「約束の白」
全ての危難を排した村は勝利と解放に喜んだ。首領を失い兵力のほとんどを失った盗賊団はじきに消滅する。村人たちは他の村にもこの知らせを伝えた。すぐに自由を祝って宴会が開かれ、解放者であるノアたちはその主役となった。盗賊団のアジトから財宝や食料を奪い返しての大宴会だ。
「わはははははー!」
「ぎゃははははー!」
酒を飲み、肉を食み、騒いで歌う。
「ほら姉ちゃん、もっと飲め!」
ラミナスの杯には絶えず酒が注がれ続ける。しかし彼女は何ともないように酒を飲み干し、さらなる酒を要求した。
ノアは肉を齧り笑っていた。
「あれ。ノア、服破れてるね」
ユミルがノアの左肩を指した。
「ああ、さっき斬られたんだ」
ノアは自分の肩を摩る。
「え⁉ 傷は⁉」
「寝たら治った」
「えええ⁉」
ノアは治癒魔術を使うことができない。戦闘を行う魔術師ならば朝飯前の魔術だが魔術師の素養がないノアは治癒魔術を使うことができない。
「やっぱり馬鹿は頭だけじゃなくて体も不思議なんだね」
「なんか言い過ぎじゃね?」
宴会は日が沈み、昇ってもまだ続き、その日の夕暮れにようやく終わった。皆が酔いつぶれ、眠ってしまった。
翌朝、ノアたちはたくさんの食糧を受け取ってマルナ村を出発することにした。
たくさんの村人たちが彼らを見送りに来た。彼らは口々にノアたちへの感謝を叫んだ。シーナがノアの元まで走り出てきた。
「よお、世話になったな。お前もついてくるか?」
シーナは首を振った。
「ううん。私はあの約束を守らなきゃ。なんの約束かはわからないけど…守ってあげたいんだ」
「なんの約束かもわかんねーのにどうやって果たすんだ?」
「う…それは…」
ユミルがノアを睨む。ノアは勘で本質を見抜くのだが基本的に相手の気持ちを思いやることをしないので相手の嫌な点を突いてしまうことが多々ある。そのせいでトラブルに巻き込まれることが多いのだ。
「じゃあ新しく約束しようぜ」
「え?」
シーナはノアの顔を見上げた。
「俺はまたここにお前に会いに来るよ。あの花畑にお前を迎えに行くから。だからしばらく待っててくれ」
「…!」
少女の両目から大粒の涙が零れた。先の見えない約束と果てなき使命かと思われた道に終わりが見えた。損得勘定抜きに力を貸してくれる優しい人。空のように澄み渡る心の約束。きっとこの人ならばいつか…。
「うん…! うん! わかった。私、ずっと待ってる。何年でも、何十年でも! あの約束の場所で!」
少女たちは旅発つ少年たちを見送った。涙を流し、手を振りながら、彼らが見えなくなるまでずっとその無事を祈った。




