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妖怪と人間が行き交う街ー

妖怪と人間が行き交う街――リアザーナ。


この街には、昔からひとつの噂がある。


「からくり宿には近づくな」


その宿の主に指名された者は、例外なく行方不明になるからだ。


十年に一度、最古の宿を守る“主人”を決める儀式が行われる。


――要するに、生贄。


そんな宿に泊まりたがる者などいない。

いるとすれば、事情を知らない旅人か、あるいは怖いもの知らずの愚か者くらいだろう。


_______________________


「待てぇぇぇ!!」


背後から怒号が飛んだ。


「や、やば……もうバレたのかよ……!」


私は路地を駆け抜ける。


――湯本もも、ぴちぴちの17歳。


事情はともかく、今は逃げるしかない。


だが、飛び込んだ先はゴミ置き場だった。

高い塀に囲まれた、完全な行き止まり。


終わった。


振り返ると、ムチを持った大柄な男がゆっくりと近づいてくる。


(……大丈夫。私は猫人間だ)


本気を出せば、避けることも、倒すこともできる。


――頭では分かっているのに。


足が動かない。


体がこわばる。

手足が震える。

冷や汗が、顎を伝って落ちた。


次の瞬間。


ドンッ――


視界が黒く染まった。


腹を、思い切り蹴られたのだ。


気がつくと、私はまだゴミ置き場にいた。


立ち上がるだけで、腹が軋む。


上を向くこともできない。


一歩進むたびに、鈍い痛みが走る。


それでも、私は帰るしかなかった。


悔しい。


何もできなかった。


抵抗すら、できなかった。


こんな思いは、もう何度も味わってきた。


この街は、人間と妖怪人間が共存している。


かつて、知恵ある人間が妖怪人間と手を取り合い作られた街――それがリアザーナだ。


だが、共存は長く続かなかった。


いつしか階級が生まれた。


人間が上。

妖怪人間が下。


表向きには消えたはずのその関係は、今も空気のように残っている。


ある日。


「なあ、もも。俺の愛人にしてやるよ」


男子生徒が、にやにやと笑いながら言った。


「人間様が“仕方なく”選んでやってるんだぞ。ありがたく思えよ」


「……いやだ」


そう答えた数日後。


机には、汚い文字が並んでいた。


――あばずれ。

――しね。

――愚民。


周りを見ると、男子も女子も、含み笑いを浮かべている。


世界が、怖かった。


制度なんて意味がない。


空気で伝わる圧力。

そこに適応しなければ、生きていけない社会。


頭の中で、笑い声が何度も何度も繰り返される。


その瞬間。


自分の人生なんて、どうでもよくなった。


ああ、もういい。


いっそ、どん底まで落ちてやろう。


そして私は、


半グレが集まる集団――「ライラ」へ向かって、


夜の街を歩き出した

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たのしみ
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