの超ロングディスタンスだ。


最寄駅から家前でも実は距離があってどうしたものかというような道のりだ。


俺はこの過酷な通学をひそかに「旅」と呼んでいる。


・・・そんなことはどうでもいい。


とりあえずその旅を終えてすぐに着替えてチャリンコに飛び乗り


1年前くらいにできた超有名ショッピングモールまで飛ばす


チャリで10分。


市外からも多くの客が訪れるようなこのショッピングモールの存在は


自分の家がどこにあるのかを説明するのに大変役に立つ。


それほど有名なのだ。


プチ自慢だったりする。



「えーと、足袋はどこに売ってるのかな~・・・、和服店しかないか・・・」


和服店に入り、足袋を探しだし。


「まあ最初は2組でいいかぁ」


値札を見る。


「・・・ゲッ、¥2,000?! 2組で・・・ふっ、はいはいお買い得ですね¥4000だとね。」


嫌味をぼそぼそ言いながら買うと。



明日からはコイツで練習に参加だ!!



滝先生にもついに会えるし! うおお!気合入れるぞ!



そういえば、宮崎・・・先輩への発言ゼロだったな・・・



あいつマジで部活続けられんのか??

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