3話:二人は交差する
俺は女達の視線と群れを掻き分け、裏路地に入る。マントのフードを被り闇へと消える。
こんな事をしていたら「隠密スキル」を覚えてしまった。毎日こんなだから隠密のレベルもどんどん上がる。アサシンにでもなるのか俺は。
いつもの店に着いた。
静かで、薄暗く、雰囲気の良い飯屋で俺の隠れ家。
「おすすめを」
俺のセリフに被せてくる無礼者は誰だ。まぁいい。
「とりあえず、酒ももらえるか?」
何だか同時に注文した事が気に食わなかったらしい。
隣の女がピーピー言っている。
こういう奴に優しくするとウザ絡みしてくるから軽くあしらうに限る。
まだ何か言ってるな。プライドが高いんだろう。無視するに限るな。
カウンター席が殆ど空いていたお陰で、三席も離れている。俺のパーソナルスペースに入って来ないならそれでいい。
「ねぇ!マスター!聞いてよ~」
なんだこの女。今日初めて来たんじゃないのか?マスターに対して慣れ慣れしい。
というか、さっきまで威勢が良かったのに、酒を呑んだ途端雰囲気が変わった。酒に弱いのか?絡んで来そう。こういう奴は、誰彼構わず肩に腕を回してきたりするんだよな。早めに退散しよう。
「男がみーんな私に寄ってたかって!ルビナちゃ~ん!とか言ってくるんです!」
「私の何を知ってるっていうんですかね!」
「何も知らないくせに、外見だけで寄ってくるって気持ち悪いですよねぇ?」
「お陰で‥?隠密スキル習得しちゃった!あははは」
おいおい。なんだこの女。お前は俺か?!
そうか。全然知らなかったし興味もないが、こいつも苦労してんだな。
「おい、お前。名前は?」
チラっとこちらを見るだけで、目を合わせないんだな。
「え?ルビナ。あんたは?」
何?!俺の名前を知らない女がいるのか!
「エメクだ。」
ルビナの目線はずっと酒を見ている。
「ほーん。そう。」
ーこの女ミステリアスだ。




