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1・誕生日

「ハッピーバースデー!

 15歳の誕生日だぜ、兄弟!」


男言葉を使っているが目の前の相手は小柄な女子だ。

髪は小さい頃から伸ばし続けて足元まで届いている。

しかし結ばないどころか髪が地面に着こうが気にせず動き回る、ある種の妖怪のような不気味な風体だ。

彼女は腐れ縁のあずま あかね

幼馴染にして変人の同級生だ。


「………あぁ」


玄関を開けた先で朝早くから誕生日を祝った相手に軽く応じながら頭を下げて外に出る。


玄関がまた一段と狭く感じた。

日差しが眩い。

体が重い。

学校、休もうかな。


「おら!

 さっさと行くぞ!

 にっしし、楽しみにしとけよ、兄弟!」


目の前に居た変人が背後に素早く回って腰辺りを全身で押してくる。

全く動く気配が無いが進まないと煩いので渋々歩きだす。


何か企んでいるような言葉が気になったが追及するのは面倒なので放っておくか。


「ふふふ、ここまで育てるのに15年。

 魔力の通りも良好、放出も問題無し。

 あとは上手く回収してくれれば…」


いつも通り上半身に登ったり足元をウロチョロしたりと全身をペタペタ触りながら意味不明な言葉を吐いているが無視だ。

反応したら延々と聞いてもいないのに謎設定を語りだして煩くなる。

この変人は厨二病を患っている。

髪を伸ばしたまま結ばないのも彼女が考えた謎設定を忠実に守っているかららしい。


歩いて10分、校門が見えてきた。

家から学校が近いと登校が楽で良い。

途中、いつも通り人に注目された。

変人の奇行のせいだろう。

無視だ、無視だ。


頭を下げて、背中を曲げ、天井に頭が当たらないように気をつけながら校内に入り教室に向かう。


いつも通り教室は騒がしい場所だ。

男女共に騒いでいるのを横目に窓際の最後尾の席に移動する。

背がデカい俺は後ろに居る奴が黒板が見えなくなる為、基本は最後尾の席だ。

自分の体格に合う椅子が無かったから複数の椅子を縄で繋げた特注品の椅子に座る。

座り心地はいつも通りすこぶる悪い。


教室の喧騒を少しでも遮るように分厚いタオルケットを頭に被り眠る。

これは光も遮られてお気に入りだ。

変人がブツブツ何か唱えながら背中を叩いているが無視が一番だ。


授業を聞き流し、昼休みは寝て過ごし、また授業を聞き流す。

いつも通りの日常がくると信じていたが今日は違った。


突然、タオルケットを奪われた。

目の前にはクラスの女子が集まっていた。

また変人への文句だろうかと辟易していたがどうもいつもと様子が違う。

一言も喋らず呆然とした様子で俺を取り囲む姿はさっきの騒がしさが嘘のようだ。


「どうだい、兄弟!

 女に囲まれた気持ちは!

 男冥利に尽きるだろう?

 よ、羨ましいぞ!」


唯一、いつもと変わらない変人が何かしたのだろうか。

そういえば朝、何か企んでいると思っていたが。

放置した方が面倒な事になってしまった。


「何をした?」


「ふふふ、兄弟の魅力にやられたのさ!」


変人が馬鹿な事を言う。

図体がデカく、強面な俺がいきなり女子にモテると言っているのか。

初対面ではよく怖がられるし、昨日までよく話もしない女子がいきなり俺を好きになるとは無理がある。


あきらかに様子がおかしい女子達を目の前にそんな能天気な言い訳が浮かぶ事に呆れる。


「さぁさぁ、胸でも揉みたまえ!

 それとも尻か!

 本能に任せて蹂躙したまえ!」


誰が公共の場でそんな真似するか。

変人が何かしたという確証はあるがその方法が分からない。

ただ、黙ってやり過ごす事は難しそうだし、変人がまた何かして余計に騒ぎが大きくなるのも面倒だ。


「どけ」


強い口調で言うが女子達は上の空で言葉が通じた様子もない。


「おいおい、兄弟。

 正直になれよ?

 せっかくサプライズを準備してやったのに。

 …ちょっと効きが想定より早いが」


変人の言い訳が終わる前に女子達が突然、獣のような動きで俺に群がってきた。


コアラのように俺へ抱きつく者。

手を飴のように舐める者

机に上がって俺の頭を抱いて押さえ込む者。

必死に手を伸ばして触れようとする者。

前に居る女子を踏みこえ俺の方に少しでも近付こうとする者。


相手が正気じゃないという事だけは理解した。

それ以外は何が起きているかもう理解ができない。

ただ、下手に抵抗をしたら相手に怪我を負わせてしまいそうで動くに動けなかった。


「何をしているんだ!」


ちょうど担任が朝礼にやってきてたのだろう。

見えるのは女子ばかりで外の周囲の状況は分からない。


「先生、実は…」


異常を見ていた他の男子が先生に説明をしているのが聞こえる。


「離れなさい!」


先生は何度も女子に向かって離れるように伝えるが効果がなく、やむなく外側の女子から強引に離そうとするが失敗している事が聞こえる言葉で理解はする。


それから応援に駆けつけた先生や男子生徒で全員を引き離し、女子のあまりの異様さに薬物を疑われ警察と救急車が呼ばれた。

この騒ぎで学校は臨時休校となったが仕方がないと思う。


俺から引き離された後も何も話さず表情も変えず手を伸ばす女子達の姿は日常とはあまりにもかけ離れていた。


担架に拘束されて何台も来ていた救急車に運ばれていく女子達の姿を見送りながら警察に事情を話した。


とはいえ、俺から警察には突然、女子がおかしくなって俺に群がってきたとしか伝えられなかった。

変人が関わっているとは確信を持てるがそれを言葉にして説明する事が出来なかった。


その後もゴタゴタしてようやく家に帰って来れたのは夕方の4時過ぎだった。

この騒ぎで学校は臨時休校となりしばらく休みになる事を学校から連絡があったそうだ。

家族もテレビで学校で集団錯乱が起きたとニュースで知って心配していたが俺自身は怪我もなくただ疲れただけだと伝えた。


あの変人がテレビの中継で妄言を吐いて騒いでいたと母から聞いた時は心底呆れた。


この騒動の犯人は変人であると確信はある。

絶対に変人が何か知っていると思ったが騒動に疲れていたから問題を先送りにして寝ることにした。


どうせ明日は臨時休校なんだ。

明日、聞けばいい。

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